批判的な人の性格は、簡単には変わりません。
「人を変える」のは難しいですね。ならば、相手を変えるよりも、相手との「関わり方」や自分の「捉え方」を変えていった方が手っ取り早いのではないでしょうか。
最もシンプルな方法は、批判的な人と「関わらない」ことです。
「そんなことは分かっている」でしょうし、「関係を断つ」のが難しい場合もあるでしょう。しかし、全く「関わらない」ことは難しくても、「批判的な話が始まったらできるだけ距離を置く」「批判的なことを言われても適当に流す」ことならできるのではないでしょうか。
また、「批判的な人と関わらない」ことよりも、「関わりたい人を意識的に選ぶ」ことも大切です。関わりたい人を意識的に選ぶことは、「どのような人とならいい気分でいられるか」「自分はどうありたいか」を考える機会にもなるでしょう。
人は、周囲からの情報を五感で受け取るとき、興味を持ったものや意識を向けたものの情報を受け取ろうとする特徴があります(これを、生物学用語で「レセプター」と言います)。「関わりたくない人」よりも、「関わりたい人」に意識を向けた方が、関わりたい方向の情報に自然と目がいくようになるため、いい気分でいられる可能性が高くなります。
批判的な人に「批判(反論)しない」ことも、いい気分を維持するためには大切です。なぜなら、批判的な人に批判をすると、火に油を注ぐ形になり、ますます批判をされてしまうからです。
私はインターネットで文章を書き始めて10年以上たち、私の文章に批判的な物言いをする人に「批判」で応酬していた時期がありました。
けれども、批判に批判で応酬すると、「それは違う」とさらに批判されることが多く、それに対してさらにさらに批判するとますます炎上する……。
また、ネット上で政治や社会的なことに何かしらの批判をすると、批判した人が批判されるというシーンを目にします。よく「類は友を呼ぶ」と言いますが、批判的な言動は、批判的な人を集めてしまうようです。
このような経験を何度かして私は、批判的な言動をするのを意識的にやめてみました。そして、同じことを伝えるにしても、肯定的に言い換えて表現するようにしてみました。すると、批判されることが断然少なくなりました。
また、肯定的な方に意識を向けているためか、仮に批判されることがあっても、「まぁ、そういう人もいるよな」と受け流すことが比較的容易になり、その分気持ちの切り替えが早くなって、いい気分を持続できるようになりました。
これは、ビジネスシーンや日常生活でも同じだと思います。批判的な言葉は批判的な人を集めやすい。いい気分で仕事をするためには、「批判をしない。その代わりに肯定的な言葉を使う」と決めてしまうのはいい方法です。
中には、「批判しないと議論が深まらない」「言いたいことが言えないなんてつまんない」と思う人もいるかもしれません。しかし、「批判」でなくても、相手の考えを「確認」し、事実と解釈を分けて自分の意見を「提案」するなど、別の方法を使っても、議論は十分できます。
「どんな気分で仕事がしたいか」が大切です。
エンジニアは、人との関わりが多い仕事です。それだけに、いろいろな人との関わりがあります。時には批判的な人と仕事をしなければならないこともあるでしょう。
批判的な議論やいつも戦闘モードで過ごすことが好きな人は、それでいいと思います。でも私は、肯定的な物言いをする人が好きだし、気の合う仲間と前向きな議論をし、集中して、穏やかに、いい気分で働きたい。
結局のところ、批判的な人にジャマされずに「いい気分」で働くためには、「どういう気分で働きたいか」「どういう自分でありたいか」を決め、それをできるだけ維持することに尽きる……のかもしれませんね。
あなたは、どんな気分で働きたいですか?
静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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