スタイルズは、Flexで構築された業務システムをHTML5/Angularに変換するサービスの提供を開始した。コンバートツールを利用することで、構築コストの削減を実現したという。
ITシステムの開発・運用を手掛けるスタイルズは2018年5月15日、「Apache Flex(旧:Adobe Flex)」(以下、Flex)が基盤となっているシステムをHTML5/Angularに自動変換するサービスを開始したと発表した。もともとスタイルズはFlexシステムをHTML5/Angularで新たに作り変えるシステム構築事業を行っていたが、コンバートツールを作成し、サービス化したことでコスト削減を実現する。
Flexは、「Adobe Flash Player」(以下、Flash Player)で動作する、業務システム向けRIA(Rich Internet Application)を構築するためのフレームワークだ。XMLベースのユーザーインタフェース定義言語「MXML(Macromedia Flex Markup Language)」と、業務ロジックを実装するスクリプト言語「ActionScript」で構成される。このサービスでは、コンバートツールによって、主にMXMLコードをHTML5に、ActionScriptコードをAngularに自動で変換する。
サービスの発表会で、スタイルズ 代表取締役 社長の梶原稔尚氏は、サービス開始の背景や、Flash Playerを利用するブラウザベンダーの動向を紹介した。
Flexの業務システムは、Flash Playerをインストールしてブラウザで利用する必要があるが、Flash Playerは、Appleがセキュリティやメモリの大量消費を理由にiOSでの採用を見送ったことや、ハッカーに標的にされやすいなどの影響もあり、2020年末にアップデートと提供が停止される予定だ。
これに加え、各種ブラウザベンダーがFlash Playerのサポートを段階的に終了していくこともあり、梶原氏は「2020年末以降はFlexを活用する業務システムが一切動作しないことが明らかだ。ブラウザのアップデート回避という手も考えられるが、セキュリティの観点から見てもFlexを活用している企業は何かしらの措置を取ることが避けられない」と述べた。
そこでスタイルズでは、FlexからHTML5/Angularへの作り変えをクライアントに薦め、システム構築を手掛けていたわけだが、新規で作り変えるため、システム構築コストが膨らむという課題があった。
「企業はデジタル化のための投資が必要な一方で、レガシーステムのリニューアルのために『負の投資』も行わなければならない。そこでスタイルズでは、コスト削減のために、研究開発を進め、コンバートツールを開発した」(梶原氏)
コンバートツールの活用で、約300画面の業務システムを変換する約3億円規模の案件が、1億円規模までコストを削減できた例もあるという。
自動変換サービスの開発責任者を務める高橋裕樹氏は、サービス利用の進め方やコンバートツールの詳細などを紹介した。
コンバートツールは、HTML5/Angularに100%自動変換できるものではない。高橋氏によると、「実際の案件で使うプログラミングコードをサンプリングし、コンバートツールで変換した結果、最大で80%の変換に成功した」という。
一方で、業務システムによっては、独自作成されたコンポーネントがあったり、『yui-frameworks』などのフレームワークが使われていたり、画像などのリソースがコンパイルされてまとめられているSWC形式のファイルを内包していたりするものがある。このような場合は自動変換ができないため、手動でAngular用の代替ライブラリを用意して対応する。
なお、変換サービスで変換先の実装技術にHTML5/Angularを採用した理由について高橋氏は「HTML5は現在のオープンスタンダードだから言うまでもない。Angularについては、以前からスタイルズではAngularでシステムを構築していた強みを持っていることもあるが、他のフレームワークと比べて堅牢なシステムを作りやすく業務システムの要件とマッチしやすいから」とした。
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