RPAの導入について現在の多数派は、PoCをまず行って、そこで効果や導入に際しての留意点を確認してから計画策定に戻ることです。
一方、オーソドックスに進めるのは少数派の企業ですが、「信頼できるグループ会社が先行して導入を進めている」「海外拠点で先行して導入されており業務で運用している実績がある」などのケースであれば、全体計画から着手して、IT戦略策定の後、計画立案として「スケジュール」「導入先(各部門)の順番の決定」「RPAソフトウェアの選定」「内製化の検討」「パートナーの選定」などを決めていきます。
ここから、計画を構成している主要な要素について見ていきます。
全社導入ということですと、当然ながら、中長期の線表となります。「2年から3年の中期か」「5年前後、あるいは5年を超える長期か」は、企業の規模、事業の種類、その中の業務量、そして「どの粒度の業務までカバーするか」によります。
ここで、実際にある現実的な全体計画の線表を見てみましょう。以下の図表3をご覧ください。この例では、全体として約3年間で組まれていますが、適切な計画だと思います。
以前からお話ししているように、(3)PoCと(4)評価・修正を先に行って、(1)の全体計画に入る場合です。
(1)全体計画の「戦略策定」「検証1」「企画立案」を、約半年で行います。(2)机上検証は、「検証2」として、各事業ならびに業務での効果検証、機能要件定義を行います。その後の(5)導入・構築までは約2年半という全体で3カ年の計画です。
検証1と2に関して補足しますと、連載第3回でも紹介したように、机上検証は、経営会議での承認・投資予算の確保に向けた「検証1」と、具体的な導入効果検証を行う「検証2」に、分ける場合があります。図表3は、検証1が全体計画に組み入れられる事例です。
次に、全体計画の中で、必ず悩まれることになる、「導入先の順番の決め方」について紹介しておきます。大きく3つの考え方があります。
考え方 | 概要 |
---|---|
部門順 | 部門ごとに順番を付ける。さらに、おのおのの部門における業務で順番を付ける |
クラス分け | 業務を大中小や重い/軽いに分けて、小または軽い方から進める |
定型業務洗い出し | 定型業務と人の判断や物理的な動作を伴う非定型業務に分けて定型業務から進める |
上記の3つのどれをベースとするかは、企業や組織によって異なりますが、現実には「部門の順番を決めて、その中でクラス分けや定型業務の洗い出しを行う」「典型的な定型業務をまず確認してから」などと組み合わせて進めています。
さて、ソフトウェアの選定ですが、先行企業はどうやって、決めているのでしょうか。
先ほどの「全体計画の進め方」と重複するところもありますが、大きな考え方としては、下記の通りです。
上記の(a)は、これまでと同様な進め方です。
(b)については、「初物」ということもあり、実際に現場で試行してから判断することになります。
先行して全社導入を進めている企業は、海外拠点やグループ会社などを多く保有している企業でもあることから、(c)のような考え方で選定を進めている企業もあります。
なお、技術的な観点では、連載第2回でもお伝えした、導入規模や活用法、ロボットそのもののシナリオ作成との親和性に加えて、運用管理、開発支援・管理などの視点を組み合わせて判断します。
今回は、RPAの全社導入の“かたち”を作る全体計画について解説しました。
順番は逆になってしまいましたが、今回の全体計画、前回の机上検証と読むと、「次に続くPoCはどう進めるの?」と興味を持てるのではないかと思います。
次回は、既にPoCを終えている企業や組織は、「PoCで何を知りたいと考えているのか」「どうやってPoCを進めているのか」「そこで得られた現実とは」などの、RPAシステム導入のPoCにまつわる疑問にお答えします。
富士通株式会社 フィールド・イノベーション本部 シニアディレクター
顧客企業を全社的に可視化して経営施策の効果検証をするサービスの指揮を執っている。著書に『RFID+ICタグシステム導入・構築標準講座』(翔泳社)、『成功する企業提携』(NTT出版)がある。
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