クリエイティブ・コモンズ・ライセンスDev Basics/Keyword

CCライセンスは、作品の作者が「自分の作品を再利用するに当たっての条件を明記」することで、創作物の柔軟な再利用や流通を促すためのライセンスシステム。

» 2017年12月05日 05時00分 公開
[かわさきしんじInsider.NET編集部]
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連載目次

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下、CCライセンス)は、作品の利用や再利用、それらの流通を促進することを目的とした「インターネット時代のための新しい著作権ルール」。作者が「自分の作品を他者が利用する際の条件を明示できる」ようにすることで、著作権を保持したままでその自由な流通や再利用を促進するもの。日本国内ではクリエイティブ・コモンズ・ジャパンが日本の国内法に準拠する形でのCCライセンスをリリースし、普及活動を行っている。日本語で提供されているライセンスには2.0、2.1、4.0がある。本稿ではバージョン4.0を対象とする。

CCライセンス体系

 CCライセンスでは「作品に関する全ての権利を保持する」(All rights reserved)と「作品に関する全ての権利を放棄する」(public domainもしくはNo rights reserved)との間に「限定された権利を主張する」(Some rights reserved)形で作品を発表できるようなライセンス形式が提案されている。

 そのためにCCライセンスには以下の条件がある。

  • 表示(BY):作品の原作者に関する情報を表示する。
  • 非営利(NC):作品を営利目的で利用してはならない
  • 改変禁止(ND):作品を改変しない
  • 継承(SA):作品の改変は自由だが、改変した作品には元の作品と同じライセンスを付けること

 また、これらの条件を示すアイコンもある。

 これらの条件を組み合わせて作者の意図を明記することで、著作権は保持したまま自分の作品の他者による再利用や流通を柔軟に行えるようにすることで、創作活動を促進することがCCライセンスの目的といえる。

 上記の条件の内、「表示」は必須の条件とされ、改変禁止と継承は排他的であることから、実際に上記の条件を組み合わせて使用されるCCライセンスは6種類であり、「作品に関する全ての権利を保持する」と「作品に関する全ての権利を放棄する」の間に次のような形で位置することになる。

  • 作品に関する全ての権利を保持する
  • 「表示」(CC BY):原作者のクレジットを表示することを主な条件として、作品の改変や営利目的の利用が可能
  • 「表示−非営利」(CC BY-NC):原作者のクレジットを表示し、非営利目的な利用であれば、作品の改変や再配布が可能
  • 「表示−継承」(CC BY-SA):原作者のクレジットを表示
  • 「表示−非営利−継承」(CC BY-NC-SA):原作者のクレジットを表示し、非営利目的での使用であれば改変は可能だが、その際には元の作品と同じCCライセンス(表示−非営利−継承)で改変した作品を公開する必要がある
  • 「表示−非営利−改変禁止」(CC BY-NC-ND):原作者のクレジットを表示し、営利目的での使用と改変を禁止した上で作品の自由な流通(再配布)を可能とする
  • 作品に関する全ての権利を放棄する

 CCライセンスで最も制約が弱いのは「表示」(CC BY)であり、逆に最も制約が強いのは「表示−非営利−改変禁止」(CC BY-NC-ND)となる。その間の4種類のCCライセンスは「営利目的で使用できるか」「改変が可能か」によって使用条件が異なるライセンスとなっている。これらを表にまとめると次のようになる。また、表にはCCライセンスの下で公開されている作品を改変して新たに作品を作成した場合に、新しい作品に付与できるライセンスもまとめてある。

CCライセンス クレジット表示 営利目的の利用 改変 改変後に付与できるライセンス
BY 必要 BY/BY-NC/BY-SA/BY-NC-SA/BY-ND/BY-NC-ND
BY-NC 必要 不可 BY-NC/BY-ND/BY-NC-SA
BY-SA 必要 BY-SA
BY-NC-SA 必要 不可 BY-NC-SA
BY-ND 必要 不可 改変不可
BY-NC-ND 必要 不可 不可 改変不可
CCライセンスの種類

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスでは、ライセンスの利用条件を分かりやすくまとめたライセンスマークとコモンズ証、より厳密な記述であるリーガルコード、検索エンジン向けのメタデータにより、さまざまな人(やコンピュータ)に向けて情報がまとめられている。例えば、以下の画像はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの概要を説明したページだが、左下にはライセンスマークとともに「注があるものを除いて, このサイトの内容物は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンスの下に提供されています」と記されている。

ライセンスマークを含んだページ ライセンスマークを含んだページ

 これはこのページがCCライセンスの「表示」(CC BY)の下で公開されていることを意味している。そして、このライセンスマークかリンクをクリックすると、次のようなページが表示される。

コモンズ証 コモンズ証

 これがCCライセンスの概要を示した「コモンズ証」と呼ばれるものだ。これを読めば、一般のユーザーでも自分が作成した作品やこれから利用(改変など)しようとしている作品についての情報が分かるようになっている。文中の「ライセンス」をクリックすれば、さらに詳細なリーガルコードが表示される。これは法律の専門家に向けたものだ。

リーガルコード リーガルコード

 実際にはHTML内にメタデータを埋め込むことで、検索エンジンが「そのページがCCライセンスで公開されていること」を知ることができるようにもなっている。

 このようにコモンズ証(とライセンスマーク)、リーガルコード、メタデータを用いることで、一般ユーザー、専門家、加えて検索エンジンの三者が合理的にCCライセンスを解釈/利用できるようになっている。

 なお、実際に自分の作品にCCライセンスを付与しようという場合には、「自分がどのような条件を付加したいか」をライセンスを付与するのに利用できるページで選択し、必要に応じてメタデータを入力する。するとHTMLコードが表示されるので、作品をWebページで公開するのであれば、そのHTMLコードをWebページに追加すればよい。

 一方、CCライセンスが付与されている作品を利用する場合には、コモンズ証などを確認して、その作品がどのような利用の仕方を認めているかを確認し、それに従って利用する必要がある。

 例えば、上の表に示したように、CCライセンスで公開されている作品を改変する場合には、元の作品のライセンスによって改変が許されていなかったり、許されている場合でも同じCCライセンスを新しい作品にも付与する必要があったりすることには注意しよう(そうでない場合でも、基本的には元のライセンスよりも制限の緩いライセンスを新しい作品に付与することはできない。例えば、「表示−非営利」で公開されている作品を改変した場合、CCライセンスをそれよりも制限の緩い「表示」とすることはできない)。

 また、CCライセンスに従ったクレジット表記なども行う必要がある。これについては「License Versions」ページや「Best practices for attribution」ページなどを参考にされたい。


 CCライセンスは、作品の作者が「自分の作品を再利用するに当たっての条件を明記」することで、創作物の柔軟な再利用や流通を促すためのライセンスシステム。適切にライセンスを付与したり、適切に利用したりすることで、創作の世界をより豊かなものにするためのものである。

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