今、「NVIDIA AI Labs」で研究されている「特に有望なプロジェクト」とは世界トップ20の大学に設置されているNVIDIAの先端研究施設

NVIDIAは世界20の大学に設置されたAI研究機関「NVIDIA AI Labs」を通じて、研究者の先端AI研究を支援している。自動運転技術はもちろん、その他にも「有望」なプロジェクトが多くあるという。

» 2017年07月20日 13時00分 公開
[@IT]

 NVIDIAは2017年7月11日(米国時間)、世界の有名大学に設置されている同社の「NVIDIA AI Labs」で行われている先端研究プロジェクトの一部を公式ブログで紹介した。以下、内容を抄訳する。

 世界トップ20の大学に設置されているNVIDIAの研究施設「NVIDIA AI Labs(NVAIL)」では、多くの研究者がAI(Artificial Intelligence:人工知能)の可能性を広げるための先端研究を進めている。

 例えばトロント大学の研究者は、“手ごろなコスト”の自動運転車を実現するための技術を研究している。またモントリオール大学の研究者は、遺伝子データを利用して疾病を予測し、予防する技術の確立を目指している。カリフォルニア大学バークレー校の研究者は、“学習したことがない作業”であっても作業を進行できるロボットを開発中だ。

 NVAILプログラムは、先進的なプロジェクトに取り組むこうした研究者と学生をサポートしている。NVIDIAの研究者やエンジニアも支援を行っている他、NVIDIAが持つ先端のGPU技術をこれらのプロジェクトで利用できるようにしている。実はNVAILに参加している研究者は2016年頃から、NVIDIAの先端ディープラーニングシステム「DGX-1」をいち早く利用できるようになっている。

 NVAILプログラムに参加している大学、研究機関には、前述したトロント大学、モントリオール大学、カリフォルニア大学バークレー校に加え、マサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォード大学、ニューヨーク大学、オックスフォード大学、東京大学、清華大学、スイスのIDSIA(Dalle Molle Institute for Artificial Intelligence)などが名を連ねている。

 こうした大学、機関で行われる研究には、前述した自動運転などの他に、ディープラーニングの進化を通じた乳がんスクリーニングの改良(ニューヨーク大学)や、自動読唇(オックスフォード大学)など多岐にわたる。このうち幾つかの有望プロジェクトを以下に紹介する。

「全ての人」のための自動運転車

 トロント大学のコンピュータサイエンス教授で、Uberの先進技術グループ責任者も務めるラケル・アータサン氏は、「全ての人」を対象にできるようにする“手ごろなコスト”の自動運転車を開発している。

photo Uberのラケル・アータサン氏とトロント大学は、自動運転車のコスト削減を目指している(出典:Uber)

 2017年現在の自動運転車は、レーザーレーダーや3Dセンサーなどの部品だけでも10万ドル(約1110万円)以上のコストが必要で、「誰もが買える」とはいえないとアータサン氏は語る。同氏のチームは、安価なセンサーと衛星データのような技術を使用する知覚、ローカライズ、マッピングのためのアルゴリズムを開発している。

医療の未来を担う

 遺伝子データに基づいて疾病リスクが予測され、的確に予防、治療できるようになる──。AIの進化によって、こんな未来も実現するかもしれない。しかし、ゲノムデータは非常に複雑であるため、さらに効果的なディープラーニング技術を開発しなければならないと、モントリオール大学Montreal Institute for Learning Algorithmsの博士研究員、エイドリアーナ・ロメロ氏は説明する。

photo モントリオール大学の研究者チームは、ディープラーニングを進化させ、ゲノミクスの解析に活用している

 同氏のチームは効果的なディープラーニング手法を見いだすため、突然変異に基づく遺伝的祖先の予測を実験している。これにより、より少ないパラメータを使って予測を行うディープラーニングアーキテクチャを考案したという。

 「次のステップは、疾病予測に取り組むとともに、パーソナライズド医薬の可能性を探ることだ」(ロメロ氏)

次を予測して行動する「多能」なロボット

 2017年現在の大半のロボットは、プログラミングされたある特定の作業はうまくこなせるが、新しい作業にすぐに対応することはできない。

 カリフォルニア大学バークレー校のAIラボに所属する博士課程の学生であるチェルシー・フィン氏は、ロボットが「エンジニアの助けを借りずに、未知の状況を理解できるようにする」ことを目指している。アドバイザーであるピーター・アビール氏、サージー・レバイン氏と協力し、新しい環境に適応できるロボットを開発中だ。

Deep Sensorimotor Learning(YouTube/チェルシー・フィン氏とカリフォルニア大学バークレー校BAIR Lab.)

 この目的のために、フィン氏はGPUを用いたディープラーニングによって、ロボットが自らの行動の結果を理解し、次の作業のために何を行う必要があるかを予測できるようにロボットを訓練している。

 「ロボットが稼働しながら学習できるように、データを高速に処理する必要がある。GPUのスピードでなければ、私の研究の多くは不可能だろう」(フィン氏)

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