さくらのIoT Platformの概要が明らかに。料金がマイナスになる可能性もデータのマーケットプレイス的機能も提供

さくらインターネットは2016年2月8日、同社が開発中のIoTプラットフォームサービス「さくらのIoT Platform」について、報道関係者に説明した。2016年度中の正式提供開始を予定している。このサービスでは、データのマーケットプレイス的機能も提供する。

» 2016年02月09日 17時34分 公開
[三木 泉@IT]

 さくらインターネットは2016年2月8日、同社が開発中のIoT(Internet of Things)プラットフォームサービス「さくらのIoT Platform」について、報道関係者に説明した。同日、4月に開始するアルファテストへの参加パートナーの募集を開始。9月からのベータテストを経て、2016年度中の正式提供開始を予定する。このサービスでは、データのマネタイズ機能も提供していく。

 さくらインターネットの田中邦裕社長は、「さくらのIoT Platform」のサービスコンセプトについて「これまで気付けなかった『モノ・コト』の相関性や関係性を見出し、それを世界でシェアできるプラットフォームを目指す」と説明している。

 新サービスは、さくらインターネットの創業にかかわり、最近ではモノづくり拠点「DMM.make」をプロデュースした同社のフェロー、小笠原治氏が中心となって進めているプロジェクトだ。コンシューマー系を中心とした、新たなIoTをやりたい人の支援に焦点を当てている。

 このサービスでは、コネクテッドデバイスの開発とこれを通じたサービスの展開を考える人々が、「いま一歩踏み出せない部分」の解消に向け、通信モジュールからデータアクセスまでのワンストップサービスを提供する。「面倒なことは全部このサービスに任せ、付加価値の高いデバイスやサービスの開発に専念してくれ」というわけだ。同サービスの料金体系については後述するが、「つながるモノ」を増やすことが目的であるため、課金方法を工夫している。

「さくらのIoT Platform」の概念図。通信モジュールから通信サービス、APIアクセスまでを一体として提供する

 さくらのIoT Platformは、モバイル通信のSIMを搭載した「さくらのIoT通信モジュール」が利用の出発点となる。これを通じてIoTデバイスをさくらインターネットのクラウドとつなぐ通信サービス、データの蓄積、およびこれに対するAPIアクセス機能を提供する。他社クラウドサービスとの接続も可能。

 さくらのIoT通信モジュールは、3G/LTE通信のSIMを内蔵し、ゲートウェイ機能を果たす部品だ。このIoT通信モジュールは、IoTデバイスのマイコンからUART、SPI、I2Cのいずれかの通信方式でデータを受ける。データ形式は、チャネルID、データ型、値を基本要素とするシンプルなもの。通信モジュールは、これを8バイト×16チャネルのメッセージブロックとして、さくらのIoT Platformに逐次送信する。仕組み上、画像などではなく、センサーデータやログの送信に向いている。

 モバイル通信サービスについては、「IoT通信のソラコムが新サービスを発表、『A』『B』に続く『C』『D』『E』『F』とは」でもお伝えしたように、SORACOMを採用する。一方で、さくらはソフトバンクモバイルとも、同様な通信サービスの提供を受けるべく、事前協議を進めているという。

 デバイスからのデータはさくらのクラウド上に蓄積され、これをさくらのクラウド上の各種処理サービスにつなげることができる。同社は今回ウフルとも提携。メッセージブローカーの「Milkcocoa」がさくらのクラウドでサービスとして提供されるという。

 データには、このサービスが提供するREST API経由で外部から直接アクセスすることもできる。デバイスに対するプッシュ送信も、API経由で行える。

 データ利用のためのAPIは公開される。ここでさくらのIoT Platformユーザーには、自社のデバイスからのデータを「公開しない」、あるいは(匿名化のうえで)「公開する」の2つの選択肢がある。

 「公開しない」ことを選択したIoT Platformユーザーの取得データは、秘匿性を維持したまま蓄積され、API経由でのアクセスも、自社のみに限定される。「公開する」ことを選択したIoT Platformユーザーのデータは、APIを通じ、誰もが有償で利用できる。そしてデータのオーナーには、データ利用料金の一部が還元される。

 本記事冒頭で紹介した、「これまで気付けなかった『モノ・コト』の相関性や関係性を見出し、それを世界でシェアできる」というさくらのIoT Platformのサービスコンセプトは、ここにつながってくる。同サービスは、「データのマネタイズまでを含めたIoTプラットフォームサービス」だと表現できる。

さくらのIoT Platformを使って、逆に儲かることもあり得る

 さくらインターネットは、さくらのIoT Platformの基本的な料金体系について、次のように説明している。

 このサービスでは、デバイスから送信されるメッセージの数に応じた課金が基本だ。従量料金であるため、目安を見出すのは難しいが、1つのデバイスで1カ月数十円程度と考えているという。モバイル通信サービスの料金は、これに含まれる。

 加えて、前述のとおりデータ非公開の場合、データ保存料金が掛かる。また、データ非公開で外部からアクセスしたい場合は、APIを通じたデータ利用料金が掛かる。データ公開を許諾する場合は、データ保存、APIアクセスともに無料。

 通信モジュールは有償販売されるが、実質的にはかなり低額で、場合によっては実質的に無償となる。

 まず、通信モジュールはパートナーと共同で新たに開発することで、一般的には数万円するモジュールを、1万円以下で提供するという。

 このモジュールには、2年間で100万メッセージ程度の利用権を無償でつけることを考えているという。「これは1分に1回、メッセージの送受信をやり続けられる程度」(小笠原氏)。超過部分については事前にクレジットを購入してもらう。

 一方、さくらのIoT Platformでは前述のとおり、APIを使って、だれでもIoTデータを有償で検索、参照できるサービスを提供する。このサービスの売り上げの一部は、IoTデバイス/データのオーナーに還元される。このため、IoTデバイス/データのオーナーは、さくらのIoT Platformの利用で逆に利益を得られる可能性があるという。

 「よく参照されるデータの場合、メッセージ課金よりも参照による還元のほうが多くなり、お金が返ってくることも考えられる」(田中氏)

 田中氏はまた、さくらインターネットのビジネスとしての同サービスについて、同社のクラウドサービスの利用が促進されるほか、EverySenseなどのIoTデータマーケットプレイスとの連携も考えられるとしている。

パートナーとの協業で、これから作っていく部分も

 さくらのIoT Platformについては、サービスの詳細をアルファテストで固め、価格についてはベータテストを受けて決定するという。むしろ、これからパートナーとともに多様なプロジェクトを進め、そのなかからニーズおよび同サービスの提供できる価値を見出していきたいという。また、ゆくゆくは世界的にサービスを展開していきたいとしている。

 さくらインターネットは、多数のパートナーとの協業を今回発表した。その中には、Cerevo、サイマックス(健康IoT)、aptpod(IoTファストデータ処理)、双日、NECレノボ、アパマンショップ、プラグラム(スマレジ)、小山薫堂氏のオレンジ・アンド・パートナーズ、日本IBM(IBM Bluemix)、Amazon Web Services、ヤフー(myThings)などが含まれている。

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