ガートナー ジャパンは、テクノロジー人材のスキルに関する調査結果を発表した。改善したいスキルのトップは「リーダーシップ」で、人材育成上の懸念のトップは「技術変化に対応できるトレーニングが整備されていないこと」だった。
ガートナー ジャパン(以下、ガートナー)は2018年4月24日、テクノロジー人材のスキルに関する調査結果を発表した。従業員数500人以上の日本企業が対象で、有効回答数は515件。それによると、改善したいスキルのトップは「リーダーシップ」だった。
同調査は、同社が2011年から毎年実施しているもので、クラウドやAI(人工知能)、IoT(Internet of Things)といった技術の利用状況に加え、企業や組織の課題、将来の方向性、人材のスキルなどについて調べている。
「ITインフラ関連組織において改善したいスキル」を尋ねたところ、「リーダーシップを取れる人材が不足している」との回答が最も多く、全体の30%を占めた。次いで、英語に関するスキル不足を挙げる割合が多かった。具体的には、回答数が多い順に、「英語(リーディング)が弱い」が23%、「グローバルレベルで活躍できるエンジニアのスキルがない」が23%、「英語(スピーキング、コミュニケーション)が弱い」が22%、「プレゼンテーションが弱い」21%、「英語(ライティング)が弱い」が19%だった。
ガートナーによると今回の結果は、同社が2011年から毎年実施している調査結果とほぼ同じだった。特にリーダーシップは、改善したいスキルとして常にトップに挙げられている。このことから同社では、テクノロジー人材のリーダーシップ不足は企業にとって深刻な課題であるものの、具体的な改善策が取られていない現状がうかがえると分析している。
ガートナーでは、リーダーシップを取る人材が不足している企業は、「決められない」「推進できない」「調整できない」「方向が定まらない」「将来が描けない」といった課題を抱えている可能性があると指摘。これらの課題は、企業が今後より戦略的に物事を推進する際に、大きなボトルネックになり得るという。
次に、「人材育成上の懸念や困っていること」について尋ねたところ、最も多かった回答は「技術変化に対応できるトレーニングが整備されていない」で、全体の66%を占めた。それ以外で多かった回答は、「制度(例えばメンター制度)がない」(61%)、「教育できる先輩(人材)が少ない」(58%)、「人材育成のための時間が少な過ぎる」(56%)、「勉強・学習に必要な時間が確保できない」(55%)だった。
この結果について、ガートナーでリサーチ&アドバイザリ部門のバイス プレジデント兼最上級アナリストを務める亦賀忠明氏は、「調査結果を見ると、企業はさまざまな点で人材育成上の懸念を抱いており、総じて『人、時間、予算』といった基本的な事項についての改善を必要としていることが分かる。働き方改革が叫ばれている今日、企業には、限られた時間の中でかつてない変化に対応し、次のビジネスを生み出すための人材に投資することが求められている。とはいえ、原資は限られているため、『人、時間、予算』の余剰を確保し、次のビジネスにつながる人材に投資する取り組みを加速させる必要がある。企業や組織は、個々人の役割やゴール、彼らに求める期待値とともに、KPI(主要パフォーマンス指標)を明確な形で導入するといった施策を含めた、積極的な人材投資に基づくスキル獲得を通じて、新たな時代をリードする人材の価値を高めていくことが急務だ」と述べている。
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