IDC Japanは、政府などが推進する「地方創生」施策による国内中堅中小企業におけるIT支出への影響度と、ITを活用した取り組みが進む分野について発表した。こうした施策はSMBのIT支出を促進させる可能性があるものの、現状では様子見の企業が多かった。
IDC Japan(以下、IDC)は2017年11月29日、政府を中心に地方自治体や地域金融機関などが推進する「地方創生」施策が国内SMB(注)に与えるIT支出への影響度と、ITを活用した取り組みが進む分野について発表した。これは、同社が2017年2月に実施した「国内SMBユーザー調査」の結果と、地場の販売代理店やシステムインテグレーターなどへのヒアリング調査結果などを分析したもの。
※注:Small and Medium Business(従業員数999人以下の中堅中小企業)
地方創生政策を推進する背景には、若年層を中心に人や企業が大都市圏に流出し、地域経済が停滞している現状がある。
IDCは、地方創生施策が間接的にSMBのIT支出を促進させると見ている。例えば、「地域企業/個人事業主支援」分野では、スタートアップ企業の創業支援や観光活性化に加え、小売業やサービス業、製造業などを対象にした企業支援施策が推進されている。地域住民の安全確保や住環境の改善、利便性向上を図る「住民生活の改善」分野では、「地方自治体などの支援を受けたSMBが、関連事業を推進するケースが増える」と予測する。
だが、今回発表された調査結果によれば、多くのSMBが地方創生施策に対して「様子見」の状況にあることが分かった。今後の投資について、「業務の効率化のためのIT投資を拡大する」「生産力強化のためのIT投資を拡大する」と回答したSMBの割合は、投資への意欲が最も高かった北海道/東北地方で18%未満。反対に、北陸/甲信越地方の場合、「営業力強化のためのIT投資を拡大する」と答えた企業の割合は、2%にも満たなかった。
地方創生施策によるIT支出への影響については、現時点では、「自社への影響も、IT投資計画への影響もない」「その影響度が分からないためIT投資計画も未定」と回答したSMBが、全体の約60%を占めた。ただし、IDCは、「営業強化のためのIT投資を拡大」を挙げる企業が多かった九州/沖縄地方や、「生産性強化のためのIT投資を拡大」「業務効率化のためのIT投資を拡大」を挙げる企業が多かった北海道/東北地方では、地方創生政策を契機にIT向け投資拡充を検討する企業が増えるとみている。
IDCは、地方自治体や地域金融機関を中心とした企業や団体がさまざま地方創生施策に取り組んでいる現状を踏まえ、今後その影響が大都市圏以外のSMBに波及し、IT支出を促進する可能性があると見ている。同社でITスペンディング担当リサーチマネジャーを務める市村仁氏は、「ITサプライヤーは、新たなビジネス拡大の契機とするために、地方自治体、地域金融機関など連携した『地方創生』施策をより積極的にリードするべきである」と分析している。
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