Dell EMCのモジュラーインフラ「PowerEdge MX」、その仕様と用途とは「バックプレーンなし」だけではない

デルとEMCジャパンは2018年9月12日、モジュール型インフラ製品「PowerEdge MX」の国内における提供開始を発表した。同社はこれを「キネティックインフラ」とも呼んでいる。従来の一般的なサーバとは、構造の異なる製品だ。その仕様と用途を探る。

» 2018年09月13日 08時30分 公開
[三木泉@IT]

 デルとEMCジャパンは2018年9月12日、モジュール型インフラ製品「PowerEdge MX」の国内における提供開始を発表した。同社はこれを「キネティックインフラ」とも呼んでいる。従来の一般的なサーバとは、構造の異なる製品だ。「ワンルームマンションがシェアハウスになったようなもの」と、デル インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部長の上原宏氏は表現している。

外見的にはただのブレードサーバだが……

 基本的なコンセプトは、基本的にはソフトウェアストレージを前提とし(外部ストレージをファイバチャネル接続することも可能)、CPU、記憶媒体、ネットワークをレゴのように構成すること。そして、用途に合わせてこれらのリソースを割り当てられる。

 ハードウェア的には、ブレードサーバのようになっている。冗長電源、ファン、管理機能を備えたシャーシに、さまざまなCPU密度、ストレージ密度のモジュールを必要に応じて挿入して使う。ストレージメモリ、GPU/FPGA、ネットワークなどに関する技術変化をコスト効率よく取り込めるようにすることもテーマになっているという。

目立つ違いはバックプレーンレスであること

 目立つのはネットワーク関連機能。ソフトウェアストレージやストレージメモリの活用で求められる、ネットワークの広帯域/低遅延への対応を目的としている。

 PowerEdge MXでは、通常ブレードサーバのシャーシにおいてモジュール間の通信をつかさどる役割を果たしているバックプレーンを廃し、コンピュート/ストレージモジュールとネットワークスイッチを直結している。このサーバでは、コンピュート/ストレージモジュールをシャーシの前面から垂直に挿し、イーサネットスイッチは背面から、水平に配置する構造になっている。そしてそれら相互を、ケーブルなしに、コネクタで直結する。同様にファイバチャネルスイッチの接続についてもコネクタ経由となる。

前面から縦向きに挿すコンピュート/ストレージモジュール(下)と、背面から横向きに挿すスイッチ(上)が、四角く見えるコネクタで直結される

 シャーシ自体がバックプレーンを持たないため、ネットワーク技術の進化に対応しやすくなる。コンピュート/ストレージモジュール側のネットワークインタフェースカード(ライザーカードとなっている)、および背面のスイッチを、高速接続に対応したものに切り替えればいい。PowerEdge MXは現在、標準で25Gbps接続に対応しているが、100Gbps対応も視野に入れているという。

 なお、PowerEdge MXは、複数シャーシによる構成を考慮した設計となっている。この場合、いずれかのシャーシに内蔵するイーサネットスイッチをトップオブラック(TOR)スイッチとして使う。他のシャーシには、スイッチングを行わない(Cisco UCSに似た)ファブリックエクステンダーを挿し、ここからTORスイッチ役を務めるスイッチに接続する。

高い集約度と柔軟な割り当てで、従来とは異なる形の統合を実現

 目に付きやすいのは上記のバックプレーンレスなシャーシであり、これは長期的な利用に貢献する。一方、PowerEdge MXを導入するかどうかの判断により大きく影響しそうなポイントとして、集約度の高さと柔軟な割り当てが挙げられる。

 PowerEdge MXのシャーシは7Uサイズ。縦に最大8基のコンピュート/ストレージモジュールを収容できる。

 コンピュートモジュールとして用意されている2ソケットの「PowerEdge MX740c」と4ソケットの「PowerEdge MX840c」は、共に28コアの「Xeonスケーラブルプロセッサー」を搭載できる。メインメモリはそれぞれ最大1.5TB/6TB搭載可能。さらにSAS/SATA/NVMeのドライブをそれぞれ最大6基/8基搭載できる。

 一方、ストレージモジュールの「PowerEdge MX5016s」は1枚に16基のドライブを搭載可能。シャーシに最大7枚収容できるため、ドライブは1シャーシで最大112基を搭載できる計算になる。MX5016sでは、ドライブ単位で各コンピュートモジュールに割り当てられるようになっている。

 こうした特徴を踏まえると、次のような用途が想定できる。

 まず、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)としての利用がある。収容可能なストレージ容量が大きいため、大規模なHCI構成が実現する。ストレージ容量の大きさは、スケールアウト型のソフトウェアストレージ活用にも適する。従来のブレードサーバは、外部ストレージを接続することが前提だったが、PowerEdgeMXはストレージも統合することを意図している。

 一方、各コンピュートモジュールは独立しており、前述の通りストレージモジュールではドライブ単位でコンピュートモジュールへの割り当てができる。このため、多様なシステムを共存できる。例えば単一シャーシ内で、3基のコンピュートモジュールを使いHCIを構成してサーバやデスクトップの仮想化に使うと共に、別の1基のコンピュートモジュールでSAP S/4HANAを動かし、さらにビッグデータ処理を行うなどが可能。

 ストレージの割り当てを柔軟に変更できることなどを生かして、PowerEdge MX導入後にリソースを当初とは別の用途に転用できる点をメリットと考える組織もあるだろう。

 デル/EMCジャパンでは、2018〜19年に15万台の従来型ブレードサーバが更改期を迎えるとしており、切り替え需要にも期待している。同社では販売施策として、「キネティックインフラ検証センター」の開設、社内エキスパート育成プログラムの実施、包括的導入支援プログラム「ProDeploy Plus」の展開、サービスおよびソフトウェアライセンスを含めたゼロ金利ファイナンスプログラム、マーケティング施策および技術パートナーとの連携強化を挙げている。

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