老朽化した社内ITシステムのマイグレーションが計画通り進まなかった企業は6割、SHIFTが調査マイグレーションを検討する企業は4割

SHIFTが発表した「マイグレーション実態調査レポート2018」によると、今後3年以内にITシステムのマイグレーションを検討している企業は全体の約40%に達することが分かった。レガシーシステムの保守運用にはIT予算全体の20〜40%を充てる企業が多く、80%の企業が保守切れを課題としている。

» 2018年10月04日 11時00分 公開
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 SHIFTは2018年10月2日、「マイグレーション実態調査レポート2018」を発表した。これは、国内の141社を対象に、老朽化したITシステムにおいて業務ロジックを変えずに移行(マイグレーション)する手法について調査したもの。

 同社は「ソフトウェア開発データ白書2016−2017」(独立行政法人情報処理推進機構)にある日本企業のIT投資額14.8兆円と比較して、新規ITシステム構築費用が約3兆円(経済産業省「平成25年情報処理実態調査報告書の概要」)と少ないことを指摘。老朽化した社内基幹システム(レガシーシステム)などの運用に要する費用を調査した。

 その結果、レガシーシステムの保守運用にはIT予算全体の20〜40%を充てる企業が多く、80%の企業が保守切れを課題としていることが分かったという。

 具体的には、企業のIT投資額全体に占める老朽化対応やシステム再構築の予算の割合として、回答が最も多かったのは「21%以上40%以下」の50件。次いで「20%以下」の41件、「41%以上60%以下」の30件が続いた。

 これに対して、企業が理想的と考えている、IT投資額全体に占める老朽化対応やシステム再構築に向けた費用の割合は、「20%以下」が最も多く71件。次いで、「21%以上40%以下」の40件、「41%以上60%以下」の24件が続いた。一般に老朽化対応やシステム再構築は、IT投資の中でも収益性の少ない維持費用として捉えられるため、多くの企業が低く抑えたいと考えているようだ。

マイグレーションを検討する企業が4割に達する

 今後3年以内にマイグレーションを検討している企業は全体の約40%に達した。マイグレーションの主な動機として、「システムの保守期限」を挙げた回答が最も多く、次いで「コストを抑えてシステムを見直すため」「ベンダーによる販売やサポートの終了(EOSL:End Of Service Life)」などが続いた。

マイグレーションの主な動機(出典:SHIFT「マイグレーション実態調査レポート2018」)

 今後実施予定のマイグレーションに関して、不安やリスク、課題に感じることとしては、「移行にかなりの工数がかかる」(70件)、「移行に多額の費用がかかる」(68件)、「移行後に安定稼働するかどうか不安」(58件)、「移行後に不具合が発生する」(51件)といった回答が上位を占めた(複数回答)。

 これに対して実際にマイグレーションを実施した企業では、ほぼ計画通りに成功したのは約40%。計画通りにマイグレーションを実施できなかった企業では、スケジュールの遅延や費用の超過、マイグレーション後のシステムの品質悪化やトラブルなどを挙げる声が多かった。

マイグレーションの不具合内容(出典:SHIFT「マイグレーション実態調査レポート2018」)

 さらに計画通りに実施できなかった企業では、移行後の不具合発生頻度が高かった。また、移行後の不具合発生状況として、「かなり多い」と回答した割合は6%、「多い」が26%、「想定通り」が39%、「少ない」が19%、「ほとんどない」が10%だった。

 こうした調査結果を踏まえてSHIFTでは次のように分析している。

 「プロジェクト管理やコスト管理、品質管理に関する専門的知見が不足していることから、移行検証などのリスク低減策が不十分となり、プロジェクト全体の品質確保が困難となっていることが推測される。加えて、仕様書が整備されていない中でのシステム再構築は、想定外のトラブルを招くことになる。これらのことから、マイグレーションに対する専門的な知見の確保と、システムの品質を確保するための取り組みや支援が必要だ」

 マイグレーション実態調査レポート2018の調査期間は2018年6月末〜8月末、調査対象は日本に本社を置く企業の情報システム部門。有効回答数は141件。

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