ダボスで話した仕事の未来とデジタルビジネスの進展Gartner Insights Pickup(50)

2018年のダボス会議で世界のビジネスリーダーと語り合った。「AIと人々の働き方」「デジタルビジネスの今後の進展」は、こうした人たちの共通の関心事だ。

» 2018年02月23日 05時00分 公開
[Peter Sondergaard, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

※これは、Gartnerのエグゼクティブ・バイスプレジデントのピーター・ソンダーガード氏が、2018年1月下旬に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加した所感を伝える同氏自身の投稿である(編集部)。

 スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF)年次総会への出席は、私にとって特権だ。世界をより良くするために、世界でも指折りの知性や影響力を持った人々が集まる場は、他にほとんど例がないと思う。どれだけ大雪でも、私には出席しない選択肢はあり得ない。

 到着して以来、私はビジネスリーダーや政治家と膨大なトピックについて何回か有意義な会話をした。だが、何を話していたかにかかわらず、どの場合でも技術について話すことになった。

 これは驚きではない。技術は、われわれが行うあらゆることに関わっているからだ。それでも、人々が共通の問題意識を持っていることに私は強い印象を受けた。大組織のかじ取りをする人々は、次のようなことを知りたいと考えている。「技術によって仕事がどう変わるか」「デジタルワークプレースはどのようなものになるのか」「人工知能(AI)のような新しい技術は、人材のプールや雇用の安定、ワークライフバランスにどう影響するのか」

AIやスマートマシンと、人々の働き方との関係

 今日の組織は、CIOと人事のトップの両方がデジタルワークプレースを推進しなければならない段階に来ている。このことは、もはや明白だ。確かに、AIやスマートマシンは進歩してゆくだろう。だが、これらは人間に取って代わることや、職場の無人化を目指しているわけではない。新しい技術は人間の才能や能力を拡張し、ひいては組織が成長を維持、加速する力を押し上げることを目的としている。

 明確に言えば、仕事の未来を展望すると、仕事の主役はやはり人間が担うことになる。

 われわれは、従業員に求められる新しいさまざまな働き方と、それらを最適に実現する方法にフォーカスしなければならない。例えば、今から10年後には頭脳労働の比重が増える一方で、手を動かす作業は減り、こうした仕事がさまざまなコミュニティーや地域のより多くの人に分散されるようになる。その前提として、学習や能力開発の新しいモデルの構築や、従業員が技術と情報を活用できるハイブリッドな職場の創造も進むだろう。

 大きな成功を収める組織は、独自の工夫を凝らして従業員の力を結集する。一部の組織では、技術を活用して退職者の特定のニーズに対応する必要があるだろう。また、ミレニアル世代とその志向を考慮する必要がある組織もありそうだ。この世代には、FacebookやInstagramのようなプラットフォームを使って、生活と仕事の両方を充実させようとする人が多い。

デジタルビジネスの進展と誇大宣伝

 もう1つ、ビジネスリーダーとの間で話題になったのが、彼らのデジタルビジネスの進展だ。今では「Industrie 4.0」と呼ばれることもあるデジタルビジネスは、多くのCEOにとって実際のビジネスとなっている。数年前のダボスでの会話では、概念として話題になっていたのと比べると様変わりだ。

 現在のCEOは、デジタルエコシステムを基盤とし、物理的な世界とデジタル世界の境界を曖昧にする実際のビジネスアプリケーションを自社が生み出していることを、具体的な言葉で説明できる。その一方で、ほとんどのCEOはこうした成熟化とともに、われわれにGartnerの「ハイプサイクル」で言うところの「過度な期待」を抱かせてきたハイプ(誇大宣伝)が浸透して飽和に達したことを理解している。言い換えれば、われわれはハイプサイクルにおける「幻滅期」に向かっているということだ。

 幸いなことに、デジタルビジネスを拡大し幻滅期を乗り越えるための定石がある。それは、デジタルトランスフォーメーションの明確な目標を設定し、それをサイドプロジェクトとして扱うことなく、明確なデジタルKPI(重要業績評価指標)を確立して進捗(しんちょく)を測定することだ。さらに、デジタルデクステリティ(デジタルを使いこなす力)を持つ人材を生かし、ネットワーク効果のある技術を利用して強力で堅牢(けんろう)なデジタルプラットフォームを構築する。このプラットフォームを破綻から守りたいという意思が、幻滅期を速やかに乗り越える強い原動力になる。これらを実行したリーダーは、2019年のWEF年次総会では話すことがたくさんあるだろう。

出典:Davos Discussions on the Future of Work and Digital Business Progress(Gartner Blog Network)

筆者 Peter Sondergaard

Executive Vice President, Research & Advisory


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