あらためて、ヴイエムウェアがハイパーコンバージドで目指しているものとはあなたの知らないハイパーコンバージドインフラの世界(5)(1/2 ページ)

ヴイエムウェアは結局ハイパーコンバージドインフラ(HCI)で何をやりたいのか。なぜ「Cloud Foundation」というもう1つのHCIが必要なのか。VMworld 2016での取材を通じて、これを明らかにする。

» 2016年09月16日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

 ハイパーコンバージドインフラの世界を、オーソドックスではない切り口で紹介している本連載。今回は、ヴイエムウェアの推進するハイパーコンバージドインフラ(以下、HCI)について、上席副社長兼ストレージ&アベイラビリティ事業部門担当ゼネラルマネージャ、Yanbing Li(ヤンビン・リー)氏に直接確認したポイントや、VMworld 2016における関連セッションの内容に基づきあらためて紹介する。

VSAN Ready Nodeとはどういう存在か

 現在のヴイエムウェアにとってHCIとは、「VSAN Ready Node」、「VxRail」、「Cloud Foundation」の3つの取り組みを意味する。VSAN Ready Nodeは同社のソフトウェアストレージ製品「VMware Virtual SAN」を動かすためのサーバ製品の認定プログラム。「VxRail」はDell EMCブランドが販売するHCIアプライアンスを共同開発しているプロジェクト。そしてVMworld 2016で発表されたCloud Foundationは、EVO RACKおよびEVO SDDC後継の大規模HCIソリューションだ。

 このうち、ユーザーにとってHCIとの関係で最も分かりにくいのはVSAN Ready Nodeかもしれない。「VSANは、ユーザー自身が(ライセンス料を払って)自由に導入できるソフトウェアではないのか、なぜ特別なプログラムが存在しているのか」という疑問が出てくるのも当然だ。実は、VSAN Ready Nodeは構成を含めて認定するプログラム。オールフラッシュ構成、ハイブリッド構成合わせて合計7種のプロファイル(仕様)が現在のところ設定されている。ユーザーはVSAN Ready Nodeの互換製品リストで自らサイジングを行い、求めるIOPSやCPU性能、ストレージ容量に応じていずれかのプロファイルを選択し、その後に適合するベンダーと機種を選ぶことができる。ベンダーを選んでから適合するプロファイルの機種を探すことも可能。

 ユーザーは認定サーバを使い、自由な構成でVSANを用いたVMware vSphere環境を構築することももちろんできる。だが、それでは専門家による細かなサイジングおよびパフォーマンスチューニングが必要になったり、失敗を防ぐためにリソースを余分に調達することになったりする可能性がある。

 VSAN Ready Nodeでは、利用開始までに必要とされてきた上記のような従来のプロセスを圧縮し、さらにユーザー拠点での構築作業を簡素化して専門家を不要とすることで、「構築から利用へ」の動きを加速することが目的となっている。VSAN Ready Nodeに関連してもう1つ重要なのは、VSAN(およびvSphere)が、小さく始めて後から拡張しやすい機能を備えていること。「5年に1度」などではなく、必要に応じてVSAN Ready Nodeを追加調達し、拡張するモデルに移行できれば、さらにオーバープロビジョニングが防げ、無駄が減らせるというのがヴイエムウェアの主張だ。

 さらにいえば、vSphereの運用担当者がストレージの運用も担えるようになり、ストレージのエキスパートを雇う必要がなくなるというメリットがある。

 一方、ヴイエムウェアはDell EMCと共同でVxRailの開発を続けている。VSAN Ready Nodeでヴイエムウェアが供給しているソフトウェアはvSphereとVSANに限られるが、VxRailではEVO:RAIL当時に提供していた管理ソフトウェアの継続開発が進められており、Dell EMCのデータ管理ソフトウェアも搭載されている。こちらはヴイエムウェアにとって、ハードウェアを含めた「さらにHCI的」な取り組みができる場となっている。

 Li氏に、HCIでのニュータニックスに対する優位性をあらためて聞いたところ、最初に返ってきた答えは選択肢の幅広さだ。米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)がVSAN Ready Nodeプログラムに戻ってきたこともあり、同プログラム参加ベンダーは15社、製品数は記事執筆時点で164に達している。

VSANがvSphereに統合されているということの意味

 ソフトウェアベンダーとしてのヴイエムウェアにとって、HCIに関する取り組みの焦点となるのはソフトウェアストレージのVSANだ。Li氏は、「VSANはハイパーコンバージドであると同時にハイパーバイザーコンバージドでもある」と表現する。「ハイパーバイザーに統合されている」という意味だが、これには「ハイパーバイザーのカーネルに組み込まれている」という表現では説明しきれない意味がある。

 VSANは、ヴイエムウェアがストレージ製品ベンダーに提供しているvSphereのためのストレージ管理機能「VMware vSphere Virtual Volume(VVOL)」と同一のコードをベースとしたソフトウェアストレージだ。このため、VVOLのメリットを完全に享受できる。根本的に、ストレージを仮想化環境の世界へ引き込むことができる。

 VVOLでは、各仮想マシンに対して1ボリュームを割り当てるイメージでストレージを使う。管理単位を仮想マシンに統一でき、従来型のストレージのような、RAIDグループやストレージボリュームの作成・運用は不要だ。それでいながら、性能や可用性についてのポリシーは、従来のようにストレージボリューム単位でなく、仮想マシン単位で適用できる。例えば現時点で、Storage I/O Controlという機能を用い、特定仮想マシンのI/Oレートに制限をかけることが可能だ。VMware HAおよびDRSにも対応している。

 これはVSAN自体の解説記事ではない。だが、ソフトウェアストレージの違いはHCI製品の比較における重要なポイントであるため、ヴイエムウェアの主張に基づいて、以下に箇条書きでVSANの特徴を挙げる。

  • vSphereにネイティブな仕組みであるため、低いCPU負荷で安定した性能を発揮する
  • 最大64ノードにわたって分散ストレージを構成でき、仮想マシンの統合率が高い
  • 性能はノード数増加でリニアにスケールする。最大値は、オールフラッシュ構成の場合640万IOPS、ハイブリッド構成では260万IOPS
  • レイテンシはオールフラッシュ構成の場合、一貫して1ミリ秒以下という
  • Virtual SAN 6.2でエンタープライズ向けの機能が充実。データの重複除外/圧縮機能やRAID 5/RAID 6相当のデータ保護が実現している

 ユーザーアンケートによると、安定的な性能およびデータ保護機能から、VSANユーザーの64%が「ビジネスクリティカル」なアプリケーション、すなわちOracle RAC、SQL Server、SharePointなどにVSANを利用していると、ヴイエムウェアは報告している。

 また、障害対応に関連して興味深い機能に「ストレッチクラスタ」がある。これは、最大100km離れた2拠点間で、データを同期保存し、障害時にフェイルオーバーできるというもの。VSANの開発担当者は、ハイエンドストレージにしかなかった機能だと話す。

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