最初の失敗は、同社がある団体のブランドサイトの構築案件を手掛けた際の話だ。
動画を前面に出すデザイン、日本語/英語の切り替え機能、長年の実績を検索する機能など、それまで手掛けてきた中では大規模な案件だったという。
「お客さまの認知度も高く、うまくいけば、かなり評判になる案件でした」(竹内氏)
こうした場合は、リード技術者に最も実績のあるスタッフをアサインするのが定石だ。しかしこのときは、社内からある技術者を抜てきし、任せてみることにしたという。
「プロジェクトが始まると、その技術者からは『順調だ』という報告しか上がってきませんでした。何度も確認をしていましたが、いざ開発のタイミングに入ると、完了予定のものが終わらない」(竹内氏)
結局納期に間に合わず、別のメンバーを投入して何とかプロジェクト完了まで持っていったが、顧客に迷惑を掛けたという。
「技術者にも気負いやプライドがありますから、たとえうまくいってなくても、なかなか言いだせない」と山本氏。
「そうなんです。本人も『期待に応えたい』という自負と、実際にうまくいかない状態のはざまにいたはずなのに、チームできちんとサポートできなかった。うまくいかない状態のときこそ、素早くチームで共有した方がいいという雰囲気に持っていけなかったことが失敗の原因だったと思います」(竹内氏)
この経験から、竹内氏は「良い報告は聞きたくない。悪い報告だけをしてほしい」と社内に徹底したという。しかし、どれほど浸透しているかは未知数。本人申告の「順調」「大丈夫」を、どこまで鵜呑み(うのみ)にしてよいかは悩ましいところだという。そこで、プロジェクト管理ツールとして「JIRA」を採用し、工数管理だけでなく、それぞれのタスクの「成果物」を定義付け、リスクを低減させるようにしたという。
経験のない者をリーダーに登用するのは、技術者の育成において必ず通らなければならない通過儀礼のようなもの。会社が成長していくためには必要不可欠だが、同時にリスクも伴う。山本氏は「いかに安全に小さな失敗をさせるか。失敗をマネジメントすることこそが、大きな失敗を未然に防ぐ最良の手段。安全に小さな失敗をさせられる環境をいかに醸成するかが今後のポイントだと思います」とアドバイスした。
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