「日本企業に適した」OpenStack導入への二つのアプローチOpenStack Summit 2015 Tokyoリポート(2/2 ページ)

» 2015年12月18日 05時00分 公開
[齋藤公二@IT]
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深い知見と構築ノウハウを持つ「Solinea」とも協業

 CTCが提供するOpenStackソリューションのうち、知見と構築ノウハウなどで支援するのが「Solinea」だ。Solineaは、OpenStackをはじめとするオープンソースソフトウエアを用いたインフラの構築を支援する企業。米国サンフランシスコを本社に、東京とソウルにも支社を持ち、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地区で事業を展開する。

 2015年10月26日、CTCと戦略的パートナーシップを締結。日本市場での展開に対し、グローバルレベルの導入ノウハウを提供するコンサルティングパートナーとして協業する。

photo OpenStackクラウドの構築支援で深い知見と経験を持つSolinea
photo Solinea CEOのフランチェスコ・パオラ氏

 「Solineaは、2010年から2012年にかけての第二版(Bexar Release)から、OpenStackを展開する初期コントリビューターです。当時から米国やアジアのテレコム企業や製造業におけるOpenStack導入で実績を積んでおり、自動車メーカーやクレジットカード会社、ゲノム研究組織、証券取引所、航空宇宙産業などの多種多様な業界へ、OpenStackによるインフラ構築を支援してきました。SolineaとCTCが協力することで、OpenStackのデザインから実装、サービス、サポートまでを一貫して提供できるようになります。Solineaでは、現状把握から、アーテクチャ設計、実装、導入支援などのサービスを提供しています」(Solinea CEOのフランチェスコ・パオラ氏)

 現状把握のプロセスでは、クラウドの戦略策定、ワークロードやユースケースの分析などを行う。アーキテクチャ設計は、クラウドアーキテクチャや要求仕様の定義、PoC(Proof of Concept:新しい技術や概念が実現可能かどうか、試作やデモンストレーションで試し、確認すること)やパイロットデプロイの実施、アプリケーションポートフォリオのアセスメントなどを実施する。具体的な実装フェーズでは、クラウド環境の構築や設定、アプリケーションのマイグレーションといったメニューを提供する他、トレーニングサービスやDevOpsに向けた自動化支援なども実施する。

 「アジアの自動車メーカーは、OpenStackとHadoopのプラットフォームを構築してビッグデータ分析を行うことで、車載アプリケーションの開発効率と安全性を高めています。従来2〜3年かかっていたデプロイサイクルを大幅に短縮させており、今では、開発環境だけでなく、テスト環境にもクラウドを適用しています。また、北米のゲノム研究組織では、PoCを3週間で実施し、6週間で最初のワークロードを稼働させることができました。組織内外にある各種クラウドを連携させ、ワークロードを自動化することで、複雑な要件を満たした分析ができるようになっています」(Solineaのパオラ氏)


photo 自動車メーカーで実現した成果の一部

アジャイル開発とアプリケーションフレームワークがポイント

 Solineaのソリューションは、OpenStack環境を構築するものだ。一方で、OpenStack環境を利用するソリューションとしてCTCが提供するのが「CTC Agilemix」や「RACK」となる。続いて登壇したCTC クラウドサービス販売推進部 クラウドエキスパートの中島倫明氏は、国内企業が抱えがちな課題を整理しながら、それらが企業の課題解決にどう生きてくるのかを解説した。

photo CTC Agilemix」の概要(出典:CTCのWebサイト)
photo CTC クラウドサービス販売推進部 クラウドエキスパートの中島倫明氏

 ちなみに中島氏は日本OpenStackユーザ会の会長も務めており、技術はもちろん、国内OpenStackの状況やユーザー企業が抱く悩みにも精通する。現在、顧客からは「OpenStackはとてもよい。だが、すぐには必要ない」という声をよく聞くという。

 「日本の伝統的なITシステムと伝統的な管理の仕組みは、しばしば建築業に例えられます。ウオーターフォール型開発が中心で、既存システムを改善していくケースが多い。そのため、自社にはスピードや機敏さは求められていない。──だから、今すぐは必要ない。こんな声が出てきます」(CTCの中島氏)

 ウオーターフォール型開発は、部門ごとの縦割りでそれぞれが権限を持つ、日本の組織に適する開発手法でもある。しかし、そうした組織風土の企業へ、いきなりOpenStackでのPoCやスモールスタートを促してもうまくいかないという。ほとんどの場合、PoCのまま取り組みが縮小され、小さい規模でほとんど結果が出ないうちに終了してしまう。このため、最も大切なのは「経営陣に対してOpenStackがもたらす価値を適切に理解してもらう」ことと中島氏は述べる。

 そこでCTCはこう提案する。一つは、パオラ氏が紹介したSolineaのアプローチをより大きな規模で適用していくこと。効果を出すことで経営層にも理解させ、組織全体を改革していくことにつなげる。もう一つは、それぞれの部門が管理するアプリケーションごとの障壁を取り除くこと。そこでポイントになってくるのが、組織文化の変革だという。


photo 障壁を取り除く二つのアプローチ

 具体的には、アジャイル開発の方法を採用し、手作業のプロセスをできるだけ自動化することだ。CTCのアジャイル支援サービスであるCTC Agilemixは、そうした取り組みを企業がスムーズに実施できるようにするサービスとして展開する。「ハッカソン」「PaaSの有効活用」「アジャイルとクラウド活用」「継続的なサポート」といった特徴がある。さらに、OpenStackの取り組みでポイントになるのが、OpenStackでのクラウドネイティブアプリケーション開発を支援するフレームワークである、RACKだ。これらを併せて提案することで、「アプリケーション開発の障壁を取り除き、組織文化の変革に向けた取り組みにもつながる」よう支援できるという。

 「成功への正しい道は、“組織文化をよく理解すること”です。そして、その文化を変えていくことです。われわれ導入支援側としては、顧客の文化を正しく理解していくことが何より大切。文化の理解と文化の変革を両輪にして、顧客の成功や成長を支援していきたいですね」(CTCの中島氏)

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