「共にビジネスを切り開くパートナーになる」組織作りと人材活用が大切――TIS特集:アジャイル時代のSIビジネス(5)(1/3 ページ)

SIビジネスの地殻変動を直視し、有効なアクションに変えたSIerの声を紹介してきた本特集。今回は大規模SIer、TISへのインタビューを通じて「SIerにとって本当に大切なこと」をあらためて確認した。

» 2016年04月01日 05時00分 公開
[斎藤公二/構成:編集部/@IT]

今、SIerが試されていることとは?

 「SIビジネスが崩壊する」と言われて久しい。しかし、そうした中でも経営環境や“顧客に求められていることの本質”を見抜き、着実に実績を伸ばし続けているSIerが存在する。本特集ではそうしたプレイヤーにフォーカスし、具体的な取り組みや考え方を紹介してきた。

 振り返れば、規模も取り組みも各社各様ではあるものの、「顧客と共にビジネスに取り組む」というスタンスは各社共通だ。「SIビジネス崩壊」とは言われているが、「“SIer本来の役割”に応えられない組織は崩壊する」という方が正確であり、今は応えられる組織、応えられない組織の違いが明確になり始めている段階だと言えるのではないだろうか。

 今回は大手SIer、TISの戦略技術センター センター長 油谷実紀氏にインタビュー。ニーズの先を読みトレンドをリードする先進的な部門でありながら、最も重視していることはやはり“SIer本来の役割”であることを、あらためて確認できるのではないだろうか。

目的実現に必要な手段を先読みし、ビジネスの変革をリード

 ITホールディングスの中核会社として、エンジニアら約6000人を擁するTIS。その歴史と規模からは、従来型SIerの代表格といったイメージもあるが、実態はかなり違う。

ALT TIS 戦略技術センター センター長 油谷実紀氏

 「アジャイル開発やDevOpsといった手法も取り入れていますが、社内でそれらを特別に扱うこともなければ、社外に向けて特別にアピールすることもありません。お客さまの目的に応じて提供する手法の1つとして、当たり前のように使っています」と話すのは、TISの研究開発部門である戦略技術センター センター長を務める油谷実紀氏だ。

 TISは金融系、決済系の大規模システム開発を強みとしながら、金融、製造、流通/サービス、公共/公益、通信といった多種多様な業種業態に対してサービスを展開。サービスメニューは、ソフトウェア開発やシステムインテグレーションをはじめ、コンサルティング、パッケージ提供、クラウドサービス提供、アウトソーシングと多岐にわたる。多彩なソリューションを日本に加えて中国・ASEAN地域を中心とした海外でも展開する「幅広さ」が大きな特徴だ。

 そうしたソリューションに必要となる技術を、中長期的な視点で戦略的に研究開発していくのが、油谷氏が率いる戦略技術センターだ。2015年4月から社長直下の独立組織化したが、研究開発組織としての活動は10年以上の歴史がある。アジャイル開発なども、戦略技術センターが中心になって推進してきたものだ。油谷氏は、近年のSIerを取り巻く状況を次のように話す。

ALT 戦略技術センターの位置付けと役割

 「SI市場はソフトウェア開発とシステムインテグレーションの大きく2つに分けられますが、ソフトウェア開発は当社が強みとする金融系を中心にかなり好況で、当分はこの状況が続くと見ています。ただ、その中身はずいぶん変わってきていますね。従来からのCOBOLやJavaでの開発、ERPの導入などだけで通用しなくなる世界が増えましたし、お客さまにやりたいことがあり、それをわれわれが提案する、という関係でもなくなってきました。モバイルアプリ開発やIoTにおけるサービス開発などが特にそうですが、お客さま側に解答がない中で、SIerが先進的な技術をもって提案していくようなシーンが増えたと感じます」

 一方、システムインテグレーションにおいては、ちまたで言われているようにパブリッククラウドの脅威がある。「モノを調達し、構築し、稼ぐ」という従来型のビジネスモデルだけでは通用しなくなりつつある。

 「金融系でも『顧客情報も含めて、あらゆる情報を本当にパブリッククラウドに置いてもいいものか』といった議論が盛んですが、そうした中でも少しずつパブリッククラウドを使ってみる、という動きが出始めています。状況は確実に変わりつつあるといえます」

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