イノベーションで世界の注目を集めるTeslaやSpaceXは、ソフトウェア開発の現場で広まっているアジャイルやスクラムの考え方を製造現場に適用し、現在はその先を目指そうとしているという。2022年7月に開催された「Agile Tech EXPO 2022」でアジャイル導入支援の経験を持つJoe Justice(ジョー・ジャスティス)氏が、その「凄さ」を紹介した。
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「アジャイルやスクラムはソフトウェア開発に適用するもの」というイメージが強いかもしれない。しかし、イーロン・マスク氏が率いるTeslaやSpaceXでは、電気自動車やロケットというハードウェアにもアジャイルやスクラムの考え方を取り入れ、これまでのモノ作りでは考えられないような短期間で新しいバージョンの製品をリリースするサイクルを確立している。そして今、その先を目指そうとしているという。
認定スクラムトレーナーとして活躍し、MicrosoftやAmazon、TeslaやSpaceXでアジャイル導入支援の経験を持つAgile Business InstituteのCEO、Joe Justice(ジョー・ジャスティス)氏が2022年7月に開催された「Agile Tech EXPO 2022」の基調講演に登場し、その「凄さ」を紹介した。
「アジャイルは何もソフトウェアだけのものではありません。もちろん、ハードウェアだけのものでもありません。製造、調達、財務、金融などさまざまな部門で、企業全体でアジャイルは活用できます」(ジャスティス氏)
一般的な自動車メーカーは、数年に一度のペースでモデルチェンジを行ってきた。これに対し、Teslaのリリースサイクルは全く異なる。「Teslaの製品は、毎日1回以上マイナーモデルチェンジを行っています。自動車に搭載するヘッドライトやテールライト、充電ポートといった部品の設計から製造、テスト、関連する組み込みソフトウェアのデプロイ、リリースを2日間で行っています」(ジャスティス氏)
「Tesla Model 3」や「Tesla Model Y」の充電ポートは、わずか3時間でアップデートされているという。そして、車を構成する各部品も迅速にアップデートされ、その数は1日当たり60種類に上る。「おそらく、地球上で最も速く変化するプロダクトでしょう」とジャスティス氏は述べた。
ロケット開発に取り組むSpaceXは、Teslaほどの速いサイクルではない。それでも、2006年の設立当初には、新たなロケットを設計し、ビルドし、ローンチするというスプリントに2年間かけていたのを、10年後には1年間に短縮させた。
「砂漠に設置したテントの中で、新しいロケットエンジンを設計し、ビルドし、テストし、インストールするスプリントを現在は2日間で回しています」(ジャスティス氏)
ジャスティス氏は、年単位で進めていくウオーターフォール方式のプロジェクトにも利点はあるとする。より多くの予算を割り振り、変更が難しいような計画を立てて動いている政府との共同作業が容易になったり、より安心して仕事ができたりする点だ。だが「ウオーターフォールの弱点はイノベーションが非常に遅いことにある」と指摘した。
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