UWPアプリ版クライアントは「リモートデスクトップWebアクセス」からのWebフィードによる、RemoteApp接続もサポートしています。Windows 8.1向けのアプリの場合は、Webフィードで配布されたRDPファイルを開始する作りでした(画面3)。
一方、Windows 10向けのアプリの場合は、実装が大きく変わっています。今回の調査で実際にやってみて、初めて気が付きました。Windows 10向けアプリの場合、同様にクライアントアプリが提供されているAndroid、iOS、Macと共通のリモートデスクトップクライアントURIスキーマが使用されているようで、RemoteApp接続開始時のRDPファイルの介在はありません。接続後のエクスペリエンスもMstsc.exeの場合とは異なります(画面4)。
Windows 10向けアプリは、モバイルデバイス(スマートフォンやタブレット)での利用を想定したユーザーインタフェース(UI)になっており、例えば、日本語入力の切り替えにはIMEをマウスでクリックする必要があるなど、マウスやキーボードでは操作しにくいかもしれません。今回少し操作してみた限りでは、そのような感想を持ちました。その使いにくさは、マルチプラットフォームで共通の仕様になっているからだと思います。しかし、問題が修正されるまでの一時的な回避策としては有効かもしれません。
Windows 8.1までは、Mstsc.exeのオプションに「プログラム」タブが存在しました。Windows 10のMstsc.exeのオプションからは削除されましたが、RDPファイルのRDP属性「alternate shell」および「shell working directory」に書き込めば利用できることを本連載第65回で紹介しました。
RDP属性「alternate shell」は、フルデスクトップ接続時の「エクスプローラー(Explorer.exe)シェル」を開始せずに、指定したプログラムを開始し、そのプログラムを閉じればセッションを切断します。
これはWindows Server 2003 R2以前からの機能であり、「RemoteAppシェル(Rdpshell.exe)」にも依存しません。そのため、RemoteApp接続で不具合が発生した場合の回避策として、この方法は有効な代替策になると思います(画面5、画面6)。
「alternate shell」はRemoteAppテクノロジーを利用していないので、RemoteAppでトラブルの多い日本語入力環境の問題解決になるかもしれません。(サーバ側の)IMEのツールバーは表示されませんが、通常のキーボード操作で入力の切り替えや変換が可能です。RDPファイルに以下のように解像度を指定することで、RemoteApp風に小さなウィンドウ(アプリケーションはその中で全画面表示)で開始することも可能です。
screen mode id:i:1 desktopwidth:i:<横の解像度> desktopheight:i:<縦の解像度> alternate shell:s:<プログラムのパス>
というわけで今回は、Windows Updateのリスクから業務アプリを護り、日常の業務を継続するための、業務アプリのための事業継続性計画(BCP)策定の勧めでした。
と、本稿を書き終わってしばらくしてから、接続先がWindows 10 バージョン1803のリモートデスクトップ接続環境において、IMEオフのときにUWPアプリ(ストアアプリなど)のキーボード配列が日本語キーボードではなくなる問題が報告されました。
公式ブログではUWPアプリとなっていますが、Microsoft Edge、Cortanaの検索ボックス、Hyper-V拡張セッションモードなど、影響範囲は意外と広いような気がします。詳しくは筆者の個人ブログも参考にしてください。レガシーアプリケーションでリモートデスクトップ環境を利用するという、今回のシナリオはレガシーOSの環境への接続なので影響しません。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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