IDC Japanは、「データエコシステム」と「DaaS」に対するプレーヤーの取り組みに関する調査結果を発表した。IoTに関わる企業はデータエコシステムやDaaSを通じた新たな収益源を見極める必要があるという。
IDC Japanは2018年8月13日、国内IoT(Internet of Things)市場について、「データエコシステム」と「DaaS」(Data as a Service)に対するプレーヤーの取り組みに関する調査結果を発表した。IDC Japanでは、モノが生成する「IoTデータ」と企業やヒトの活動が生成する「非IoTデータ」を組み合わせることで、収益を生み出すモデルの創出を推進するプレーヤーの集合体をデータエコシステムと呼んでいる。またデータエコシステムを活用し、データに付加価値を上乗せして販売することや、データ分析結果を基に得られた収益を共有するビジネス形態をDaaSと呼んでいる。
調査結果によると、非IoTデータを活用して収益を上げようとする海外企業に対抗するためにIoTに関わる企業は、データエコシステムやDaaSを通じた新たな収益源を見極める必要があるとしている。
IDC Japanの今回の調査によると、国内のデータエコシステムやDaaSに対する企業の取り組みは、次の3つの潮流に大別できる。
1つ目は、産業に特化したソリューションを構築するデータエコシステムの増加。製造業や流通業といった各産業向けのデータエコシステムのデータを産業横断型で活用し、バリューチェーンやサプライチェーンのつながりを強化する動きが増えている。
2つ目は、IoT領域や非IoT領域、物理領域といった各領域での「イノベーションの連鎖」が加速していること。これらは、データエコシステムの活性化に向けて、こうした各領域の境界をなくし、データ活用を広げることで実現されようとしている。
3つ目は、DaaS基盤を通じて、データをサービスとして提供するベンダーが台頭していること。IDC Japanによると、データの自由取引を通じて、産官学を問わずデータエコシステムに関わるプレーヤーが、オープンイノベーションを目指しているという。
一方IDC Japanは、IoTデータと非IoTデータについて、いずれも今後世界全体で増加すると見ている。IoT機器数の急速な増加によってIoTデータが増えるとともに、企業の業務システムや、個人が所有するスマートデバイスなど、企業やヒトの活動が生成する非IoTデータも増加する。同社ではそれらデータの合計が2025年に、163兆GBに達すると予測する。
IDC Japanによると、米国や中国、欧州の大手IT企業などでは、個人消費者を対象にした商取引(B2C)の非IoTデータを活用して収益を上げようとする動きが加速しているという。そうした企業に対抗する上でも、IoTに関わる企業は、あらゆる種類のデータの活用を視野に入れて、データエコシステムやDaaSを通じた新たな収益源を見極める必要があるとしている。
IDC Japanでコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストを務める鳥巣悠太氏は、「データエコシステムベンダーは、バリューチェーンやサプライチェーンをつなぐことを念頭に、さまざまな産業特化型ソリューションの提供を進める必要がある。ベンダーはデータの活用によって従来ヒトが行っていた作業を削減するだけでなく、物理世界でのヒトの働き方改善や、多様な人材の活用の加速、新たなエクスペリエンスの創造を目指さなくてはならない。そのためにはIoT領域や非IoT領域といったサイバー空間と、物理空間の間でさまざまなデータをバリアフリーに活用する必要がある」と述べている。
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