AR機能が強化――Apple、最新モバイルOS「iOS 12」を発表、秋に正式リリース最新ARフレームワーク「ARKit 2」対応など多数の新機能を提供

Appleが2018年秋にリリースする「iOS 12」は、システム全般にわたってパフォーマンスが向上し、ARやコミュニケーション、音声操作、使用時間管理など、さまざまな新機能を提供する。

» 2018年06月06日 08時00分 公開
[@IT]

 Appleは2018年6月4日(米国時間)、同社のモバイルOS最新版「iOS 12」を発表した。

 iOS 12は、日常的なタスクを高速かつ軽快に処理できるよう設計されている。また、同OSでサポートされる拡張現実(AR)アプリケーション開発フレームワーク「ARKit」のアップデートによる新たなAR体験、「ミー文字」や「Group FaceTime」などを使った表現力豊かなコミュニケーション、「Siri Shortcuts」でより効率的になった音声操作、「Screen Time」によるデバイス使用時間管理などが可能になっている。

 Appleは、今回の発表に合わせてiOS 12のデベロッパープレビューを提供開始しており、パブリックβ版を6月後半にリリースするという。またiOS 12の正式版を2018年秋にリリース予定だ。iOS 12は「iPhone 5s」以降のモデル、全ての「iPad Air」および「iPad Pro」モデル、「iPad」の第5世代と第6世代、「iPad mini 2」以降のモデル、「iPod touch」第6世代を対象に、無料のソフトウェアアップデートとして提供される。

 iOS 12の新機能や強化点の概要は以下の通り。

高速かつ軽快

 iOS 12のパフォーマンス改善はシステム全般にわたっており、カメラは最大70%速く立ち上がり、キーボードは最大50%速く表示され、タイピングの反応も向上している。システム上で多くの作業が行われているときもアプリケーションは、従来の最大2倍の速さで起動するという。

ARエクスペリエンス

何億台ものiOSデバイスがARエクスペリエンスをサポートしており、iOSは世界最大級のARプラットフォームとなっている

 iOS 12でサポートされるARKitの最新版であるARKit 2は、以下のような特徴を持つ。

  • 共有体験を組み込むための新ツール
  • 特定の場所にひも付けられたパーシステントAR(持続的なAR)エクスペリエンス
  • 物体検出
  • 画像トラッキング

 開発者はARKit 2を使うことで、革新的でダイナミックなアプリケーションを作成することができる。

 例えば、ARKit 2を利用した共有体験により、iPhoneとiPadでのARがさらに魅力的になり、複数のユーザーが1つのゲームをしたり、自宅のリノベーションなどのプロジェクトで一緒に作業したりできるようになる。また、開発者がゲームに観戦モードを追加すれば、友達や家族が別のiOSデバイスからARのゲームプレイを観戦できるようになる。

 パーシステントARは、現実の世界に仮想オブジェクトを残しておき、後から戻ってこれるようにすることで、ARアプリケーションに対するユーザーの接し方を変えるという。例えば、テーブルの上でパズルをやり始め、後で戻ってきて同じところから続けたり、数週間にわたるアートプロジェクトの制作を毎回やり直しせずに進めたりといったことが可能になる。

 さらに、ARKit 2では画像の認識とトラッキングのサポートが拡大し、おもちゃや彫刻などの3Dオブジェクトを認識できるようになった。また、現実世界をARオブジェクトに自動的に反映できる機能も追加された。これにより、仮想と現実が融合され、AR体験が一層リアルになる。

 Pixarとの協力によりデザインされた新しいオープンファイルフォーマット「usdz」は、パワフルなグラフィックスとアニメーション機能を提供し、メッセージ、Safari、メール、ファイル、NEWSなど、iOSのほとんどどの機能を使っているときでも、ARを簡単に体験することを可能にする。

 また、usdzでは「Quick Look for AR」でユーザーが3Dオブジェクトを現実世界に配置し、その空間でどのように機能するか確認できる。

ミー文字とカメラエフェクト

よりパーソナルで表現力に富んだメッセージをやりとりできる

 新しい「アニ文字」や、カスタマイズ可能でパーソナライズされたミー文字により、iPhone Xから友達や家族に向けたコミュニケーションがより表現力に富んだものになる。

 包括的で多様なキャラクターから選んで美しくデザインされたミー文字をメッセージの中で作ることで、ユニークな個性を発揮できる。従来のアニ文字のセットにも、ゴースト、コアラ、タイガー、Tレックスなど新たなキャラクターが加わった。

 全てのアニ文字とミー文字にはウインクと舌検知が搭載され、これまで以上にさまざまな表情を捉えることができるようになった。

 新しいカメラエフェクトは、アニ文字、フィルター、テキスト、ステッカーをメッセージとFaceTimeにもたらす。コミックブックや水彩画といったフィルターを使って写真や動画に個性を加えたり、新しいラベルや図形を使って画像の一部にキャプションやタイトルを加えて目立たせたり、メッセージアプリケーションのステッカーパックを使ってステッカーを置いたりすることができる。

Group FaceTime

Group FaceTimeは通話中に最も目立つ話者を表示する

 Group FaceTimeにより、簡単に複数の人が同時にチャットできるようになった。参加者はいつでも追加できる他、会話が続いていれば、iPhone、iPad、またはMacから動画または音声を使って途中から参加できる。Apple WatchからFaceTimeオーディオを使って参加も可能だ。

Siri Shortcuts

カスタマイズ可能なSiri Shortcutsにより、Siriを使ってiOSデバイスを効率良く操作できる

 Siri Shortcutsは、どのアプリケーションからでもSiriを使うことで、より速く仕事を済ませる新しい方法を提供する。朝のコーヒーを注文する場合でも、午後にワークアウトを始める場合でも、Siriはぴったりの時間にアクションを促してくれる。Shortcutsは、タスクを開始するためのシンプルなボイスコマンドを作成するか、新しいShortcutsアプリケーションをダウンロードして、さまざまなアプリケーションからシンプルなタップ、またはカスタマイズされたボイスコマンドで実行できる、一連のアクションを作成することでカスタマイズできる。開発者はShortcuts APIを使って、この新しい機能を簡単に利用できる。

写真

スマートな提案と改良された検索機能により、写真共有がさらに簡単になった

 新しい「For You」タブは、メモリと「iCloud」の共有アルバムを組み合わせ、お気に入りの瞬間を1つの場所に表示する。新しい共有提案機能は、友達との写真共有をより簡単にし、写真を受け取った友達は、一緒に行った旅行やイベントの写真や動画を共有するよう促される。

 検索提案機能は、最も関連性の高いイベント、人、撮影地、グループ、カテゴリー、最近の検索を表示する他、ユーザーは新しい検索機能で複数の検索語を用いて、目的の写真を見つけられるとしている。

おやすみモード、通知、Screen Time

Screen Timeは、アプリケーションやWeb閲覧に費やした時間をアクティビティーレポートで表示する

 iOS 12は、ユーザーがiOSデバイスを使っている時間を理解し、管理するのに役立つ新ツールを提供する。

 「おやすみモード」の新しいモードは、特定の時間、場所、または行動に基づいて自動的に操作を終了する。また、「Do Not Disturb during Bedtime」(ベッドタイム中のおやすみモード)をオンにしておくと、ディスプレイが暗くなり、朝になるまでロックスクリーン上の全ての通知が表示されないため、より安眠できる。

 iOS 12では、ユーザーが作業の中断を防げるように通知の配信方法を管理するための選択肢が充実している。例えば、通知を静かに届けたり、簡単に完全にオフにしたりできる。グループ化された通知は、より見やすく、複数の通知を同時に管理できる。

 Screen Timeは、ユーザーがアプリケーションやWeb閲覧にどれだけ時間を費やしているかを理解し、管理するための詳細な情報とツールを提供する。日次および週次のアクティビティーレポートは、個々のアプリケーションに費やした合計時間、アプリケーションのカテゴリー別の利用状況、受信した通知の数、iPhoneやiPadを持ち上げた回数などを表示する。

 Screen Timeを使うと、iCloudのファミリー共有を使って親が自分のiOSデバイスから子供のアクティビティーレポートにアクセスし、子供がiOSデバイスを使える時間を制限するようスケジュールを組むこともできる。

プライバシーとセキュリティ

 Appleの全てのソフトウェアアップデートと同じく、プライバシーとセキュリティの強化は、iOS 12でも最優先事項となっている。

 Safariでは、強化された「インテリジェント追跡防止機能」が、ソーシャルメディアの「いいね」や「共有」ボタン、さらにはコメントウィジェットがユーザーを許可なく追跡するのを防ぐ。Safariはまた、ユーザーがWebを閲覧するときにシンプルなシステム情報を提供し、ユーザーがそのときのシステム構成によって追跡されるのを防ぐ。

 さらにSafariは、ユーザーが新しいオンラインアカウントを作る際に強力なパスワードを自動的に作成し、自動入力して保存するとともに、パスワードが再利用されると、ユーザーに変更を促す。

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