IDC Japanは、2021年までの国内ブロックチェーン関連市場予測を発表。2021年までに年間平均133%の成長率で急拡大すると予測される。今後数年で金融以外の分野にも広がるとされるが、ブロックチェーンをビジネスへ適用していくには幾つかの課題もあるという。
IDC Japanは2017年6月13日、2021年までの国内ブロックチェーン関連ソリューション市場予測を発表した。国内ブロックチェーン関連ソリューションの市場規模は今後急速に拡大するとし、2021年までのCAGR(Compound Annual Growth Rate:年間平均成長率)は133%、市場規模は298億円に達すると予測した。
同市場の調査範囲は、ブロックチェーンを基盤にしたシステム構築や運用のためのクラウド基盤、ネットワーク、ハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスなど。ブロックチェーンは、仮想通貨「ビットコイン」の基盤システムとして知られ、また、「FinTech」を形成する中核技術の1つとして関心を集めている。
このため、まず金融機関での投資意向が高まっている。既に多くの金融機関でPoC(Proof of Concept:導入前実機検証)の取り組みが進んでいるという。ただし、ブロックチェーンの活用はそれ以外の分野にも広がると推定されることから、中長期的には非金融企業が金融機関の支出額を上回るとIDCでは予測している。ブロックチェーンの主なユースケースとしては、金融取引の他に、ポイント/トークン、資産管理、サプライチェーン管理、契約管理、各種認証、当事者間の直接取引などが挙げられる。
例えば自動車業界では、自動車メーカーが部品や製造プロセスをブロックチェーンを用いた分散台帳で管理する取り組みが計画されている。メーカーや販売店は販売やサービスに関するより確かな情報を提供できるようになる上、車の所有者も利用や修理の履歴といった確かな情報を記録するようにすれば、その後の中古車市場での価値向上などにつなげられる。こうしたブロックチェーンを用いた情報共有の新たな基盤によって、市場取引の活性化や商品価値の向上につながるとしている。
ただし同社は、ブロックチェーンには「処理速度やスケーラビリティの不足」「決済がリアルタイムに確定できない」「データを柔軟に扱えない」といった性能や機能の面に課題があるとも指摘する。また、大規模な運用や長期的なライフサイクルに関する議論がまだ不足していることも課題として挙げた。
こうした性能や機能に関する課題については、代替的なアルゴリズムの導入などの取り組みが進んでいる。その他の課題についても、企業のR&D活動や知見の蓄積によって今後解決されていくとIDCでは見ている。中長期的には、IoT(Internet of Things)やコグニティブ/AI(Artificial Intelligence:人工知能)システムと並んで、デジタルトランスフォーメーション(DX)エコノミーやデータ中心社会の中核技術の1つになるとしている。
IDC Japanでコミュニケーションズのシニアマーケットアナリストを務める小野陽子氏は、「IDCはブロックチェーンを、DX時代の台帳技術と位置付けている。ブロックチェーンの活用は、企業の中核システムよりも、周辺システムや新規分野から始まる。既存システムのブロックチェーンによるリプレースには高いハードルがあることと、現段階では処理速度やスケーラビリティが必ずしも十分とはいえないことから、ブロックチェーンのメリットを最大限生かせるのは、企業内よりも“企業間”の情報共有が主となる」と分析している。
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