Windows 10 Fall Creators Updateからは「System Image Backup(SIB)Solution」が非推奨の機能になることも気になります。これは、おそらく「システムイメージの作成」や「Wbadmin.exe」コマンドを使用した、フルバックアップ機能のことだろうと思います。将来的に、Windowsの標準機能でフルバックアップが作成できなくなる可能性があるということです。
筆者の場合は、Windows標準の「DISM」コマンドの「/Capture-Image」オプションや「New-WindowsImage」コマンドレットで何とかなると思っていますが、もっと簡単な方法でフルバックアップを作成するには別途バックアップ製品を購入することになるかもしれません。
Windows 10 Fall Creators Updateの削除された機能/推奨されなくなった機能リストでは、「Enhanced Mitigation Experience Toolkit(EMET)」が削除という扱いになっています。EMETはWindowsに組み込まれた機能ではなく、追加でインストールして使用するユーティリティーです。削除という扱いは、EMETのインストールがブロックされるようになるということでしょう。
最新のWindows 10 Insider Previewでは、まだブロックする対応は行われていないようです。Windows 10 Fall Creators Updateの「Windows Defenderセキュリティセンター」には「Exploit Protection」(ビルド16251より前までは「悪用保護」という表示)機能で、EMETが提供していた機能の一部を標準搭載する予定です(画面5)。
なお、以下のWebページで説明されているように、EMETは「2018年7月31日」にサポートが完全に終了することが決まっています。最新のEMET 5.5xはWindows 10をサポートしていますが、その対象はWindows 10 Anniversary Updateまでで、既に現行のWindows 10 Creators Update(Fall Creators Updateではなく)は公式サポートの対象外となっています。
Windows 10 Fall Creators Updateの削除された機能/推奨されなくなった機能に「Outlook Expressの削除」が存在することに違和感はないでしょうか。Outlook ExpressはInternet explorer(IE)に付属する形でWindows XPにプリインストールされた電子メールクライアントであり、Windows Vistaで「Windowsメール」に置き換えられました(画面6)。
Windows 7からはWindowsメールも削除され、Microsoftの「Windows Liveメール」(無料)や「Office Outlook」(有料)、またはその他のメールソフトウェアを用意する必要がありました。そのことについては、「Windows 7 and Windows Server 2008 R2の削除された機能リスト」の「Outlook Express and Windows Mail」で説明されています。
では、リストの「Outlook Expressの削除」は何を意味しているのでしょうか。リストには「Removing this non-functional legacy code.(機能しないレガシーコードの削除」とも書いてあります。使われないものの、これまでWindowsに存在し続けていたOutlook Expressサポートのための古いプログラムコードを削除するということでしょうか。
Windows 10 Creators Updateで「C:\Windows\System32」ディレクトリにあるDLLを対象に、「Outlook Express」という文字列を探してみました。すると、「cdosys.dll」(Microsoft CDO for Windows Library)と「inetcomm.dll」(Microsoft Internet Messaging API Resources)というDLLのバイナリの中に、「Outlook Express」という文字列が見つかりました(画面7)。こういった古いコードを削除するということなのかもしれません。
「cdosys.dll」は、電子メールとニュース(若い人には分からないと思いますが、NNTPプロトコルを使用するネットニュースのこと)の投稿をサポートする、古くからあるCDO(Collaborative Data Objects)Messaging APIを提供します。CDO Messaging APIのドキュメントには、「This component requires and works with the Outlook Express component and the Internet Explorer component.」と説明されています。
もしかすると、Windows 10 Fall Creators Updateにおいて、このCDO Messaging APIのサポートごと削除されるということなのかもしれません(違うかもしれません)。ちなみに、Windows 10 Insider Previewの最新ビルド(ビルド16251.0)でも、「Outlook Express」という文字列を含むDLLはまだ存在しますし、CDO Messaging APIを使用したメール送信も可能でした(画面8)。
これまでのWindowsのバージョンでもそうでしたが、削除された機能/推奨されなくなった機能リストはもう少し“丁寧な説明”をお願いしたいです。
「Features that are removed or deprecated in Windows 10 Fall Creators Update」のリストが2017年8月17日付で更新され、ReFS(Resilient File System)ボリュームの新規作成機能がWindows 10 EnterpriseおよびWindows 10 Pro Workstationsだけに提供されることが発表されました(読み書き機能は全エディションに残るようです)。Windows 10 Educationに対する扱いは、現在のリストからは判断できません。
なお、Windows 10 Pro Workstationsは、メモリやコアの上限を拡張するなどハイエンド向けの新しいエディション(SKU)で、Windows 10 Fall Creators Updateで新たに追加されることが2017年8月10日に発表されました。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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