技術イベントを会社探しと自分磨きに――Git勉強会を仕切るmixiの若きリファクターまだ君は間に合う! 現役エンジニアに聞く、学生のときにやっておくべきこと(3)(2/2 ページ)

» 2015年12月10日 05時00分 公開
[益田昇聞き手:@IT編集部]
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技術イベントに参加して人を知り企業を知る

編集部 Scrap Challengeイベントに参加したことが入社のきっかけになったと伺いましたが、イベントに参加した経緯を教えてください。

国分氏 2012年の終わり頃に、「サンタのためのコードゴルフ」という技術イベントに参加したのがきっかけです。これは、お題を実現するコードの短さを競うプログラミングのコンテストです。ちなみに、私は10位でした。

 このイベントにたまたま参加していたミクシィのスタッフに誘われ、Scrap Challengeに参加することになりました。その縁で、ミクシィのいろいろな人と話すようになり、その上で入社を決めています。

編集部 具体的には、どのようなことが入社の決め手になりましたか?

国分氏 何よりも、会社の雰囲気が自分の感覚に合っていたこと、仕事の自由度が高いことと、技術力が高いことです。私は、「この仕事をやりなさい」「これを勉強しなさい」というように強制されるのがとても苦手です。自分の意思を可能な限り尊重してくれる会社を希望していましたが、Scrap Challengeや面接に参加していろいろ話を聞いてみて、ミクシィはそれを十分に満たしてくれると感じました。

編集部 技術力が高いことや、仕事の自由度が高いことがどうして分かったのですか?

国分氏 例えば、Scrap Challenge参加時に、先輩社員とランチをする機会があって、技術的にとても深い話をしたのですが、よく話を聞いてみると、その方はマネジメントの部署に所属していたんですね。それで、会社全体の技術レベルがいかに高いかが分かりました。また、技術者の皆さんが、直接収益につながらないニッチな技術にも熱心に取り組んでいるという話を聞いて、仕事の自由度が高いことも分かりました。

就活サイトだけではなく、転職サイトも

編集部 就活で、「もう少しこうしておけばよかった」ことはありますか?

国分氏 もう少し、いろんな会社の人の話を聞いた方がよかったかもしれません。入社が決まってしまうと、就活中と比べて、入社する会社とのコミュニケーションが主になってしまいますから、入社を決める前に、もっといろいろな会社の人と話をしておけば、結果は変わらなくとも自分のキャリアを積むことに役立ったのではないでしょうか

編集部 就活時には、どのような方法で企業の情報を収集しましたか?

国分氏 新卒向けの就活サイトももちろん利用しましたが、就活サイトよりも転職サイトの方が企業の評判をより深く知ることができることが分かり、会社がどのような雰囲気なのかを調べました。転職サイトを使えば、退職した人の意見なども含めて幅広い情報を得ることができます

 また、直接、会社を訪れて調べることも重要です。私の場合は、会社の終業間際に訪問するアポをとって、実際に社員が定時に退社しているかどうかを調べるなどもしました。

学生のうちに自分の知らない分野を把握しよう

編集部 学生の時にもっとやっておけばよかったことはありますか?

国分氏 学生時代には、「自分の技術力はかなり高い方だ」と自負していましたが、実際に就職してみると、知らないことが意外に多いことが分かりました。

 例えば、もともと自分が得意としていたのはWeb技術ですが、実はWebのインフラ周りの知識や、OSやカーネルなどの低レイヤーの領域の知識、さらには、計算機科学の基本的な知識が全く不足していることを痛感することになりました。ですから、学生時代の時間のある時期に、自分の知らない分野がどれだけあるのかをもっと知っておけばよかったと反省しています。

編集部 入社前と入社後で、プログラミングに対する意識は変わりましたか?

国分氏 先ほども話しましたが、私は学生の時からきれいなプログラムを書くことにこだわりがあって、プログラムのテストにも興味があり、テストを書く勉強をしていました。ところが、実際に入社してプログラミングの仕事に取り組んでみると、テストに関する知識が、想像していた以上に重要で価値が高く、仕事に役立つことが分かりました。これはある意味、驚きでもありました。

学生の時に読むべき書籍は『SICP』

編集部 学生の時に読んでおきたかった書籍はありますか?

国分氏 はい。それは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の先生が中心になって執筆した計算機科学の書籍『SICP - 計算機プログラムの構造と解釈』(Gerald Jay Sussman著、Harold Abelson著、Julie Sussman著、和田英一 監訳:第2版は翔泳社刊)です。これは、プログラミングの世界では、とても有名な書籍で、“ちまた”では、「読破して自分のものにすれば年収がぐんと上がる」という伝説すらあるようです。この書籍については、もっと読んでおきたかったですね。

編集部 この書籍の内容を自分のものにすれば、そんなに効果が出るのでしょうか?

国分氏 この本で学べるのはプログラミングに関する高度な概念です。高度な概念を学ぶことで、自分の頭の中の引き出しが増えます。つまり、プログラミングにおいて、良き定石を用いたり、より適切な選択判断を行ったりすることができます。

編集部 なぜ、学生の時から読んだ方がいいのでしょうか?

国分氏 この本はとても大作で、演習も膨大にあり、読破して自分のものにするのには相当な時間がかかります。できたら十分な時間を取れる学生の頃から読み始めるのが望ましいと思います。

今後の挑戦は、本格的なテスト環境の整備

編集部 今後、会社ではどのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

国分氏 当社では現在、プログラムの品質を保証する取り組みを進めていますが、Webフロントエンドの領域については、まだまだ十分とは言えません。mixiのシステムは大規模化が進んできているので、今後は、理想的なテスト基盤を構築するとともに、リファクタリングをしやすい環境もきちんと整備していきたいですね。

 例えば、最近行ったCSSからLESSへの移行のプロジェクトでは、変更前と変更後のスクリーンショットを比較して、違いがないかどうかを自動的に調べるシステムを部分的に導入しています。

編集部 会社以外ではどうでしょうか。例えば現在、技術コミュニティの活動には参加していますか?

国分氏 はい。主に三つのコミュニティに参加しています。一つは、「TDD Boot Camp」というテスト駆動開発(Test Driven Development:TDD)に関する勉強会。もう一つは、プログラマー向けのテキストエディターであるVimの勉強会です。加えて、JavaScriptに関する勉強会には学生の時から参加していました。特にVimに関しては、コードの潜在的な問題をチェックするLintツールのメンテナンスを担当している関係上、今年の国際カンファレンス「VimConf 2015」ではホスト役と配信担当を務めています。VimConf 2015は、11月にミクシィが会場を提供して開催されることになっています(11月21日開催済み)。

編集部 最後に、就活生の皆さんにアドバイスをお願いします。

国分氏 候補に挙げた企業については徹底的に調査することをお勧めします。内定が決まるまでは、学生の側に有利な状況があるので、そのうちに、会社の状況を直接見に行ったり、転職サイトを調べたりするとよいでしょう。こうして納得した上で入社を決めれば後々後悔はないと思います。

編集部 ありがとうございました。

次回も、トップエンジニアに就活のアドバイスを聞く

 本連載では、今後もIT企業の最前線で活躍するトップエンジニアに、学生時代に行った就職活動の内容や、これから就職活動を行う学生へのアドバイスを聞いていくので、楽しみにしていてほしい。

IT業界就職ラボ「就ラボ」

働くとは、就職とは、エンジニアとは――正しい知識を得て、適切な行動をとり、後悔しない選択をしよう



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