FinTechに代表される「業界×テクノロジー」というトレンドが注目される中、ファッション業界でもテクノロジーの本格導入、活用の流れが広がっている。ECサイト活用などだけではなく、先端テクノロジーを活用した“FashionTech”の現在を取材した。
FinTechに代表される「業界×テクノロジー」というトレンドが注目される中、ファッション業界でもテクノロジーの本格導入、活用の流れが広がっている。
2016年3月4〜6日、こうしたトレンドを象徴するイベント「Fashion Tech Summit #001」(主催:FashionTech Summit実行委員会)が開催された。
イベントでは、三越伊勢丹など、実際にテクノロジーを活用する企業の講演やパネルディスカッションに加え、ソフトウェアエンジニアによるハッカソンも行われた。主催者によると、参加者は約200人。イベント規模、参加者数を見るだけでもこれが局所的なトレンドではないということが分かるだろう。
イベント初日には、テクノロジー先端企業4社のライトニングトークとパネルディスカッションが行われた。「ファッション」という複雑な業界では、どのようにテクノロジーが活用されているのか。本稿では、その実態に迫る。
VIRTUSIZEは、仮想環境で試着を実現するバーチャルフィッティングツール「Virtusize」を武器とする、スウェーデン発祥のIT企業。VIRTUSIZEの日本法人の代表であるAndreas Olausson氏はECサイトの課題について次のように語る。
「ECサイトの最大の問題点は“試着ができない”こと。服のサイズはブランドや生産国によって大きく異なることがあるため、ミスマッチが起こりやすい」(Olausson氏)
このような課題に対して彼らが提示する解決策がバーチャルフィッティングだ。ユーザーの過去の購入履歴を参照し、自分の衣服の身丈や裄丈などのデータを自動的に呼び出すことができる。このデータを活用することで「自分が普段着ている服と比べて、現在検討している服のサイズが大きいのか、小さいのか」を定量的、視覚的に判断できる仕組みだ。
購入履歴がないユーザーの場合は、自分が持っている服を採寸してアップロードすれば比較が可能だ。
「本サービスを活用することで、サイズを起因とする返品が50%削減された事例もある。この仕組みを導入したことで利用者の平均購入単価が2〜3割高くなった、というデータもあり、ユーザーにとっても企業にとっても非常に有効なサービスといえるだろう」(Olausson氏)
VIRTUSIZEと同様、ソリューション提供者として登壇したABEJAは日本発のスタートアップ企業。Deep Learningなどの技術を活用した実店舗の来店者情報や顧客行動のデータ分析サービスを提供している。
ABEJA 事業本部マネージャー 書上拓郎氏は、ファッション/アパレル業界でデータ活用に取り組む際、何から始めるのが有効かを語った。
「まずは店舗に存在する情報をなるべくデータ化(可視化)することが重要。そのデータを活用し、人員のシフト調整や動線の最適化のヒントを提示することができる」(書上氏)
例えば、入口にカメラを配置し、店舗に来た顧客を、Deep Learning技術を活用して、性別や年齢を自動で判別、判定結果のみをデータベースに格納していく。こうすることで、「購買がないためPOS情報にも残らない」という潜在的顧客の情報を可視化できるようになる。
リアル店舗の設計において非常に重要となる来店者の動線についてもヒートマップを活用することで、来店者が「どの場所で、どのような行動をとっているのか」が分かるようになる。店舗の動線だけでなく、「どの展示に反応があるか」といったビジュアルマーチャンダイジングの観点での分析も可能だ。
「他業界のデータ活用と同様に、来店者のセグメントや動線を把握するだけでなく、天気などの外部データを取り込むことで、売上や最適なシフト体制などの予測も可能になる。ただし、ファッションは感情的なものが重要視される特殊な業界。こうした要素もデータ分析でサポートできる体制を整えたい」(書上氏)
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