1行だけの「TODOリスト」――仕事をゲームのように楽しむ方法田中淳子の“言葉のチカラ”(35)(2/2 ページ)

» 2016年10月11日 05時00分 公開
[田中淳子@IT]
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たった1行の「TODOリスト」

 たった1つの「やるべきこと」に取り組んだ人もいる。BさんというPMである。

 Bさんのチームには、「扱いにくい年長者」Cさんがいた。Cさんは「彼は、扱いにくい。指示した仕事は納得しないとやらないし、自分のペースだけを大事にしてチームで行動できない。技術力はあるが、同じプロジェクトのメンバーとしてやっていくのはできれば避けたい」と、どのPMからもメンバーからも距離を置かれていたという。

 Bさんは「Cさんを攻略する!」と「TODOリスト」に入れた。それができれば、チーム運営に自信が持てるようになる、と思ってのことだ。周囲にも「オレ、Cさんと仲良くなる!」と宣言した。

 Bさんはまず、Cさんという人そのものに興味を持った。「どうしてこの人はここまで大勢から『困ったものだ』と言われているのだろう」と思い、まずは徹底的に自分からコミュニケーションをとるようにした。

 朝晩のあいさつ、ねぎらいの言葉、仕事に関する質問……。Cさんの反応はそっけないものだったが、時々質問に答えてくれることもあった。Bさんは、その中からCさんが反応を示しやすい話題を探り、Cさんの話を聞くように心掛けたそうだ。「教えてくださってありがとうございます!」と笑顔で感謝の言葉を伝えていたら、少しずつCさんと会話できる時間が増えてきたという。

 Bさんは、こう話してくれた。

 「周囲はCさんのことを、『扱いにくい』と言っていましたが、ちゃんと話してみれば、そうでもなかったのです。言葉は少ないけれど、スキルが高いだけではなく、さまざまな経験を積み、開発に対するアイデアも意見もたくさん持っている。思い込みを排除してCさんの話を聞いてみたら、教えてもらえることが増えて仕事がしやすくなりました」

 そんなある日、Bさんが体調を崩して仕事を休んだ。2日ぶりに出社したら、Cさんが「身体、大丈夫ですか?」と声を掛けてくれたそうだ。

 これには周囲もとても驚いたらしい。「いったい、何をしたんですか? あの、気難し屋のCさんが体調を心配してくれるなんて!」と尋ねられたという。

 事務仕事でも人間関係でも「ああ、いやだなぁ」と思っているだけでは状況は変わらない。「TODOリスト」に入れて、「やるぞ!」と取り組む。そうすると、大変な仕事にも「やりがい」が感じられるようになるのだろう。

 “Enjoy business as a game.”という言葉がある。せっかく何かに取り組むなら、「ゲームのように挑戦してみる」というのは、仕事を楽しむコツの1つだ。

筆者プロフィール 田中淳子

 田中淳子

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー

1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。

日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。

著書:「ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方」(日経BP社)「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。

電子書籍「『「上司はツラいよ』なんて言わせない」(ITmediaのebook)、「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”――職場で役立つ30のコミュニケーション術」(ITmediaのebook)

ブログ:田中淳子の“大人の学び”支援隊!


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