既存のデータ管理・分析機能をIoTにそのまま適用しようとする企業は多い。だが、綿密な考慮を経た上で無理のない利用方法を考えないと、プロジェクトは失敗する恐れがある。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
数十億台のコネクテッドデバイスで膨大なイベントが発生すると、企業がデータを取り込み、保存、処理、分析する能力には、どれだけのプレッシャーがかかるか。
IoT(モノのインターネット)は、かつてない量と種類のデータをかつてない速度で生成し、まさにこうした試練を企業に課す。企業はこれらのデータに基づいて行動するために、データおよびアナリティクス機能のアーキテクチャを見直し、新しいデータ管理技術およびプラットフォームを導入し、データガバナンスの新しいポリシーとプラクティスを生み出すことを迫られる。
2018年3月に米国、テキサスで開催されたGartner Data & Analytics Summitにおけるセッションで、Gartnerのバイスプレジデント兼最上級アナリストであるテッド・フリードマン氏は、「2019年にかけて、IoTソリューションの3分の1は本格的に展開する前に捨て去られるだろう」との見通しを示した。IoTに適したデータ管理機能やデータ分析機能が提供できないことが理由だ。
「既存の多くのデータおよび分析機能はIoTの取り組みやIoTデータに適用できるが、企業は幾つかの重要な分野でそれらの機能をモダナイズする必要がある」(フリードマン氏)
IoTソリューションは新しくユニークな特徴を持つことから、従来のデータ管理インフラや、アナリティクスおよびBI(ビジネスインテリジェンス)技術を適用しようとすると、さまざまな面で無理が生じる。IoTの取り組みのリーダーは早い段階で、先を見越して不備や弱点を特定する必要がある。
最近のGartnerの調査では、回答した3分の1以上の企業がIoTを活用するためにこれまでとは別の新しい機能を使用しているか、使用する計画だと答えている。だが、61%の企業は、既存のデータ管理インフラを利用および拡張する予定だと答えている。これは、従来のユースケースに適用されてきた多くのデータ管理インフラツールや技術が、何らかの形でIoTにも利用できるからだろう。
「しかし、データとアナリティクスを担当するリーダーは、特定のIoT環境の規模や分散要件、およびIoTデータに固有のガバナンス問題への対応に既存の機能や技術がどれだけ適しているかを評価しなければならない。これらが必要なレベルをクリアできるかどうかを見極める必要がある」(フリードマン氏)
IoTソリューションとそれらが生成するデータは、データの保存と管理の要件における大きな変化をもたらしている。IoTは高速かつ大量のデータおよび、イベントストリームの柔軟で経済的な取り込みと保存を実現するHadoopのような、分散処理フレームワークと非リレーショナル形式のデータ永続化の導入を大きく後押ししている。
だが、IoTによって新たな要件が求められるようになっているものの、リレーショナルデータベース管理システム(DBMS)も機能が進化しており、まだまだ現役だ。リレーショナル技術と非リレーショナル技術の機能の重複も生じている。一部の企業はソリューションの要件を踏まえ、既存のDBMS投資を生かしてIoTの活用を図っている。
「データとアナリティクスを担当するリーダーは、IoTアーキテクチャの中で使われる多様なデータを評価し、データ永続性要件を精緻化して、具体的なDBMSの利用およびモダナイゼーション計画を立てなければならない」と、フリードマン氏は語る。
「また、ストリーミングされる時系列の非構造化データのキャプチャーに強みを持つ技術や、クラウドの弾力的なスケーラビリティを生かせる技術を評価することが重要だ。こうした要件は、将来のIoTのユースケースで一般的になるからだ」(フリードマン氏)
データガバナンスは多くの企業にとって優先課題だ。あらゆる業種でデータがビジネスモデルの中心となっているからだ。IoTソリューションは、複雑な分散型のアーキテクチャのせいで、魅力的で大きな“攻撃対象領域”を提供する。これはセキュリティリスクの増大につながる。また、IoTソリューションが生成、収集、分析、応用するデータは、膨大かつ詳細であり非常に価値が高い。こうしたデータをプライバシー、保存、品質の観点から適切に扱わないと、企業はリスクを抱えることになる。
Gartnerの調査は、IoTソリューションを計画、実装する企業にとって、セキュリティが最も重要なデータガバナンス課題であることを示している。
「多くのIoT環境のデータには、イベント指向という性質がある(例えば、センサーから読み取られた同一データの繰り返しによる継続的なストリームなど)。そのため、データ保存の一般的なポリシー(大抵は全て取っておく)はあまり効果的ではない。どのデータを保存し、どのデータを捨てるかについての異なる考え方が必要になる」(フリードマン氏)
出典:How IoT Impacts Data and Analytics(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
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