Amazon Web Services(AWS)のイベント「AWS re:Invent 2018」(2018年11月26〜30日、米ラスベガスで開催)では、例年にも増して多数のサービスが発表された。本連載では、主な発表内容を簡潔にまとめて紹介する。第1回は、機械学習/AI関連を取り上げる。
AWS re:Invent 2018では、機械学習/AI関連の発表が2017年に比べ、大幅に増加した。内容も、実際に機械学習/AIに取り組んでいる人々が実際に直面する課題に対応した、ステップ2の取り組みとも形容できるものが増えた。以下では、個々のトピックについてはできるだけ簡潔な説明にとどめ、発表内容を網羅する。
まず、コーディングなしに機械学習/AIが使えるAPIサービスとして、「Amazon Textract」「Amazon Personalize」「Amazon Forecast」が発表された。Amazon PersonalizeとAmazon Forecastは、Amazon.comなどのノウハウをサービス化したものという。
Amazon Textractは光学的文字認識を高度化したサービス。デジタル文書/画像中の文字を認識し、デジタルデータに変換する。文章の行や文中の表、帳票の項目などを事前設定なしに理解するというのがポイント。AWSが主張する通りの機能を発揮するなら、特に帳票の電子化で、従来型のOCRにおける限界に悩まされてきた人たちにとっては、福音になる可能性がある。
「Amazon Personalize」は、Amazon.comがレコメンデーションエンジンで使ってきたアルゴリズムを、誰でも簡単に利用できるようにするサービスという。リアルタイムでのレコメンデーションおよびパーソナライズの用途に使える。データの事前準備やチューニングに苦労することはないという。データとしては、Amazon S3に保存された静的データの他、ストリーミングデータも扱える。例えば音楽について、「ユーザーID, 音楽ID, 評価レベル, タイムスタンプ」を項目とするデータをAmazon Personalizeに渡し、「レシピ」を選択することで、各ユーザーIDに対する音楽のレコメンデーションが得られる。
文字通り、時系列予測が行えるサービス。値下げや各種キャンペーンの影響を考慮した商品需要予測なども可能。データを準備し、「レシピ」を選択することで、Amazon Forecastはデータに応じた最適なアルゴリズムを適用し、結果を返せるという。予測結果は、コンソール上でグラフとして見ることもできる。
後述するが、機械学習パイプラインサービスの「Amazon SageMaker」では、強化学習に対応する「Amazon SageMaker RL」が登場した。これをきっかけとして、開発者が強化学習について楽しく学べるようにと開発したのが、自動運転カーの「AWS DeepRacer」だという。
詳しくは別記事で紹介するが、DeepRacerは靴箱ほどの大きさで、インテルCPUを搭載するミニカー。設定されているトラックを外れることなく、短時間で周回できることにチャレンジしてもらう。SageMaker RLに基づくコンソールでシミュレーターを動かし、ミニカーに与える報酬関数を調整しながら、失敗を通じてミニカーが自らを訓練できるように促す。AWSではDeepRacerのレースコンテストを開催する。
画像における物体の認識や分類などを機械学習で実行するには、大量のデータにラベル付け(アノテーション)を行う必要がある。このラベル付け作業を効率化するための新サービスが「Amazon SageMaker Ground Truth」。アクティブラーニングにより、同サービスが機械で行えるものと行えないものを識別。ユーザーは、機械が実行できるものについてはAmazon SageMakerに任せることになる。機械でできないものについては、AWSのクラウドソーシングサービスである「Amazon Mechanical Turk」、ユーザー側の人員、サービスベンダーのいずれに任せるかを設定できるようになっている。
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