ところで、冒頭のオフショアの方はどうなったのだろうか。こちらは浦坂氏から現状を説明してもらおう。
「先ほどお話ししましたように、10人採用して残ってくれるのは2〜3人です。でも、残ったメンバーは日本流スタイルに順応して、自分から提言してくれるような人たちです。一緒に頑張ろうと意識する人が残ってくれる。彼らを軸にビジネスも軌道に乗ってきました」(浦坂氏)
しかし、10人中2〜3人となると相当打率が悪い。「撤退」の2文字が浮かんできても仕方がないと考えるのが普通だ。しかし。宮崎氏たちは引き続き、カンボジアでのビジネスを続けている。
「今はまだ国からの補助金も出ているので、もうちょっと時間をかけて、彼らが成長するのを見ていきたいと考えています。みんな真面目で、昭和の日本人のような純朴さがあるんです。わが子のようにかわいいです」(宮崎氏)
山本氏はこの言葉に「まるでお父さんみたいだ」と感想をもらす。
「乗りかかった船ですから」と宮崎氏が答えると、山本氏は「『いまは利益が出なくてもゴーだ!』と言ってくれる社長はいいですね。目先の数字を追わないところに、経営者の『度胸』が見えます」と励ます。
「どうしよう。連載タイトルは“残酷物語”なんですけれど、全然残酷じゃない。むしろイイ話になっちゃった(笑)」(山本氏)
それを聞いて、「いえいえ。社員や家族には、結構“残酷”な思いをさせたと思います」と、しんみりと話す宮崎氏。明るく語ってはきたが、実はここに至るまで「経営の危機」に何度も陥り、つらい日々を過ごしてきたという。「何をするにも4年くらい我慢してきました。カンボジアで4年、壱岐市で4年。石の上にも8年です」と宮崎氏が語ると、浦坂氏が静かにうなずく。
宮崎氏たちの挑戦は続く。
「定着すれば離脱しない。だからそこでマネタイズできる『分岐点』があり、私たちにはそこまで持っていけるノウハウがある。都会から人を呼ぶのではなく、そこにいる人を育てる――時間がかかる事業を、より効率良く他の地域に展開していきたいです」(宮崎氏)
誰かがやらねばならぬ――海外、そして地域の活性化に奔走した8年間。経験がノウハウになるまでに時間はかかったが、経営リスクを取ってまでも「理念」を掲げ戦い続ける。そういう企業、そういう失敗があってもいいのではないだろうか。
次回以降も山本一郎氏が、発注ナビユーザーの炎上事例をぶった切ります。お楽しみに。
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