創業65年、AIで生まれ変わる箱根の老舗ホテル その成功の要因は?より多くの顧客に高級旅館並みのサービスを(2/4 ページ)

» 2018年10月22日 09時00分 公開
[柴田克己ITmedia]

「BI」「MA/SFA」、そして「AI」を複合的に活用

 ホテルおかだが導入したソリューションは、ジャンルで言えば大きく「BI」「MA/SFA」「AI」の3分野に分けられる。

 まずBIツールは、顧客の属性やサービスの内容、顧客満足度アンケートの結果といったデータをさまざまな切り口で可視化することで、長期的なスパンで起こっている変化を察知し、経営上の判断を合理的に行うために活用するという。

photo ホテルおかだが導入したソリューションは、ジャンルで言えば大きく「BI」「MA/SFA」「AI」の3分野に分けられる

 「BIの活用に当たっては『戦略を導くための分析に使えるか』『誰かの行動にインパクトを与えるか』『問題点の早期発見に役立つか』という3つのポイントを意識しながら、データ集めや分析を行うようにしています。ただ何となく可視化するだけでなく、意思決定や行動に結び付けることを念頭に置いた分析を行うことが大切です」(原氏)

 MA/SFAツールは、顧客対応の自動化や営業活動の支援が目的だ。例えば、Web上からの宿泊予約に対する「サンキューメール」の送信を自動化したり、営業担当者に対して「仮押さえ」の期限切れや、宿泊確認漏れについてのリマインドを行ったりといったシステムになる。

 「顧客対応や営業のプロセスを自動化する仕組みは、実際に現場で使ってもらえなければ意味がありません。開発では『現場の意見を聞きながら一緒に作る』『まず動くものを見せる』『問題点やユーザーからの要望があればすぐに修正する』といったことに気を付けています。エンジニアの独りよがりなシステムにしないためにも、いきなり完成品を作るのではなく、少しずつ進化させていくつもりで取り組んでいます」(原氏)

 そして、AI導入の目的は「顧客接点の改善」にあった。具体的には、ホテルおかだの公式Webサイト内にある「よくあるご質問(FAQ)」において、質問内容の予測や最適な回答の提示を「Oracle Service Cloud」で実現している。

 ホテルおかだのWebサイトにアクセスすると、ほぼ全てのページの下部に「よくあるご質問」のタブが表示されている。これをクリックすると、サイトの訪問者がその時点で見ているページに合った内容のFAQが表示されるのだ。

photo ホテルおかだのWebサイトにアクセスすると、全てのページの下部に「よくあるご質問」のタブが表示されている

 例えば「館内施設」のページであれば「近くにコンビニはありますか?」「プールを利用したいのですが」。「料理」のページであれば、「食事の時間は何時ですか?」「好き嫌いやアレルギーの対応はできますか?」といった項目が自動的に選ばれる仕組みだ。また、FAQの参照数などは逐次記録されており、同じカテゴリーに属する項目であっても、直近での参照頻度が多いものを優先的に表示する。

 FAQの各項目は、以前から蓄積していたナレッジベースをもとに作成されたが、このシステムでは「アンサーの参照数」「『役に立ちましたボタン』の押下回数」「訪問者が利用した検索ワード」などの情報が、リアルタイムのレポートとして確認できる。これらをもとに「参照者の評価が低いFAQや、多い検索ワードに関連したFAQの内容を改善することも可能になった」(原氏)そうだ。

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