2021年までのデータとアナリティクスの戦略予測Gartner Insights Pickup(9)

データとアナリティクスを担当するリーダー向けの戦略予測レポートを発表した。レポート作成に当たり数千人の顧客と話す中で、幾つかの重要な事実が見えてきた。

» 2017年02月17日 05時00分 公開
[Doug Laney, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 数人の同僚と私は最近、データとアナリティクスを担当するリーダー向けの戦略予測レポート「Predicts 2017: Licensing, Legal and Language Lessons for Data and Analytics Leaders」(2017年を予測する:データとアナリティクスを担当するリーダーのためのライセンシング、法務、言語に関する教訓)を発表した。

 これは技術に関する予測をまとめたものではなく、利用可能な大量の情報資産がますます増える中、企業におけるそれらのマネタイズ(収益化)、管理、測定を促進する要因について予測したものだ。

 われわれは、情報がビジネス資産として認知されると同時に(財務諸表には計上されないまでも)、そのオーナーシップ(※)、権利、収益化、価値評価の問題が、情報についての効果的なコミュニケーション方法とともに、データとアナリティクスを担当するリーダーにとって最優先事項になるだろうと考えている。

※ownership=「所有」「所有権」「所有者であること」を指す。

 われわれがこの1年に数千人の顧客と話す中で見えてきた以下の幾つかの重要な事実は、興味深い大きな変化の予兆だ。

  • ほとんどの企業では、データやアナリティクスに関連する考え方が部門間でうまく伝達されておらず、そのために情報の最適な管理や活用がなされていない
  • 一部の大手ソフトウェアベンダーは契約により、ユーザーが自社のデータの利用や抽出を行うに際し、ベンダーのソフトウェア以外の方法を使うことを禁止している
  • ほとんどのビジネスリーダーやアナリティクスリーダーは、自社の独自開発したアルゴリズムの法的な保護を十分に行っていない
  • 30%以上の企業がバーター取引、販売、あるいは一括ライセンス提供によって、情報資産を直接収益化している
  • 企業のデータおよびアナリティクス能力が、機関投資家や株式アナリストの重要な関心の対象になり始めている

 冒頭で挙げた戦略予測レポートで、われわれは以下のように、今後5年間の主要な5つの動向について論じている。

1.ドロレス・イアンニと私は、ベンダーが契約により、企業が自社のデータをベンダーのアプリケーションから抽出することを禁じている問題を取り上げた。オペレーションデータをデータウェアハウスやデータレイクに抽出したくない人などいるだろうか。われわれは、こうした契約条項を設けるのは嘆かわしいことであり、それらは早々に削除されるだろうと予想している。
 だが、現時点でそうした厳しい条項が契約に盛り込まれている場合は、ドロレスのこの指摘のように、注意が必要だ。「『データは自分たちのものであり、自由に移動できる』と思っても、そこで踏みとどまらなければならない」。われわれはレポートで、こうした条項が市場に与えると予想される影響や、こうした状況に対処する際の推奨事項を説明している。

2.アレックス・リンデン、マーク・ハルパーンと私は、立ち上がりつつあるアルゴリズムの市場について検証した。その過程で、企業におけるアルゴリズムの特許取得件数が15年前の30倍に増えていることが分かった。われわれは、このことの企業への影響や、こうした知的財産の市場の台頭について論じている。

3.イェフィム・ナティスと私は、データ自体のためのより成熟したIP(知的財産)市場を調査した。多くの企業が正式なオンラインデータ市場でデータの売り手か買い手になる見通しだ。われわれは、このことが企業、政府機関、最高データ責任者(CDO)、そして現在および今後のデータブローカーに与える影響を分析している。

4.バレリー・ローガンは、企業内におけるわれわれの「データについての話し方」には、極めて大きな改善の余地があると述べている。バレリーは、情報リテラシー、あるいは自身の造語で言うところの「第2言語としての情報(ISL)」(Information as a Second Language)の能力の伝授が行われるようになると予想している。

5.アンドルー・ホワイトと私は、インフォノミクスに関するわれわれの調査を基に、「企業のデータおよびアナリティクス能力(情報ポートフォリオを含む)を評価する株式アナリストが、多数を占めるようになっている。このことを受け、企業が社内情報の価値評価および監査手法を考案するようになる」と予想している。
 情報はバランスシートの資産とは考えられていないが、金融アナリストや企業は、そうした資産と認識し始めている(会計士はまだそうではない)。


 皆さんにこのレポート全体を読む機会があることを願っている。感想や意見をお寄せいただければ幸いだ。

出典:Data and Analytics Strategy Predictions Through 2021(Gartner Blog Network)

筆者 Doug Laney

ダグ・レイニー

バイス プレジデント兼 最上級アナリスト


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