ビジネスの最前線にいる読者のための、セルフサービスBI入門連載。第3回は、「セルフサービスBIとは誰が、どんな用途に使えるものなのか」を紹介する。
本連載「セルフサービスBIのABC」では、第1回「『セルフサービスBI』って、一体何?」でセルフサービスサービスBIの概要をお伝えし、第2回「セルフサービスBIツールって、Excelとどう違う?」でセルフサービスBI製品の基本機能を紹介しました。今回は、セルフサービスBIの用途について、紹介します。
セルフサービスBIツールは、究極的には誰もがデータを活用できるようにすることを目指しています。しかも、無料の製品すらあり、コスト的にもハードルは低くなっています。だからといってすぐ誰もが使うようになるとはいえません。セルフサービスBIツールはどのようなところで使われていて、今後はどう使われていくのでしょうか?
一つは、Excelをデータ視覚化で補完することです。日常業務でExcelを活用し、自らの関与するビジネスや取り組みの進捗を管理している人はたくさんいます。こうした人なら、Excelをこれまで通り活用しながら、セルフサービスBIツールを使ってグラフを作り、データを視覚化できます。
Excelにもグラフ作成機能は備わっていますが、よほど習熟した人でない限り、時間のかかる面倒な作業です。これに対し、ほとんどのセルフサービスBIツールでは、表現力の高いグラフを容易に、迅速に作成できます。これは重要ですが、唯一の機能ではありません。数値の羅列では把握しにくい傾向や特異現象などを見いだし、対策や改善などのアクションに結び付ける作業を円滑化することが、こうしたツールの価値です。このため、視覚化したデータについて、フィルター、ドリルダウンなどにより、ズームイン/ズームアウトが柔軟にできるようになっています。
また、セルフサービスBIツールでは、あるデータについて探索している際に、新たなデータソースからのデータを追加的に取り込み、統合的に視覚化して比較したり、相関性を探ったりといったこともできるようになっています。
例えばある事業について、統括マネジャー的な立場にある人は、売り上げの進捗を見て、今期の売上目標を達成するためには、例えばこれからどの商品分野に重点を置くべきかをシンプルに見いだすために、セルフサービスBIツールでデータを「見る」かもしれません。一方で、この統括マネジャーが力を入れるよう指示した重点商品分野の担当者は、より詳細なデータを検討し、どの部分でどんな施策を打てば効果的かを考えようとするかもしれません。
こうして、例えば目標達成の観点から、今後どの部分に力を入れるべきかをシンプルに知りたい人から、積極的に目標を達成するために、何をすれば効果的かを探っていきたい人まで、単一の目的であっても、さまざまな層の人々がセルフサービスBIツールを役立てられる可能性があります。
「BI」というと、「売り上げの最大化」が目的というイメージを持たれがちです。しかし企業の中では売り上げ向上に加え、コスト効率向上や生産性向上など、多様な面での「改善(カイゼン)」を目指す動きが各所で行われているのが普通です。広義のカイゼン活動において、方向性を見いだし、試行錯誤を重ねていくことを、データの側面から支援するツールが、セルフサービスBIツールだとも表現できます。
セルフサービスBIツールの用途として最も多いのは、デジタルの世界でのプロモーションやマーケティングの管理です。Web、モバイル、ソーシャルネットワーキングなどのデジタルチャネルを通じた顧客および潜在顧客に対する働き掛けは、活動について定量的な結果を得やすいという特徴があります。
また、デジタルの世界では、多様な、創造的な働き掛け方も考えられます。「この働き掛けの後に、こういう人たちには別のこうした働き掛けをして……」というシナリオについても、考えようがあります。一方で、実際にやってみないと効果がどれくらい上がるのか分からないことが多いのも事実です。
そこで、実施した活動の効果を可視化し、次の活動における改善につなげるといったサイクルを回していくための手段の一つとして、セルフサービスBIツールが使われるケースがよく見られます。
デジタルマーケティングでは、インターネット上での活動、つまり社外で得られるデータがほとんどであることおよび、そのデータを企業として活用できるかどうかは、マーケティング担当者次第であることが多いことから、半ば必然的に、マーケティング担当者自身が、セルフサービスBIツールによってデータを活用する例が目立ちます。
Twitter、Facebookのデータなど、最近ではより多様なデータが有償、無償で手に入りやすくなってきました。「オープンデータ」は、こうした動きの一つです。マーケティング担当者にとっては、場合によってはこうしたデータを活用して、より立体的な活動が行える可能性が出てきました。
上記ではデジタルの世界におけるマーケティング/プロモーションについて述べましたが、リアルの世界における活動でも、活動と結果をできるだけ定量化し、相関関係を追跡することで、改善に結び付けられるケースが想定できます。
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