2016年2月に「Deferred Channel」(旧称、Current Branch for Business)向けに、Office 2016バージョンのOffice 365 ProPlusの提供が開始されました。次の機能アップデートに備えて、次の先行リリースの評価を行うにはどうすればよいのかを解説します。
本連載の前々回、前回と「Office 2016」における更新プログラムの提供方法の変更点や、企業向け「Office 365 ProPlus」に複数存在する「更新チャネル」(旧称、更新ブランチ)について説明してきました。
Office 2016は、2015年9月に「Current Channel」(旧称、Current Branch)向けにリリース済みです。一方、Office 365 ProPlusの既定の更新チャネルである「Deferred Channel」(旧称、Current Branch for Business)では、2016年2月にOffice 2016バージョンの提供がようやく始まりました。
既に混乱してしまっている読者の方もいると思います。Office 2016の日本語版は、名称の統一感のなさや、突然の名称変更がさらなる混乱を招いているようです。ここで、Office 2016の更新チャネルを整理しておきましょう。
現在のOffice 2016には、次の3つの更新チャネルが存在します。この他、Office 2016の新機能を事前に試せるプレビュープログラムである「Office Insider」向けの「First Release for Current Channel」もありますが、一般ユーザー向けの更新チャネルではないので省略します。
これらの名称は以前は別の名前で呼ばれていましたが、Deferred Channelの開始に併せて変更されました。そのため、現状、表1に示すように、オンラインの公式ドキュメント、Office 365ポータル、グループポリシーやOffice 2016展開ツール、Officeアプリケーションのユーザーインタフェースでさまざまな名称が混在する状況になっています。特に、日本語という要素が絡むことで、さらに混乱が増しています。
正式名称(2016年2月以降) | 旧称(2016年2月まで) | グループポリシー(管理用テンプレート)およびOffice 2016 Deployment Tool | Office 365管理センター(日本語版) | Office 365管理センターのプレビュー(日本語版) | Officeアプリ(日本語版)のバージョン情報 |
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Update Channel、更新プログラムのチャネル | Update Branch、更新ブランチ | 分岐の更新 | 新機能と更新プログラムのリリース方法 | Office 2016アプリの更新を取得する頻度 | ― |
Current Channel | Current Branch(CB) | 分岐識別子:Current | なし | 毎月(期限内チャネル) | 現在の分岐 |
Deferred Channel | Current Branch for Business(CBB) | 分岐識別子:Business | 標準リリース | 4カ月ごと(延期チャネル) | なし |
First Release for Deferred Channel、Deferred Channelの最初のリリース | First Release for Current Branch for Business(FR CBB)、Current Branch for Businessの最初のリリース | 分岐識別子:Validation | 先行リリース | 不明 | ビジネスの現在の分岐の最初のリリース |
表1 Office 2016の更新チャネルと対応するさまざまな表現 |
例えば、Office 2016アプリのバージョン情報(「ファイル」→「アカウント」から表示)には、Current Channelの更新チャネルの場合は「現在の分岐」(2016年2月のバージョン16.0.6568.2025以降、それ以前は「Current Branch」、16.0.6366.2036より前は表示なし)と表示され、最新のFirst Release for Deferred Channelの更新チャネルの場合は「ビジネスの現在の分岐の最初のリリース」(2016年3月のバージョン16.0.6741.2014以降)と表示されます。
「現在の分岐」を理解できても、「ビジネスの現在の分岐の最初のリリース」の意味を理解できる人は少ないでしょう(図1)。無理に日本語訳するのは適さないことを示す、典型的な例ではないでしょうか。
以前の「更新ブランチ(Update Branch)」という名称も、「Branch(分岐という意)」という用語に慣れるのに時間がかかったかもしれません。しかし、Windows as a Serviceとして提供されるWindows 10の「Current Branch」や「Current Branch for Business」と統一されていたため、次第に受け入れられてきたのではないでしょうか。
今回の名称変更は「ユーザーからのフィードバックに基づいたもの」とされていますが、そこに日本のユーザーからのフィードバックは含まれていないでしょう。「Channel(チャネル)」や「Deferred(遅延)」という表現は、「Branch」よりも分かりにくいと思います。
現状、マイクロソフトのオンラインの公式ドキュメントでも、用語が混在していたり、新しい名称への変更が反映されていなかったりする場合があるので注意してください。
2016年2月にOffice 2016バージョンのOffice 365 ProPlusのDeferred Channelがスタートするまで、First Release for Deferred Channelで、Deferred Channelに提供予定のリリースを先行的に導入したユーザーがどうなるのか気になっていました。
2016年3月に次のDeferred Channelに向けたFirst Release for Deferred Channelがリリースされたことで、この疑問は解消しました。
2016年2月公開のDeferred Channel向けリリースは、バージョン「16.0.6001.1061」です。そのFirst Release for Deferred Channelは2015年9月のバージョン「16.0.4229.1024」から始まり、2016年2月のバージョン「16.0.6001.1054」で終了し、First Release for Deferred Channelで導入したOffice 365 ProPlusは、Deferred Channel向けの2016年2月リリースのバージョン「16.0.6001.1061」に自動的に移行しました。
2016年3月には、4カ月後に予定されている次のDeferred Channel向けのFirst Release for Deferred Channelとしてバージョン「16.0.6741.2014」の提供が始まっていますが、以前のFirst Release for Deferred Channelのユーザーがそのまま次のFirst Release for Deferred Channelに移行することはないようです(図2)。
Deferred Channelに対しては、新機能を含む機能アップデートが4カ月ごとにリリースされる予定です。前出の図2では、バージョン「16.0.6001.1061」を機能アップデートとしていますが、First Release for Deferred Channelを利用していたユーザーに対しては既に提供済みの機能であることに留意してください。
次の機能アップデートは、Deferred Channelに対して4カ月後に提供されます。そして、その新機能を先行評価したいのであれば、次のDeferred Channel向けのリリースに対応したFirst Release for Deferred Channelに更新する必要があります。
なお、Office 365 ProPlusの既定では、Deferred Channelのリリースのみがユーザーに提供され、4カ月ごとの機能アップデートで次のリリース(旧称、ブランチ)に自動更新されることになります。First Release for Deferred Channelのリリースは、Office 365の管理者またはユーザーが明示的に選択しない限り、提供されません。また、4カ月ごとの機能アップデートは延期することができますが、延期するためには追加の対応が必要になります。マイクロソフトは、Deferred Chanelの最新および1つ前の、合計2つのリリースに対して、セキュリティ更新を提供します。
マイクロソフトが推奨する既定の方法を選択すると、追加の対応が必要ないため、最も簡単です。しかし、First Release for Deferred Channelを利用した先行評価において、あるいはDeferred Channelを導入してみて、アプリの機能や不具合、互換性に問題がある場合は、次のDeferred Channelへのアップグレードを延期することを考える必要があります。
また、2017年2月まではOffice 2016バージョンへのアップグレードを延期して、Office 2013バージョンのOffice 365 ProPlusを継続利用する、あるいはOffice 2013バージョンにダウングレードするという対応も可能です。
実は、筆者がメインで使用するPCは、Office 2013バージョンのOffice 365 ProPlusです。その理由は、一部のアプリで筆者の仕事の効率を著しく低下させる不具合が存在するからです。筆者のアプリの使い方に依存する不具合であるため、その詳細は説明しませんが、企業へのOffice 365 ProPlusの導入には、そのような対応が必要になるケースが多々あるでしょう。
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