OpenDaylightとOpenStackとの関係はどうなっていくのか。OpenStackネットワーキングはSDN化していくのか。OPNFVはこれらとどう絡むのか。OpenDaylightとOPNFVのボードメンバーを務めるレッドハットの著名エンジニア、Chris Wright氏に聞いた。
SDNの世界は急速に変化し、ますます混とんとした状況が生まれている。OpenDaylightとOpenStackとの関係はどうなっていくのか。OpenStackネットワーキングはSDN化していくのか。新たに発足したOPNFVは、何をやろうとしているのか。2014年10月、これらの疑問をぶつけるのに最もふさわしい人物、Chris Wright氏にインタビューした。
Chris Wright氏は、米レッドハットのプリンシパルソフトウェアエンジニアとして、セキュリティおよび仮想化技術を中心に、約10年にわたってLinuxカーネルの進化に大きく貢献してきた。最近ではSDN/NFV担当テクニカルディレクターとして、ネットワーキング関連で活躍。オープンソースのSDNコントローラ開発プロジェクトであるOpenDaylightのボードメンバーを務めている。また、9月末に発足した、キャリアNFVのためのオープンソース参照実装を構築するOPNFVのボードメンバーにも就任した。
――OpenDaylightが理解しにくいと感じる点の1つは、例えばOpenDaylightにおけるGroup-based Policyに関する活動が、OpenStackのNeutronでも行われるなど、動きが重複しているように見えるところにあります。
2つの活動は連携しています。設計としては、Neutron側ではポリシー管理のメカニズムに対するAPIを提供し、OpenDaylight側はポリシーデータベースのオーナーとしての役割、およびポリシーをネットワークに送出する役割を担います。
このように、一見NeutronとOpenDaylightで並行して行われているように見える活動は、実際には当初から設計されています。
ポリシー以外のネットワーク管理でも、同一の設計手法を採っています。Neutronは「サブネットをくれ」などといった指示をAPIコールとして受け付け、これを直接OpenDaylightのコントローラに渡すことができます。
Neutronを内部実装のみで使う場合、安定性と拡張性に課題が生じます。Neutronの当初の目的はSDNコントローラーではなく、プラグインできるOpenStack用のネットワークサービスだからです。実際に多くの場合、Neutronは外部の商用コントローラーとともに使われています。
私たちが推進しようとしているのは、OpenDaylightを、Neutronでネットワークを管理していく際のレファレンス実装にすることです。
――しかし、Neutron自体がSDN的な機能を強化しようとしているのではないかという印象を受けます。
Neutronプロジェクトは、現在根本的な問題を抱えています。(それ以前のネットワーク機能である)nova-networkに、機能が完全に追いついていないということです。
nova-networkはすでにいくつかのクラウドで使われています。こうしたユーザーがNeutronへ移行できるようにするためには、同等な機能が必要です。
Neutronのチームはnova-networkと同等な機能を十分なスピードで構築してこなかったため、コミュニティから「nova-networkの開発を再開し、Neutronをインキュベーションプロジェクトに戻すかもしれない」と言われてきました。そこで、ギャップを埋めるための機能追加が進められていますが、その一部はSDN的に見えるかもしれません。
つまり、nova-networkからNeutronへの移行を促すのに十分な機能を提供しているといえるようにするため、Neutronを補う必要が生じるという、奇妙な状況が生まれているのです。
これはおそらく一時的な課題です。「NeutronこそがOpenStackのネットワーク機能である」ということが明確になりさえすれば、外部のコントローラーとの連携に、再び力を注げるようになります。
私たちは、OpenDaylightを、Neutronによるネットワーキングでの中核となるオープンソースのレファレンス実装にしたいと思っています。そしてこれを、プロジェクトに新しいコードをマージしていくCI(コンティニュアスインテグレーション)システムおよびゲーティングシステムの一部にしていきたいと思っています。
つまり、NeutronはREST APIエンドポイントに徹するようにしよう。ネットワークをどのように管理するかは、Neutronの外に任せようということです。
このような方向性は、コミュニティ内において十分な賛同を得ていると思います。しかし、nova-networkとの機能の同等性を実現するという短期的なニーズがあり、このために分散仮想ルータなどの機能が求められているのです。
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