仮想環境とクラウドID、IT資産管理で「絶対に外せない」要点とは?実践! IT資産管理の秘訣(9)(1/3 ページ)

仮想化、クラウドの浸透に伴い、IT資産管理でチェックすべき項目、留意したいポイントも変容している。最終回となる今回は、年々ITインフラが変わりゆく今、IT資産管理において変えるべき点、変わらない点を紹介する。

» 2018年05月15日 05時00分 公開
[篠田仁太郎,クロスビート]

 IT資産管理の目的は、ここ数年間で大きく変わってきました。ライセンスコンプライアンスを目的とした管理から始まり、2010年ごろからは、それに加えて情報セキュリティの強化が叫ばれ始めました。そしてさらに今は、仮想化・クラウドの管理とコスト削減が目的として加えられています。

ALT IT資産管理の目的

 特に仮想環境やクラウド環境の管理には誰もが頭を悩ませているところだと思います。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(以下「JUAS」)の「企業IT動向調査報告書」によれば、2010年度の調査では約31%だったサーバ仮想化の導入比率は、2012年度の調査では、約49%となっています。それ以降は統計が確認できないため導入比率は分かりませんが、おそらく6割は超えているものと思われます(※)。

※@IT編集部の読者調査「@IT Techno Graphics システム運用編2017」(調査期間:2016年12月16日〜2017年1月12日)では、「全社インフラとして導入している」が30.1%、「特定のシステムで部分的な導入をしている」が33.7%で、計63.8%が「導入している」ことが分かった

 また、2011年度は約12%の導入比率だったデスクトップ仮想化も、2012年度には約22%と、倍近い伸び率になっています。筆者が受ける相談も、最近は仮想環境の管理に関する問い合わせが大幅に増えており、併せてクラウドライセンスの管理に関する問い合わせも増加しています。

 特に仮想環境におけるサーバライセンスの管理不備があった場合には、クライアントPCのライセンスコンプライアンス違反とは比較にならない不足金額が生じることも少なくありません。また、「クラウドライセンスは管理が簡単だ」といった誤解もよく聞かれるようになりました。

 そこで今回は、「仮想環境」のうち、サーバ仮想環境と、クラウドライセンスの中の「クラウドID」の管理について、筆者が考える管理方法と注意事項をお伝えします。

仮想環境、クラウドIDの管理項目

 初めに、仮想環境・クラウド環境を管理するための管理項目例について説明しましょう。以下の「台帳項目関連図」 をご参照ください。

ALT 台帳項目関連図《クリックで拡大》。赤丸で囲んだ項目は、筆者が使用してきた従来型の台帳項目関連図に新たに追加した項目(以下で解説します)

上図で管理対象としている仮想環境は、静的な仮想環境(環境を構築したら、おおむね数カ月以上同じ環境で運用されるような仮想環境)を想定しており、開発環境のようにスクラップアンドビルドが頻繁にあるような動的な仮想環境は、台帳管理とは別の管理が望ましいと考えているため、ここでは想定していません。

 また、クラウドID管理は、Adobe Creative CloudやMicrosoft Office 365といった、クライアントが利用するクラウドサービスを前提としています。記載している項目は今回の説明に必要な最低限の項目のみ記載しています。全ての項目は項目間の関連を示しているものではありませんので、あらかじめご了承ください。


 台帳項目関連図の中で、特に仮想環境とクラウドライセンスの管理項目として検討が必要な項目を水色にしています。まずは、上記関連図と、従来筆者が提示してきた台帳関連図との違いについて説明します。

1.新しく追加したテーブルについて

 追加したテーブルは、「クラスタグループ管理台帳」「クラウドID」「クラウドID利用履歴」です。これらは、昨今の仮想環境とクラウド環境の管理の必要性を考慮して追加したテーブルです(これらの詳細は以降で説明します)。

2.変更・追加した項目について

1.ハードウェア管理台帳

 重要な追加項目は、仮想環境を管理するための「スタンバイ区分」「クラスタグループ番号」になります。CPU関連の情報は、ライセンス管理台帳とひも付けることによって、「インベントリーツールによるCPUの収集情報に差異が生じた場合に、使用許諾条件を見直すためのアラートを出すトリガー」として、想定しているものです。

2.ライセンス管理台帳

 重要な追加項目は、上記ハードウェア管理台帳で記載したCPU関連の情報です。CPUライセンスを完全に管理する仕組みを持つことは簡単ではありませんが、「ライセンス調達時点の適用ハードウェアのCPU情報を登録しておけば、当該ハードウェアのCPU情報が変更された場合に、見直すきっかけにできる」と考え、簡易的なCPUライセンス管理支援機能として、追加したものです。

 「セカンドライセンス」は、「1ライセンスに幾つのセカンドライセンスを割り当てる権利があるか」を登録させるものであり、クラウドライセンスを利用するための「クラウドID」とセットで、利用数の管理をするために追加したものです。

3.ライセンス媒体管理台帳

 図2の台帳項目関連図は、特に仮想環境やクラウド環境の管理のために変更したレイアウトではありません。もともと4つの管理台帳であることを強調するために1テーブルでしか表記していなかったのですが、これを受けて、台帳ツールを提供している幾つかの製品で、「キー」「インストールメディア」「契約証書」などを1レコードとしてテキストで登録させるという、管理上、運用が困難と思われる仕組みで提供されていることが見受けられたため、もう少し詳しく表記するために、この「ライセンス媒体管理台帳」を追加しました。

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