CIOは、シンプルなフレームワークを使って従業員を全社的な変革に駆り立てられる。このフレームワークで特に重要なのは、「なぜ」を理解させるための魅力的なストーリーを構築することだ。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
個人住宅のリフォーム事例を紹介するテレビ番組が、米国で人気を呼んでいる。視聴者はビフォーアフターの変貌ぶりや、途中のいろいろな経緯に興味津々だ。だが、こうした番組を魅力的なものにしているのは、リフォームの背景にあるストーリーだ。それが視聴者を最後まで引き付ける原動力になる。
CIOは、全社的な変革に乗り出すに当たり同じ戦術を使うことができる。従業員が変革を行う理由を理解するほど、独自のビフォーアフターストーリーを作るモチベーションが上がるからだ。
「人々は、変革について筋の通った明確な説明を受けると、納得して的確に動くようになる。最も確実にそうなるのは、ストーリーラインの一部として説明を受けた場合だ」と、Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるエリース・オールディング氏は説明する。
CIOは、「From/To/Because(から/へ/なぜ)」モデルの3つの要素を使って、自社のストーリーラインを作ることができる。そのフレームワークにより、組織の行動を変える取り組みを効果的に進められる。
From/To/Becauseモデルでは、下の図1のように、現状と目指す将来像をそれぞれ具体的に示す行動パターンのリストを作り、両者を左右に並べて対比することで、どのように行動を変えていくかを表す。
最初に、経営陣やビジネス担当の役員、IT担当者からヒアリングを行い、組織における現在の行動の在り方を定義する。それがフレームワークの「From」の部分になる。これは、従業員が将来像だけでなく、スタート地点も理解できるよう支援する上で不可欠のステップだ。
「多くの場合、将来像を描く方が簡単だが、現状を評価するには時間と労力がかかる。この最初のステップを踏まなければ、取り組みが進まない」(オールディング氏)
現在の行動パターンを列挙したリストを作り、それらをリストに含めた理由を示す具体例を用意する。この「From」のリストが、組織における現在の仕事のやり方を正確に表していること、そして現状のまま維持すべき行動パターンもリストに含まれていることが理想だ。
従業員に取ってほしい行動パターンをリスト化する。それがフレームワークの「To」の部分になる。このリストは、組織が進むべき方向を明確に示さなければならない。ただし、どのような未来を目指すかを従業員が理解することは重要だが、最終的な将来像については柔軟な解釈の余地を残しておく。
「To」のリストをまとめたら、「From」リストの右に並べる(図1参照)。これで変革のストーリーラインの主要要素がそろう。将来にわたって維持したい現在の行動パターンはToリストにも加えるようにし、その具体例も用意する。Toリストの項目は組織のこれからの指針となるので、全ての項目に対応するFromリストの項目があるとは限らない。
家のリフォーム番組の場合と同様、変革の背景にあるストーリーが従業員を動かす。CIOをはじめ経営側は、従業員に対し、変革に取り組むことを求める。従って、従業員としては、なぜ取り組むのかを知る必要がある。
FromとToは既に定義したので、次は“Because(なぜ)”を説明する番だ。“Because”は、From/To/Becauseフレームワークにおいて以下の役割を果たす極めて重要な要素だ。
だが、“Because”は見過ごされることが多く、リーダーは“Because”について一貫性のある伝え方ができていない。そのため、From/Toリストの右に第3列として“Because”の説明を必ず追加し、取るべき進路を明確にしなければならない。それによって従業員が全体像をつかめれば、従業員は何が求められているかを理解し、変革に取り組むにはどのように準備すればよいかの判断に必要な情報を得られる。
「変革は1歩ずつ進む。最初の1歩が最も重要だ」とオールディング氏は語る。
変革の取り組みを開始する前に、従業員が移行に向けた最初のステップを把握できるようサポートする。こうした最初のステップには、以下の要素が含まれる。
こうした最初のステップは、変革の実現性をより実感させ、モチベーションを高め、次のステップに弾みをつける。また、明日に備えて今何ができるかが分かれば、従業員は自信を持って変革に取り組むことができ、不安や懸念が軽減される。
「変革は、リフォームというよりも破壊という印象を与えることが非常に多い。CIOがFrom/To/Becauseモデルでフレームワークを作った上で、個々の従業員に応じた最初のステップに落とし込めば、従業員は組織が向かう方向を理解し、自ら計画を立てて変革の取り組みに参加できる」(オールディング氏)
出典:How to Create a Powerful Organizational Change Management Storyline(Smarter with Gartner)
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