トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか、同じトラブルを起こさないようにどういう手だてを取ったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探ります。
クライアントの要求がまとまらない、開発工程に入ってから仕様変更が相次いだ、でも納期は変わらない――システム開発の現場では、日々阿鼻(あび)叫喚のトラブルが起こっている。
しかし後から振り返れば、トラブルには幾つかの共通点があり、事前に注意していれば防げたものも少なくないことに気付くだろう。
「開発残酷物語」は、システム開発会社比較検索サービス「発注ナビ」ユーザーのシステム開発会社の方々に過去失敗事例をお話しいただき、契約で押さえるべきポイントやプロジェクト運営の勘所を読者諸氏と共有し、これから経験するトラブルを未然に防ぐことを目的としている。
聞き手は、ゲーム開発会社の経営時代にさまざまなデスマーチ経験を持つ山本一郎氏。今回、失敗談をお話しいただいたのは、「ブリッジソリューションズ」の代表取締役 阿部満氏だ。
まずは阿部氏が、同社のビジネスを山本氏に説明する。
「当社のお客さまは、売上規模5億から50億円あたりの企業です。社内に情報システム部門がなく、専任の情シス担当者もいらっしゃらない、というお客さまが多いですね。これぐらいの規模ですと、システム導入の予算はプロジェクト当たり400〜600万円程度でしょうか」(阿部氏)
山本氏も、大手企業に買収された中小企業のシステム統合案件に幾つか携わったことがあり、似たような規模の企業と向き合ったことがあるという。
「苦労も多いのではありませんか?」(山本氏)
「そうですね。中小企業の方がシステム導入は簡単と思われるかもしれませんが、実際には現場スタッフの裁量に依存している部分が多く、むしろ解決すべき課題が多いと思います」(阿部氏)
山本氏は、「あ、それ分かります。商品の在庫がないのに売りを立てちゃって後で帳尻を合わせるみたいな、『経理的にどうなの?』ということを現場の裁量でやっているケースもありますよね」と、同意する。
「そういうケースも含め、多くの場合、現場の仕事の進め方を、そのままシステムに置き換えていくというのは難しいですね。何らかの業務改善が伴うことが多くなります」(阿部氏)
「なぜ、わざわざ中小企業に特化したITソリューションサービスという難しい領域を選んだのか?」という山本氏の質問に対する阿部氏の答えは明確だった。
「誰もやりたがらないからこそ、商機があると考えました。もともと当社はコンサルティングが中心で、ITソリューションの提供は外部のパートナー企業に依頼していました。しかし、コンサルティングだけではなく導入の最後まで携わりたいという気持ちが強くなり、自社でITソリューションも提供することにしました。現在は、パートナー企業と協業しつつ、自社でも開発を行っています」(阿部氏)
そんな同社の自社開発案件の中から、今回のケーススタディーを紹介していただいた。
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