AIや機械学習で成功を収める企業が増えてきている一方で、思ったような効果が得られていない企業も少なくない。ビジネスにAIを活用するコツはどこにあるのか。箱根湯本の老舗ホテル「ホテルおかだ」の原氏が、そのポイントをセミナーで解説した。
「AI」「機械学習」「ディープラーニング」といった技術への期待が過熱する中、あらゆる業種、業界で、これらをビジネスへ適用する動きが加速している。
既に導入を終え、成果を出している企業がある一方で、検討はしているものの具体的なアクションにつながっていなかったり、導入してみたものの思うような効果が得られず焦っていたりする企業も少なくない。出遅れを挽回し、成功企業との「成果の格差」を埋めていくために、何ができるのか。成功企業は、これらの技術をどのように成果へ結び付けているのだろうか。
アイティメディアが2018年9月26日に東京・秋葉原で開催した「AI/ディープラーニングビジネス活用セミナー」では、多様な業界でAIおよびビッグデータのビジネス活用を手掛けるキーマンたちが、自らの活用事例を紹介。本記事では、箱根湯本にある老舗ホテル「ホテルおかだ」の取締役営業部長、原洋平氏による基調講演を紹介しよう。
原氏は、旅行者の動向やニーズが変化を続ける中、旅館業としてBI、SFA、MA、そしてAIといった技術をどのように取り入れ、顧客満足度の向上につなげていこうとしているのかという視点で、同ホテルの取り組みを紹介した。
ホテルおかだの創業は1953年。60年以上にわたって箱根を訪れる旅行者をもてなしてきた老舗である。従業員は約130人、部屋数は122室を数え、源泉3本を所有する、箱根の中でも大規模な旅館だ。かつては団体客をメインターゲットとしていたが、近年では、顧客の宿泊目的に合わせて、一般客室から、露天風呂付きの客室までを幅広く選べる体制を整えているという。
ホテルおかだが、本格的なITおよびAIの活用を検討するに至った背景には、旅行のスタイルが「団体型」から「個人型」へとシフトしていく中で、予約処理数の増加や、ニーズの多様化によるオペレーションの複雑化などが懸念されていたためだ。
個人の宿泊客が増えることで、予約件数は2009年からの7年間で66%増。さらに、オンライン予約の普及によって、予約やメールによる問い合わせが入る時間は、営業時間外にまで広がり、キャンセル率も28%から35%へと徐々に増えていた。また、外国人を含む個人客の多様なニーズに応えるためにプラン数や価格帯を増やしたことで、オペレーションのコストも増える傾向にあった。
宿泊客対応のオペレーションは今後も複雑化するのは明らか。その中で、いかに顧客満足度を上げていくかという課題に対し、ホテルおかだが出した答えが、「ITの活用によって、これまでよりも生産性を高め、よりたくさんのお客さまに高級旅館並みのサービスを提供していく」ことだったという。
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