最後に、これまで紹介したポイント/メルマガ/キャンペーンについて、著名なECサイトではどのようにしているのかを一覧表で比較します。
サービス | 獲得レート | 利用レート | 属性ごとのポイントUP | 特徴 |
---|---|---|---|---|
Amazon | 100円ごと | 1ポイント=1円 | なし | 商品によって、付く場合と付かない場合あり |
楽天 | 100円ごと | 1ポイント=1円 | 一部あり | 倍増キャンペーンが頻繁に行われている |
ヨドバシカメラ | 100円ごと | 1ポイント=1円 | なし | 付与率が高い(金額の10〜20%) |
UNIQLO | なし | なし | なし | |
BELLE MAISON | 200円ごと〜 | 1ポイント=1円 | あり | 利用総額によって倍率の獲得レートに変動あり |
ANA | 区間基本マイレージ×運賃種別ごと積算率 | 1ポイント=1円 | あり | 値引き運賃は付与率が低い |
JCB | 1000円ごと | 利用サービスによって1ポイント=5〜20円 | あり | 月々の請求額に対して加算 |
ショッピングモールは、ポイントと現金の価値が等しいケースが大半です。楽天は、頻繁にポイントアップキャンペーンを行い、リピート売上を促しています。Amazonは、商品によってポイント付与の有無が異なります。ECサイト以外のサービスとなると、一般的に付与率自体が少ないのですが、「お得意さま」に対してポイントレート増強の仕組みが発達していることが多いです。
サービス | 頻度 | 種別 | 特徴 |
---|---|---|---|
Amazon | 1日に1通 | ・キャンペーン ・セール |
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楽天 | 多 | ・キャンペーン ・セール ・ショップごと ・関連サービス |
その多さに一部から不満の声も 取捨選択も可能 |
ヨドバシカメラ | ・キャンペーン ・セール ・ショップごと ・店舗ごとの情報 |
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UNIQLO | 1週間に1通 | ||
BELLE MAISON | 不定期 | ||
ANA | 1週間に2通 | ・キャンペーン ・セール ・マイレージ獲得 |
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JCB | 1日に1通 | ・キャンペーン ・他サービス連携 |
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特筆すべきは楽天の頻度の多さです。一部から不満の声も聞こえるため注意が必要です。Amazonはレコメンド機能が優れており、検索した商品に関するメールが送られてきます。実店舗があるサービスについては、実店舗のセール情報も送ってくれるなどO2O(Online to Offline)アプローチも実施されています。
サービス | 頻度 | 特徴 |
---|---|---|
Amazon | セール:少 ポイントUP:少 |
商品によって、行われる場合と行われない場合あり |
楽天 | セール:多 ポイントUP:少 |
常に何らかのセール/ポイントUPキャンペーンが行われている |
ヨドバシカメラ | セール:少 ポイントUP:少 |
|
UNIQLO | セール:少 ポイントUP:なし |
セールは店舗と連動することが多い |
BELLE MAISON | セール:中 ポイントUP:中 |
時々大規模セールを行う |
ANA | セール:なし ポイントUP:中 |
値引きは恒常的に行われているため、セール/キャンペーン扱いとしない |
JCB | セール:なし ポイントUP:中 |
月々の請求額に対して加算 |
楽天以外はキャンペーン・セールの頻度は多くありません。これは、既に値引き済み(Amazon)であるか、定価販売(UNIQLO、ANA)が起因していると思われます。ポイントアップのキャンペーンは、適用条件に差はありますが、ほぼ常時行われています。
今回はリピート売上を伸ばすための考え方として、ポイント、メールマガジン、キャンペーンの3点について述べました。
柔軟なポイントの付与や、効果的なキャンペーン開催、ユーザー心理を突いたメールでの販売促進は、優れたシステムがあれば、ある程度は実現できます。
ただし、「何でもできるシステム」は、それだけ費用も掛かります。現行のシステムから新しいシステムへ入れ替えるのも難しいでしょう。また、例えば「購入額の○%に充足するポイントを保持しているユーザーは、必ずリピート購入を行う」といった方程式があるわけでもありません。人間が相手である以上ファジーな部分は必ず存在します。
従って、今回は「ユーザー心理」にも着目してみました。たとえシステム的に対応が難しい部分でも、ユーザーへの見せ方を少し変えるだけでコンバージョン率が飛躍的に向上します。例えば、トップページの構成を少しいじるだけで離脱率が激減することもあるのです。これはもちろんリピート売上についても同様です。「ユーザーがECサイトをどのように見ているのか」「ユーザーが購入する、お金を払うとき、どんなことを意識するのか」を考えることは、リピート売上の向上に必須であるといえます。
次回は、「コンバージョン率改善」の一環としてECサイトの離脱率改善に有効な「UI/UX」を「食事」に置き換えて解説し、また「接するUI」「感じるUX」とイメージしてもらいながら解説します。
1978年生まれ。神奈川県横浜市出身。2001年からシステムエンジニアとして電子商店街(ネットショッピングモール)および宿泊予約などのECサイト、広告配信、動画配信、携帯電話キャリアサービス、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に携わる。10年以上にわたり複数のネットサービス企業に入り込み、お客さまのビジネス拡大に向けて従事している。現在はグループ長として複数のB to CのネットサービスプロジェクトのPM(プロジェクトマネジャー)を担当している。
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