「API Meetup Tokyo #17 〜年末スペシャル〜」で、Web APIの適用事例として「LINEのchatbot展開」をテーマにした講演が行われた。本稿では、この講演の内容についてレポートする。
Web APIに携わる開発・企画担当者向けのオープンな勉強会「API Meetup Tokyo #17 〜年末スペシャル〜」が2016年12月9日に開催された。今回の勉強会では、Web APIの適用事例として、LINEのWeb API担当者をスペシャルゲストに迎え、「LINEのchatbot展開」をテーマにした講演が行われた。本稿では、この講演の内容についてレポートする。
LINEは、2016年4月にトライアルでWeb APIを公開し、2016年9月から正式公開として「Messaging API」の提供を開始している。「LINE社内では、すでに2011年ごろからニュースボットや翻訳ボット、天気ボットといったチャットボットが使われていた。また、2014年からは、法人向けに、チャットボットを活用したメッセージサービス『LINEビジネスコネクト』を提供してきた。そして2016年9月、法人だけではなく、もっと幅広いシーンでチャットボットを活用できるよう、『Messaging API』を一般向けに正式公開した」と話すのは、LINE 企画4チーム マネージャーの二木祥平氏。
同社が「Messaging API」を一般公開した市場背景について二木氏は、「近年のユーザートレンドを分析すると、スマホへのシフトが急速に進んでいる一方で、新規のアプリはほとんどインストールされず、インストール後の継続利用も期待できないのが実状だ。また、ユーザーのメール離れが進行するとともに、検索エンジンのトラフィックも減少傾向にある。このことは、コミュニケーションや情報収集の手段がSNSにシフトしていることを意味している。さらに今後、一部の主要アプリに利用時間が集中していくことが予想される。こうした状況の中で、LINEのメッセージ機能をマーケティングに活用したいという要望が強まってきたことを受け、それまで限定的にオープンしていたWeb APIを一般公開することにした」と説明している。
同社の調査によれば、LINEのメッセージ機能は、メールに比べて非常に高い配信効果を実現しており、LINEメッセージのリンククリック率はメールの約7倍に達したケースもあるという。また、企業から送られてくる情報の取得・閲覧で利用しているメディアに関する調査では、LINEの利用率が急速に高まり、2014年の37.0%から、2015年には68.0%に増加したという結果も出ている。このことから、「LINEのメッセージ機能は、ユーザーにワントゥーワンでアプローチできる最も有効なツール」(二木氏)として、さまざまな業界から注目を集めているのである。
では、正式公開された「Messaging API」は、具体的にどのようなシーンで活用されているのか。二木氏が、ライフスタイル、EC、カスタマーサポートの3つに分けて代表的な活用事例を紹介してくれた。
まず、ライフスタイルの活用事例では、みずほ銀行がLINEのトーク上から専用スタンプを送信することで残高照会を実現。ヤマト運輸では、LINEで再配達の受付を開始し、日時・場所変更のアクション率がメールに比べて60%改善したという。この他、AIR DOでは飛行機の搭乗手続きをLINEだけで完結。NAVITIMEは、LINEトーク上での乗り換え案内を可能にしている。
ECの活用事例では、ZOZOTOWNが、LINEメッセージで値下げや再入荷、セール、コーディネートなどの情報を配信。LINEメッセージからサイトへの遷移率はメールの2倍ほどに高まり、ユーザーの半分以上が流入するという成果を上げている。
カスタマーサポートでは、Goo-netが中古車の在庫問い合わせに「Messaging API」を活用。中古車探しからディーラーとの商談までをLINEで完結できるようにした。大東建託では、部屋探しのサポートをLINEのトーク上で行うことでオペレーターのレスポンスを向上。2015年5月に開始し、1カ月弱で約15万人からの問い合わせに対応したという。また、LINE Payでは、カスタマーサポートにFAQボットを試験的に導入。約1カ月のチューニングによって、回答結果に対するユーザーの満足率を67%から89%まで改善している。
併せて、二木氏はLINE BeaconのAPI活用事例についても紹介。トーハンとのコラボ企画では、全国150の書店舗で「LINEマンガ店頭試し読みキャンペーン」を実施したという。このキャンペーンは、書店の店頭にビーコン端末を設置し、端末の近くでLINEを立ち上げるとLINEマンガの試し読みができるというものだ。
また、阪急うめだ本店では、店頭の商品売場にビーコンボタンを設置し、詳細な商品情報をLINEで受け取れる仕組みを提供。1週間で来店客1000人のうち約20%がビーコンボタンを利用していたとのこと。
なお海外の動きとして、「LINE BOT AWARDS」の台湾版ともいえる「LINE PROTOSTAR」が行われ、スタートアップ企業から紛失物通知ボットや英語辞書ボット、クイズボットなどが提供されていることも紹介した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.