Fleetは2017年10月にカットオーバーしました。リクルートの社内サービスのインフラ基盤として利用が始まり、既に幾つかの外部向け商用サービスでも利用されています。Fleetで実現した成果としては大きく2つあります。
1つ目は目に見えやすいアジリティの大幅向上です。
インフラ立ち上げ期間が劇的に短縮され新規サービスの立ち上げもスピーディーになっています。
2つ目は、成果としては目に見えにくい部分です。サイト側のアプリエンジニアとわれわれインフラエンジニア間のSRE的なコミュニケーション改善にもつながると期待しています。今までの両者のコミュニケーションはどうしてもインフラ側の技術、工数、運用面などの制約が大きく作用しインフラエンジニアは自衛的なコミュニケーションに陥りがちでした。
インフラエンジニアの視点で言うと、自分たちの管理しているインフラの設定変更をするだけでも手順書や管理ドキュメントを何個も更新しなければならず非常に手間がかかります。山のように来る申請全てに対応するには保守的、自衛的なコミュニケーションを取らざるを得ない状況がありました。
しかしSREの観点でサービス全体を最適化しようとしたら、このコミュニケーションのスタンスは決して正しくありません。インフラエンジニアもサービスにとって何が必要か一緒に考える視点が必要です。
Fleetはインフラ設定自体をシンプル化しユーザーに直接行わせることで、インフラエンジニアが大量の申請書から解放されます。副次的な効果としてSREに必要なサービス全体最適の視点に立つ時間的なゆとりを生み出すことができると期待しています。
SREは奥が深くて捉えにくい部分もありますが、あえてシンプルに言えば、「サイト運営最適化のために当たり前の、人と人のコミュニケーションをしっかり取る」「アプリ、インフラ、構築、運用のチームの垣根を越えて前向きにコミュニケーションを取る」ことから始まると弊社は考えました。
そこで従来は機能別で分かれていたチームを再編し、事業別チームとして再配置し、各事業組織と同じフロアで顔が見える状態で仕事ができるような組織変更も行っています。
この組織変更直後は混乱が多少生じましたが、コミュニケーションロスを減らす意味では非常に効果的な組織変更でした。
また本連載で紹介した新しいテクノロジーや自動化ツールを使い、インフラ維持運用にかかる手間を減らすことで、インフラエンジニアがSREのことを積極的に考える心と時間の隙間を作ることも必要です。
本連載では、「基盤側の立場からSREの活動を行い、Webサービスの価値向上にどのように取り組んでいったか」を紹介しました。リクルートでは、これまで紹介したような取り組みを実施し、価値向上に向けて今も活動を続けています。本連載で紹介した内容が、何か少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
株式会社リクルートテクノロジーズ ITエンジニアリング本部 サイトリライアビリティエンジニアリング部所属
大手通信会社でネットワークサービスの開発を経験後、2014年10月にリクルートテクノロジーズに入社。
全社検索基盤やプッシュ通知基盤などスマートデバイス向け基盤の開発、運用を経て、社内オンプレミスインフラのネットワーク設計・運用に従事。
趣味はウィスキーと葉巻。
株式会社リクルートテクノロジーズ ITエンジニアリング本部 サービスオペレーションエンジニアリング部所属 シニアネットワークエンジニア
データセンターネットワークを中心にネットワークエンジニアとして20年以上のキャリアを持つ。
これまでに多数のインフラ構築、移行、運用を担当。
ネットワーク機器メーカー主催の年次イベント、ユーザー会などでの事例講演も多数実施。
趣味はバイクと舞台鑑賞。
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