AI、Deep Learning、「Mixed Reality」で未来のコンピューティングはどう変わるのかde:code 2017基調講演(後編)(1/3 ページ)

日本マイクロソフトは2017年5月23、24日に「de:code 2017」を開催。基調講演後半では、AI、Deep Learning、「Mixed Reality」といった「未来のコンピューティング」を実現するためのテクノロジーと、それに向けてMicrosoftが提供する製品、サービスが多数紹介された。

» 2017年06月08日 05時00分 公開
[柴田克己@IT]

 Microsoftは今後の方向性を、日本のデベロッパー/エンジニアにどう示すのか――2017年5月23、24日に開催された「de:code 2017」の基調講演の前半「The New Age of Intelligence」では、「インテリジェンス」をキーワードとしたこれからのシステム開発のトレンドや、それを実現していくためのMicrosoftの技術、サービスが披露された。

 後半では、まずMicrosoft データグループのコーポレートバイスプレジデントであるJoseph Sirosh氏が登壇。「Serving AI with Data」と題したプレゼンテーションの中で、システムに「インテリジェンス」を付加するための膨大な「データ」を管理するデータベースの在り方、Microsoftが目指す方向性について説明した。

「AIは特異点に達しつつある」

Microsoft データグループ コーポレートバイスプレジデント Joseph Sirosh氏

 Sirosh氏は冒頭、AI(人工知能)技術は「特異点に達しつつある」とし、その状況を、生物進化の歴史において急速な適応進化と淘汰が進み現存生物の体制が一気に出来上がったとされる「カンブリア爆発」になぞらえた。

 「40年前、AIは理論的な推論を行うためのプログラムを指していた。現在、AIの本質はデータから“学習”し、その意味を理解できることへと変わっている」(Sirosh氏)

 こうした変革を可能にした要素は大きく3つある。「クラウド」による膨大なコンピューティングリソース。収集された膨大なデータを保存、加工、検索可能にする「データプラットフォーム」。そしてさまざまなデータの関係を分析し、必要に応じて可視化したり、自ら学習を行ったりする「インテリジェント」なアルゴリズム(AI)だ。

 Sirosh氏は、これらによって実現する「新たなソフトウェア」は既に実用段階に至っており、医学論文を学習することで、医師に対して診断の意思決定をサポートするシステムなどが稼働を開始していることも紹介した。

「インテリジェント」に必須のデータマネジメント、MSはどう取り組むのか

 Sirosh氏はインテリジェントなデータ駆動型アプリケーションを構築するための「3つのパターン」として、「Intelligence DB」「Intelligence Lake」「Deep Intelligence」を挙げ、それぞれについて説明を行った。

Intelligence DB

 「Intelligence DB」とは、一般的にアプリケーションのレイヤーに設けられることが多いAIのロジックを、ストアドプロシージャとしてデータベース側に持たせるという考え方だ。これによって、フロントエンドからはデータベース上のストアドプロシージャを呼び出すだけでAI処理を実行でき、実装のシンプル化、セキュリティの向上、パフォーマンスの向上が期待できるという。

 Microsoftでは「SQL Server 2017」に、こうしたAI機能を取り込んでいる。Sirosh氏によれば「商用データベースとして、初めてAI機能を組み込んだものになる」という。SQL Server 2017では、R言語およびPythonによるストアドプロシージャの実行が可能となる。また、データ間の複雑な関係を分析するに当たってGraph型のデータをサポートする。クエリ処理の最適化によってパフォーマンスも優れているという。

 OSSのデータ分析ツールとしてポピュラーなR言語のエンタープライズ対応版「R Server 9.1」では、トレーニング済みのコグニティブモデル、GPUを使ったDeep Learningへの対応、エンタープライズ級のサポートと操作性といった機能を提供することで、アプリケーションへ「インテリジェンス」を加えることをサポートする。

 ここで、SQL Server 2017のストアドプロシージャを使って、AI機能をアプリケーションへ実装する方法がデモで示された。デモアプリケーションは、CTスキャンのデータを学習したAIにより、画像からがん細胞の存在可能性を表示するというもの。SQL Server 2017のストアドプロシージャとして記述されているPythonのプログラムを、アプリケーションから呼ぶためには「execute_external_script」というコマンドを実行するだけでよい。

 「AI処理の際にGPUを呼び出して使うこともできる。GPUのパワーを使うことで、数十時間かかっていた処理を1時間ほどで完了させることも可能になる。一般的なテーブルで管理されている患者のデータ処理とAI処理を、同じSQL Serverの中で行える。データの移動も必要ないため、セキュリティ要件が厳しいシステムでの活用も容易だ」(デモを担当した、日本マイクロソフトの畠山大有氏)

 Sirosh氏は、Microsoftが自社のクラウドサービスである「Microsoft Azure」において、SQL Server、R Serverに限らず、さまざまなタイプのデータプラットフォームを提供している点に言及。OSSデータベースとして広く使われている「MySQL」「PostgreSQL」のマネージドサービスや、大規模分散型のNoSQLデータベースである「Azure Cosmos DB」について触れ、「OSSによる拡張」や「グローバル規模でのスケーラビリティの確保」など、デベロッパーは要件に応じたデータベースの機能と性能をAzure上で柔軟に調達し、シンプルに実装できるとした。

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