IT以外の企業も含め多くの人と直接かかわろう――サイボウズのWebアクセシビリティ技術者まだ君は間に合う! 現役エンジニアに聞く、学生のときにやっておくべきこと(6)(2/2 ページ)

» 2016年03月31日 05時00分 公開
[益田昇聞き手:@IT編集部]
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有望な会社には直接行って話を聞こう

編集部 就職活動を開始したのはいつ頃で、どのような企業を候補にしたのでしょうか?

小林氏 就職活動を開始したのは、大学院1年生の11月頃だったと思います。就職先については、コンピュータ関連の企業というのは決めていましたが、Web系の企業にするか、SIerにするかで悩んで絞り込むことができず……。そこで、両方を候補にして就職活動を進めながら最終的に選択することにしました。

編集部 工学系の大学院では、教授推薦という選択肢もあったと思いますが?

小林氏 推薦の道もありましたが、対象企業はメーカーやSIerが中心でしたね。私の場合は、Web系の企業という選択もあり、就職活動を通してもう少しいろいろな企業を見てみたいという思いがあって推薦は選びませんでしたね。

編集部 インターンシップ制度には応募しましたか?

小林氏 大学と共同研究を行っていたメーカーの情報系研究機関でインターンを経験しました。最終的にモノ作りに重点を置く会社を志望したため、その研究機関への就職には至りませんでしたが、インターン自体はやってよかったと思っています。実際に、働いている人の人柄や社風など、説明会や面接だけでは知ることができない重要な要素を肌で感じることができたので。私は時間がなくて1社しか体験できませんでしたが、これから就活を始める学生の皆さんにはぜひ複数体験していただきたいと思います。

編集部 情報収集のために就活サイトや口コミサイトは利用しましたか?

小林氏 「リクナビ」「マイナビ」といった就活系のサイトも利用しましたし、「みん就」などの口コミサイトも、面接を受けた人の感想などの書き込みを確認するのに利用しました。ただ、これらの情報は安心感を持つのには役立ったかもしれませんが、重要な意思決定には使用することはありませんでしたね。

 やはり実際に人と会うことが、情報収集の決め手だと思っています。少なくとも自分にとって志望度の高い企業については、実際に面談を申し込んで、会社の人と直接会って話を聞くようにしました。実際に会うことで、会社全体の雰囲気や自分が働くイメージなど、会社説明会や面接だけでは分からないことを知ることができるからです。

編集部 OB訪問も行いましたか?

小林氏 自分にとって志望度の高い会社を中心に3〜4社を選び、10人ぐらいのOBに訪問しました。OB訪問も会社を知るための有効な手段になると思うので、就活生の皆さんも積極的にOB訪問を行うことをお勧めします。

編集部 最終的にサイボウズを選んだポイントは何だったのでしょうか?

小林氏 まずは、会社の社風や全体の雰囲気が自分に合っていたことです。会社に入れば1人で仕事をするわけにはいきませんので、「実際にこの会社で楽しく働けそうなのか」ということが重要な決め手になりました。

 もう1つは、「モノ作りに全力で取り組むことができるかどうか」です。サイボウズはインフラも含めて上から下まで全てを自社で作っており、自分の力が発揮できると考えました。

 また、「会社の事業の内容や方向性に共感できる」こともポイントです。サイボウズは「世界中のチームワークを向上させる」ことをミッションとして掲げていますが、こうした理想に共感することができました。「自分が学んできた専門分野だけにとどまらず、自分の能力を幅広い分野で試すことができそうだ」ということも重要です。

IT以外の企業も候補の選択肢に加えよう

編集部 就活の時にもっとやっておけばよかったと思うことはありますか?

小林氏 Web系企業とSIerという選択肢に限らず、もっと幅広くIT以外の企業も含めて話を聞いておけばよかったですね。就職活動の時期を除いて、企業が外部の個人に対して情報を公開する機会はそれほど多くはありません。この機会を使って、多くの企業の人と直接会って企業の状況を知ることができれば、就職活動に役立つだけでなく、その企業に就職しなかったとしても、社会人になってからの仕事に役立っていたと思います。

編集部 学生時代に読んでおいた方がよいと思う書籍がありましたら紹介してください。

小林氏 まず紹介したいのが、新版 論理トレーニング(野矢茂樹著、産業図書刊)。これは私が大学時代に読んで影響を受けた本で、ITとは直接関係はありませんが、考えをきちんと伝える力や、伝えられたものをきちんと受け取る力を身に付ける方法が分かりやすく解説されており、社会人になる前に読んでいただきたい1冊です。

 もう1冊は、怠けてなんかない! ディスレクシア〜読む・書く・記憶するのが困難なLDの子どもたち(品川裕香著、岩崎書店刊)です。これは、知的な遅れは全くないのに文字を読めない読字障害(ディスレクシア)を持つ子どもたちの現状と奮闘をまとめたもので、最近読んだ中で最も考えさせられた1冊です。この本もITとは直接関係ありませんが、「ITを使って何かできることがあるのでないか」という私自身の思いもあり、自分の専門であるWebアクセシビリティに関わっていて深く共感したので、就活生の皆さんにもぜひ読んでいただければと思います。

編集部 ご自身は今後どのようなことに挑戦していきたいと考えていますか?

小林氏 これまで、Webアクセシビリティの重要性を社内で理解してもらうために啓蒙活動に取り組んできましたが、現在、少しずつではありますがその重要性が認識されてきています。今後は、社内の人にも社外の人にも安心して使ってもらえるWebアクセシビリティに配慮した製品作りを実現できればと考えています。

就職に関わる活動はできるだけ早めに始めよう

編集部 最後に就活生に向けたメッセージをお願いします。

小林氏 就活生の皆さんにアドバイスしたいのは、就職に関わる活動は、できるだけ早めに始めた方がよいということです。例えば、私の場合、インターンは1社だけしか経験できませんでしたが、もっと早くから活動を開始していれば、もう何社かインターンに応募できたはずです。インターンは企業の人と接することができる貴重な機会ですので、できるだけ多く経験した方がよいと思います。

 また、早めに活動を開始すれば、インターンだけでなく、より多くの企業に面談を申し込んで、企業の担当者と直接話す機会を増やすことができます。IT以外の企業も含めて、多くの企業と話すことができれば、就職先の選択肢も広がり、進路に関わる悩みも解消されていきますし、何よりも自分に合った会社を選びやすくなるはずです。

編集部 ありがとうございました。

次回も、トップエンジニアに就活のアドバイスを聞く

 本連載では、今後もIT企業の最前線で活躍するトップエンジニアに、学生時代に行った就職活動の内容や、これから就職活動を行う学生へのアドバイスを聞いていく。ぜひお楽しみに。

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