4社がオープンソースNFVをリアルに検証、通信事業者のスピード向上を支援NTTデータ先端技術、ブロケード、デル、レッドハット

NTTデータ先端技術は、ブロケード、デル、レッドハットと共に、OpenStack Tackerを採用したキャリアNFVの共同検証を実施したと発表した。オープンソースを活用し、通信事業者の新サービス展開スピードを高めることが目的という。

» 2016年06月06日 15時00分 公開
[三木 泉@IT]

 NTTデータ先端技術は2016年6月6日、OpenStackおよびOpenStack Tackerを採用したキャリアNFV(Network Function Virtualization:ネットワーク機能仮想化)の共同検証を、ブロケード、デル、レッドハットとともに実施したことを発表した。

 各種コンポーネントの組み合わせで動くことを確認するだけでなく、通信事業者による商用利用を想定し、設計からサービス実装までの開発・検証によって実現性を確認したという。すなわち、通信事業者のビジネスニーズをどのようにNFVの定義に落とし込めるか、これをどのように適用し、運用できるかといった、リアルな部分を確認したのだという。

OpenStack Tackerによるこうした実証実験は、世界初という。4社は6月8〜10日に開催されるInterop Tokyo 2016で、同内容のデモを行う。

NTTデータ先端技術は、実際のサービスシナリオを想定し、運用の現実性を検証したという

 「(通信事業者は)こうしたソリューションを待っている」と、NTTデータ先端技術 SDIソリューションビジネスユニット長の三宅延久氏は話す。

 一般的に通信事業者の間でNFVに対する関心が高まっている背景には、通信事業者の間でコスト最適化への意識が高まる一方、新サービスを迅速に開発・提供しなければならなくなっていることがある。従来型の通信事業者向け通信機器では、時間を掛けて検証した上で導入した後、この通信機器は固定化し、拡張や縮小を柔軟に行うことができない。新サービスの投入のための機能追加も、従来型の機器では迅速にできない。機器が備えていない機能の実装に、数年掛かることもある。

 「新サービスをやりたいときに、ベンダーに頼っているとスピードダウンしてしまう。通信事業者が自らの側でコントロールできることが重要」と三宅氏はいう。

 NFVでは、従来型通信機器の機能を、汎用コンピュータハードウェア上のソフトウェアで実行する共に、従来型機器ではやりにくかった付加価値機能の実装を容易にする。ルーティングからセキュリティまで、さまざまな機能をソフトウェアとして実装することで、過大な投資を抑えられる一方、ニーズが高まれば即座にプラットフォームを拡張できる。さらに、ネットワーク製品ベンダーが提供する他のVNF(Virtual Network Function:仮想ネットワーク機能)を任意に組み合わせることで、迅速な機能拡張ができる。

 NFVでは、既存の通信事業者向け機器ベンダーが、自社の独自ソフトウェアとOpenStackなどとの組み合わせで提供している例もある。一方、今回の検証で使われているのは全て汎用製品あるいはオープンソースベースのソフトウェアだ。サポートの必要性から、デル、レッドハット、プロケードといった企業が関わる意味がある。

 ソフトウェアであっても、ベンダー独自の製品では、その製品の開発・提供ロードマップにユーザー側が振り回されてしまう。こうした点から、オープンソースソフトウェアを歓迎する通信事業者は多い。

 OpenStack Tackerは、NFVのオーケストレーションとVNFの管理を行うソフトウェアコンポーネントを開発しているサブプロジェクト。サービスチェイニングにも対応する。実行したいサービスを設定と共に手順として記述することで、VNFの仮想インスタンスを適切な設定で自動的に起動する。いずれかのプロセスに障害が発生した場合に、フェイルオーバーを行う「オートヒーリング」も可能。

 今回の検証では、通信事業者の顧客からの申し込みを受け、VNFにブロケードの「Brocade vRouter 5600」を使って、この顧客のVPNを開通させ、設定変更し、廃止するという一連の運用プロセスを確かめた。また、これを実行する仮想インスタンスがダウンした場合には自動的に修復する機能を確認した。

VNFカタログでネットワークサービスの一覧を表示し、「Onboard VNF」でサービスを新設、「Delete VNFs」で終了できる

 Tackerでは、設定を含むVNFのライフサイクル管理シナリオを、YAMLによる記述で描ける。このため、ユーザーからの申し込みからサービスの提供開始や内容変更のプロセスを自動化しやすい。とはいえ、通信事業者が新規サービスの開発で、自らYAMLを書きたいかどうかは別の問題だ。

 NTTデータ先端技術では、通信事業者が提供したいサービスを設定に変換し、これを安定的に運用する部分で、自社の価値を発揮していきたいという。

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