LUCRA事業は好調で、2018年4月の時点でダウンロード数が200万を超え、現在も着実にユーザー数を伸ばし続けている。渡辺さんは、LUCRA事業全体を統括する立場として、プロモーションやマーケティングなどにも関わっている。
女性向けのサービスを統括していく点で、苦心した部分はなかったのだろうか。
「確かに、ユーザー目線といっても、実際に女性がどのようなことに感動したり、困ったりするのかは、感覚的には分かりません。むしろ、分からないことがあるからこそ面白いと感じています。女性心理については、機会あるごとに周囲の女性たちに聞き、またユーザーの動向を分析するなどして、手探りで進めています」
そうした努力(?)が実り、渡辺さんは今では、女性向けファッションやブランドにも詳しくなったそうだ。
「ファストファッションとかプチプラとか、いろいろと詳しくなりました(笑)」
未知の領域で、新たな発見を繰り返しながらサービスの方向性や組織を作り上げていくことは、ソフトウェア開発でいえば、要件定義や基本設計に相当するのかもしれない。業務を通じて女性心理やファッションに詳しくなっていくのは、金融系システム開発を行う上級SEが与信業務のワークフローに詳しくなっていくのと同じだ。
事業の成長に伴って、求められる能力は上がっていく。関わる人が増えていくに連れ、必要なコミュニケーションの質も量も増えていく。そのため渡辺さんは、自分とチームを意識的に変えていくことが重要と判断し、「事業の仕組み化」を図っている。現在は、自ら開発をすることはなくなったが「開発メンバーに、どう動いてもらうか」を考え、実践していくことが楽しいという。
こうして話を聞くと、事業を運営する立場になっても“ものづくり”の本質的な面白さは変わらないのだということがよく分かる。一般に“ものづくり”というとプログラミングを想起する傾向が強いが、それはあくまで手段であり、体験価値を開発、提供することこそが、今求められているエンジニアの価値であるからだ。
「もっと大きな事業、もっと大きなチームを育て、世の中にできるだけ大きなインパクトを与えていきたい」と今後の目標を語る渡辺さんに「学生時代にやっておくべきことは何か?」を聞いてみた。
「サービスを提供するならば、人がどういうところに楽しさや感動を抱くのかを知っておくべきだと思います。具体的には、学生時代に遊び倒すことでしょうか(笑)。まとまった時間を使わないとできないようなことは、学生時代にやっておきたい。友人と旅行に行き感動を共有するといった体験などは、後々役に立ってくるでしょう」
Gunosyでのインターンシップを通じて新たな目標を見つけ、LUCRAの開発に参加したことでビジネスを学ぶチャンスを手にした渡辺さんが、今後、LUCRAのサービスをどのように大きくしていくのか、とても楽しみである。
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