デジタル化が働き方やオフィス改革に及ぼす影響をArubaが調査した。デジタル化が進んだオフィス環境で働く従業員は、生産性はもちろん、仕事に対する意欲と満足度が高く、デジタル化の進んでいない職場の従業員よりも幸福感が強いことも分かった。
Aruba, a Hewlett Packard Enterprise companyは2018年9月13日、デジタル化が働き方やオフィス改革に及ぼす影響について国内で発表した。2018年9月9〜4日にタイで開催した同社のイベント「APAC Atmosphere 2018」で披露したもの。
2018年6月4日に発表したレポート「The Right Technologies Unlock the Potential of the Digital Workplace(デジタル革新者がデジタルワークプレースの可能性を解き放つ)」に基づき、アジア太平洋地域向けに内容を構成し直した。
同レポートによると、デジタル化が進んだオフィス環境で働く従業員は、生産性はもちろん、仕事に対する意欲と満足度が高く、デジタル化の進んでいない職場の従業員よりも幸福感が強いという。一方で、課題もある。デジタルに精通した従業員ほど、セキュリティに関してより大きなリスクを冒しがちであることも指摘している。
レポートではデジタル技術の活用によって勤務先を4段階に分けている。「完全にデジタル化されている」を高度先進グループと定め、「ほとんどまたは全くデジタル化されていない」を後発グループとした(この他「分からない」との回答あり)。日本の調査対象のうち高度先進グループに属する割合は7%(世界では17%)、後発グループが15%(世界では10%)だった。
日本と他の14カ国の間で、回答の傾向が大きく異なった設問は3つあった。
「デジタル技術は他社とのコラボレーション強化に効果的である」という設問に対して、日本の高度先進グループは、効果的だと答えた回答が40%(世界は72%)、逆効果という回答も40%(世界は13%)だった。後発グループでは60%が効果的と回答、逆効果は8%だった。
「将来の職場は(室温設定や照明などが)完全に自動化されるべきか」という設問に対して、世界平均は71%が賛成(23%が反対)だった。ところが日本は賛成が42%であり、反対が50%で上回った。
セキュリティに関する設問では「セキュリティリスクを生じさせやすい事項にあたる行為を行ったことがない」と回答した割合が45%と15カ国中最も高かった(次点がドイツ)。
レポートではさまざまな質問を世界各国の従業員に投げかけている。まず、デジタルツールと、従業員の生産性や満足度の関係についての調査では、デジタルツールが生産性以外にも多くのメリットを従業員にもたらしているとの結果が出た。
詳しく見てみると、高度先進グループは後発グループよりも、仕事に対する満足度が51%高く、ワークライフバランスについて肯定的な回答者の割合が43%高かった。
仕事に対する意欲についても、高度先進グループの従業員は後発グループに比べて56%高く、自分が勤務する会社のビジョンを高く評価する従業員の割合も83%高かった。
また、デジタル技術の活用を通じて専門的能力を開発でき成長したと回答した割合は、高度先進グループが65%だったのに対して、後発グループは31%と低かった。
さらに仕事に関する新たなスキルを身に付ける能力が高くなったと回答した割合は、高度先進グループが72%、後発グループが58%だった。
「生産性にプラスに働いている」や「デジタル技術のおかげでコラボレーションが強化された」と回答した割合は、高度先進グループではいずれも70%を超えているのに対して、後発グループでは55%だった。
従業員が新しい技術の導入を望んでいることも明らかになった。アジア太平洋地域全体で、98%の回答者が「技術の活用によって職場は改善される」と答えた。
「もし新たな技術が導入されなければ自分の会社は競争から取り残されることになる」と回答した割合は70%、「従来型のオフィスは技術の進化によって、確実に姿を消していく」と回答した割合は67%だった。デジタル技術が今後の職場環境にもたらす大きなメリットは何かという設問では、「効率の向上」が最も多く63%。次いで「コラボレーションの向上」の53%、「職場の魅力の向上」の52%だった。
一方、「自分の会社が過去1年間にデジタルワークプレース関連のツールに投資した」と回答した割合はアジア太平洋地域では75%。関心の高いツールとしては「室温調整や照明を自動で行うスマートビルツール」(14%)、「音声駆動型やワイヤレスのAV技術」(16%)、「カスタムの企業モバイルアプリ」(11%)などが挙がった。
今回の調査では、サイバーセキュリティが課題であることも分かった。
全体の56%が頻繁または日常的に「セキュリティについて考えている」と回答するなど、従業員のサイバーセキュリティに対する意識は高まっている。だが、73%が「パスワードやデバイスの共有など、リスクを伴う行為をしたことがある」と回答しており、会社のデータやデバイスに関してリスクを冒していることも浮き彫りになった。
さらに25%は過去1年間に安全ではない可能性のあるオープンなWi-Fiに接続したことがあると答え、20%が複数のアプリケーションやアカウントに同じパスワードを使用していると回答した。パスワードを忘れないようにメモしていると答えた割合も17%あった。
調査期間と調査対象は以下の通り。2018年4〜5月にインターネットと電話を通じて実施。回答者は7000人(男性69%、女性31%)で、勤務先は工業、政府機関、小売、ヘルスケア、教育、金融、IT、電気通信の業種や業界が中心の官民だった。調査対象国は15カ国。日本(回答数350人)以外に、アラブ首長国連邦、インド、英国、オーストラリア、オランダ、韓国、シンガポール、スペイン、中国、ドイツ、ブラジル、フランス、米国、メキシコを調査した。
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