納品したシステムに「バグが残っているから」と支払いを拒否したユーザー。軽微なバグであり、改修のメドが立っているにもかかわらず彼らが強く出た根拠は「ベンダーの謝罪」だった。
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IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。前回は、納品したソースコードの権利は発注者、受注者、どちらにあるのかを取り上げた。
今回は「謝罪」について考えてみたい。
開発プロジェクトで何らかの問題が発生したとき、本当は自分たちに非があるとは思っていないが、「取りあえず謝っておこう」と考えるベンダーは少なくないだろう。筆者も昔、ユーザーテスト時にトラブルが発生し、「正式な謝罪文の提示がないかぎり、ここから先の作業はさせない」とユーザーに言われ、自分たちに非があるかのような文章を心ならずも作成せざるを得なかった経験がある。
「ここから先の作業」にはトラブルの調査も含んでおり、謝罪文を出さないと原因調査すらさせてくれないというのだから、随分と理不尽な話だ。しかし当時は作業を再開したい一心で、謝罪文を書いて持って行った。同じような経験をしたベンダーサイドの読者もいることだろう。「お金をもらう身の悲哀」である。
もっと耐えられないのは、心ならずも行った謝罪を言質にとられ、費用の減額やペナルティを要求されることだ。「謝罪は本心ではなかった」とは言えず、満額まではいかなくとも、ユーザーの納得する金額を払うことすらある。
しかし、本当に自分たちに非があるならともかく、取りあえず行った謝罪により、客観的な検証もなく責任を負わなければならないのは釈然としない。
本来は、どうなのだろうか。「謝罪=全面的に非を認める」ことになるのだろうか。
今回は、謝罪が問題になった裁判を見ていこう。ベンダーが心ならずも自らの非を認めた場合、裁判所はそれをどこまで重要視するのだろうか。
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