まずは、裁判概要を見ていこう。
あるユーザー企業が、経営情報システムの開発をベンダーに委託(請負契約)し、代金の一部を支払ったが、ベンダーが仕事を完成させなかったとして、この契約を解除し、債務不履行による損害賠償を請求した。
ベンダーは自身の仕事は完成したと、これを拒絶して裁判となったが、ユーザー企業は、ベンダーの代表者が、開発失敗の原因が自分たちにあることを明言しており、また、調停手続において、一部の金銭をユーザー企業に支払う提案もしていることは、ベンダーが自ら仕事の未完成を認めたことになると主張した。
若干補足をすると、ユーザーが「仕事の未完成」と主張するのは、プログラムに欠陥が残存していることを指しているのだが、これらは改修のめどが立っており、それほど深刻なものではなかった。
しかしユーザーは、これを仕事の未完成だと主張している。改修の見込みがある欠陥にそこまで主張する真意は分からないが、その論拠の1つが「ベンダー代表者による謝罪」だ。
「謝っている以上は、自分たちの非を全面的に認めたのだろう」という主張だが、もちろんベンダーはそこまでは認めていない。「謝罪も調停手続中の提案も、あくまで、円滑に問題を収束させたいためのことだった」と主張している。
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