仮想環境とクラウドID、IT資産管理で「絶対に外せない」要点とは?実践! IT資産管理の秘訣(9)(2/3 ページ)

» 2018年05月15日 05時00分 公開
[篠田仁太郎,クロスビート]

2.仮想環境の管理

 仮想環境の管理で考えるべき事項は、次の2点です。

1.物理環境と仮想環境のひも付け

 仮想環境においては、仮想環境に割り当てられたリソースではなく、仮想環境が構築された物理環境のリソースが、ライセンスの使用許諾条件に影響することが多々あります。そのため仮想環境は、仮想環境自体を物理環境と同様に管理台帳に登録して管理することに加え、それが構築されている物理環境とひも付けて管理する必要があります。

 単純に独立したものとして管理する仕組みとしても、管理できないことはありません。しかし、構築の土台としている物理環境にどのような仮想環境が構築されているかを一元的に把握できない場合、物理環境の構成やリソースの変更が、構築されている仮想環境のシステムに大きな影響を与えるだけでなく、場合によってはシステムの運用中断といった事故も招きかねません。

 数台あるいは数組の仮想環境しか存在していないのであれば、管理運用上も何とかなるかもしれませんが、数十組、数十台以上の仮想環境が存在している場合、単に仮想環境のハードウェアと物理環境のハードウェアの双方に、関連する管理番号を登録しているだけでは、現実的な管理は困難と言わざるを得ません。

 また、仮想環境は、単に1物理環境に存在するのではなく、複数の物理環境上でダイナミックに動作するもの(以下「クラスタ環境」という)が最近では一般的です。

 従って、「ハードウェア管理台帳」と「クラスタグループ管理台帳」といった台帳によって、複数の物理環境と複数の仮想環境が関連していることを把握できる仕組みを持つことが望まれます。そのための管理項目として持っているものが、ハードウェア管理台帳の「ハードウェア区分」「クラスタグループ番号」になります。

 また、クラスタグループを単なる番号ではなく、「用途」あるいは「業務別」で判別しやすくするために、クラスタグループ番号とクラスタ名を持ったテーブルとひも付けます。

ALT 図3 複数の物理環境と複数の仮想環境が関連していることを把握できる仕組みを持つことが大切

2.使用許諾条件の確認

 サーバの使用許諾条件は、なかなかにタフなものが多く、それをきちんと理解するのは簡単ではありませんが、一般的に考慮すべき項目としては以下のものがあります。

  • CPU情報
  • スタンバイ状態
  • パーティショニング

 それぞれの項目で、考慮すべき一般的な事項は以下の通りです。

CPU情報

 CPUの型式、ソケット数、コア数、物理数などを記録します。台帳項目関連図では、ハードウェア管理台帳とライセンス管理台帳の双方に記載しています。

 CPUライセンスは、例えばIBMやOracleのように、独自の分類で必要なライセンスが変わるものもあります。これらを全てデータベース化し、ハードウェアのCPU情報と照合する仕組みを作ることは簡単ではありません。

 しかし、調達時点の物理サーバのCPU情報を記録しておくことは、難しいことではなく、かつ、使用許諾条件を確認した上で同じ情報をライセンスにも記録できる仕組みになっていれば、ハードウェアのCPU情報が変更された際にアラートを通知することもできるようになります。

 こういった仕組みは、物理環境のハードウェアのCPUリソースが意図せずに変更された場合に、それが使用許諾条件に反していないかどうかを速やかに確認するきっかけとして有効と考えています。

スタンバイ状態

 バックアップサーバの状態を記録します。サーバのライセンスは、Hot Stand-byやWarm Stand-by、Cold Stand-byなど、バックアップの状態によって必要条件が異なります。また、パブリッシャーによっては、この「Hot」「Warm」「Cold」という考え方が異なるものもありますので注意が必要です。

 この項目によって、バックアップサーバの状態が現在どのような状態にあるのかを把握し、それが変更された場合に必要なライセンスが保持されているかどうかを確認することができます。また、インベントリーツールの導入によって、これらの状態が変化したことを検知できる仕組みを持つことも有効な手段の1つです。

パーティショニング

 どんな場合でも必ず必要となる項目ではありませんが、使用許諾条件には、CPUを分割して利用する仕組みである「パーティショニング」の方式によって異なる場合があります。

 例えばOracleであれば、自社の規定でハードウェアパーティショニングと認定したものについては、分割された範囲内のCPUリソースに対するライセンスでよしとしていますが、ソフトウェアパーティショニングと認定するものについては、分割前のCPUリソースに対してライセンスを要求する仕組みを採用しています。Oracleのパーティショニングの考え方については、下記URLをご参照ください。

参考リンク:

製品・ライセンス・価格・サポート契約 - FAQ -(日本オラクル)

Oracle Oartitioning Policy(日本オラクル)

その他留意事項

 この他にも、例えば、あるパブリッシャーのサーバソフトウェアを利用する場合には、「当該パブリッシャーが提供するサーバ管理ツールを導入し、4半期ごとにその管理記録を保管する」とか、「保守契約の権利を行使する場合には、現在利用している全てのサーバ製品の保守契約が継続していなければならない」といった条件もあります。

 サーバライセンスの使用許諾条件は、クライアントのそれとは異なり、類型をもって包括的に管理する仕組みを持つことは簡単ではありません。自社で重点的に管理すべきソフトウェアとライセンスの条件をよく吟味し、導入するSAMシステムの機能を検討することが必要です。

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