トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか、同じトラブルを起こさないようにどういう手だてを取ったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探ります。
クライアントの要求がまとまらない、開発工程に入ってから仕様変更があいついだ、でも納期は変わらない――システム開発の現場では、日々阿鼻(あび)叫喚のトラブルが起こっている。
しかし後から振り替えれば、トラブルには幾つかの共通点があり、事前に注意していれば防げたものも少なくないことに気付くだろう。
「開発残酷物語」は、システム開発会社比較検索サービス「発注ナビ」ユーザーのシステム開発会社の方々に、自慢(?)の失敗事例を披露いただき、契約で押さえるべきポイントやプロジェクト運営の勘所、トラブル防止法などのナレッジを共有し、読者諸氏がこれから経験するトラブルを未然に防ぐことを目的としている。
聞き手は、ゲーム開発会社の経営時代に豊富なデスマーチ経験を持つ山本一郎氏。華麗な失敗を披露いただくのは、「ジェネロ」の代表取締役 竹内大志氏だ。
初対面の竹内氏と山本氏。竹内氏の経歴から話が始まった。
竹内氏は多彩な経歴を持っており、プライスウォーターハウスクーパースから、東京めたりっく通信、アイピーモバイルなどに勤め、その後エリクソン・ジャパンでコンサルタントなどを行う傍ら、ジェネロテクノロジー(現ジェネロ)を立ち上げ、現在に至っている。
「いろいろと苦労なさってますね(笑)※」と、山本氏。痛いところを突く。
苦労人、竹内氏が代表を務める「ジェネロ」とは、どのような会社だろうか。
同社はインターネットを使った収益化のコンサルティングに特化したデジタルエージェンシーとして2003年に設立。現在は、オープンソースCMS(Contents Management System)である「Drupal」や、CRM(Customer Relationship Management)ソフトウェア「SugarCRM」など、オープンソース技術を活用したソリューションを提供し、グローバルコミュニティーの開発力を活用して、顧客のオンラインマーケティングの戦略実行、業務プロセスの改善、収益の向上などを支援している。
特にDrupalには力を入れており、さまざまなモジュールの開発なども積極的に行っている他、最新の「Drupal 8」に対応したクラウドサービス「ジェネロクラウド」も提供している。今後はDrupalを中心にビジネスを展開し、会社を拡大させていきたい考えだという。
「Drupalは米国では、National Basketball Association(NBA)、ジェネラルエレクトリック(GE)、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど、大手のWebサイトに多数採用されています。当社ではこれまで、中小規模のWebサイトの構築を中心にDrupalを使ったビジネスを手掛けてきました。2016年はエンタープライズ向け事業にシフトすべく、大規模Webサイトも積極的に手掛け、年明けからは本格的に展開していきたいと考えています」と、竹内氏は思いを語ってくれた。
Drupalはオープンソースソフトウェアであり、CMSの1つとして捉えられる面もあるが、コンテンツ管理のみならず、さまざまなサービスや商取引も可能にするWebアプリケーションフレームワークとして位置付けられることも多い。
「xDSL、FTTH、3Gと新たな通信をいろいろ手掛け、行き着いた先がクラウド。そしてDrupalというのは、いい着眼点ですね。私も、かつてTreasure Dataで集めたマーケティングデータをR言語で解析し、Drupalでサイトにつなぎ込むといったことをやりましたが、いろいろな可能性がある」と、山本氏は同社がクラウドやDrupalに目を付けたことを高く評価。
しかし、そうしてビジネスを拡大していく課程で、今回のケーススタディとなる2つの“失敗”が生まれたのだった。
1999年に設立されたADSLを初めとするxDSLサービスのベンチャー。資金難に直面し、2001年にソフトバンクグループに買収された
高速データ通信サービス事業への参入を目指し、2002年に設立された。2005年に2GHz帯の割り当てを受けるものの、資金調達できず2007年に自己破産申請
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