GoogleのSDNスタック「Espresso」は、インターネットルーティングの全体的な在り方を変える可能性がある。「Googleはインターネットを再構築したいのか(前編)」に続き、後編をお届けする。
英国のIT専門媒体、「The Register」とも提携し、エンタープライズITのグローバルトレンドを先取りしている「The Next Platform」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップ。プラットフォーム3へのシフトが急速に進む今、IT担当者は何を見据え、何を考えるべきか、バリエーション豊かな記事を通じて、目指すべきゴールを考えるための指標を提供していきます。
GoogleのSDNスタック「Espresso」は、インターネットルーティングの全体的な在り方を変える可能性がある。「Googleはインターネットを再構築したいのか(前編)」に続き、The Next Platformの共同編集長を務めるティモシー・プリケット・モーガンがGoogleのフェローでネットワーキング技術責任者を務めるアミン・バーダット氏に話を聞いた。
――新設計のルーターは、Espressoに対応したカスタムメードなのか? それとも既製の機器を引き続き使っているのか? ルーターの全てのインテリジェンスと、ASIC内で通常行われている全ての処理が、NFVやSDNのアプローチのようにソフトウェアレイヤーに移されているのではないかと推察する。そうであれば、そうしたデバイスは不要になり高価なルーターを買わずに済むので、Googleはコストを劇的に下げることができると思われるが。
バーダット氏:具体的には……
――あるいは、従来とは異なるルーターチップが採用されていることも考えられる。カスタムではなくても、シンプルなチップで済むはずなので。
バーダット氏:後者の見方の方が前者より近い。あなたの言う通り、これまでよりシンプルなものになっている。また、もう1つ触れるべきことがある。それは、インターネットスケールのルーターを作れるベンダーがそもそも非常に少ないことだ。たった2社しかない。
従来のインターネットスケールルーターは、先端技術の粋を集めた製品であり、そうしたものであるもっともな理由もある。これらのルーターは極めて優れたエンジニアリングが施されており、信頼性が高い。全てのゲストのインターネット接続を保証するために、ゲストごとにクエリテーブルエントリと呼ばれるものを持つ必要がある。われわれは、そうしたインターネットルーターに関する要件を簡素化することで、われわれが使うものに関しては選択肢を大きく広げることができた。
――なるほど。現在、スイッチのASICの多くはルーター機能を備えている。近いうちにシンプル化が進み、このASICをスイッチングとルーティング用に使えるようになるかもしれない。
バーダット氏:確かに。鋭い観察だ。技術的な細部に興味があるかもしれないので補足すると、ホストが全てのパケットにラベルを挿入するようになっている。そして実質的にこのラベルが、ルーターのためにルーティング判断を行う。ルーターがすべきことは、ラベルを見ることだけだ。ラベルはルーターに、当該パケットの転送に関する決定を知らせる。このように、われわれはルーターの頭脳部分、機能をサーバに置いている。サーバでは、安価なメモリが大量に使えるからだ。こうしてルーティングの決定はルーターではなく、ホストで行われるわけだ。
――Googleは自社のインフラで、Espressoを管理するソフトウェアを全て運用するようになっている。そのためにどれだけのリソースが要求されるのか? こうしたエッジルーター群を管理するのにサーバが丸ごと必要なのか? コンピュートとルーティングの比率はどのようなものか? きちんとした質問の仕方すら分からないが、教えていただきたい。
バーダット氏:聞きたいことが何かはよく分かる。いい質問だ。冗長性などのために、われわれは複数のサーバを利用している。具体的な比率は重要ではないが、サーバの追加によるコスト増は取るに足りない額ではないと言えよう。
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