「失敗はそもそも、要件をきちんと定義しなかったのが原因です。いざ作り直そうにも、私たちがベビーシッターの世界を知らな過ぎました。例えば、子どもを預けたい親御さんと、シッターさんとがどういう風に面談をするのかさえ知らなかったのです」(東氏)
そこで、実際にベビーシッターをしている人にヒアリングしようと、協力してくれる人を探し回ったという。本来なら最初にやるべき要件定義を後追いで行っていったのだ。
「これが最も難易度が高かったですね。つてを手繰ってもベビーシッター経験のある人がいない。Facebookで何人かに声をかけ、ようやく一人から返事をもらいました」(東氏)
そのベビーシッターさんがとても積極的な人で、要件定義はもちろん、サービス内の各種ドキュメント作成、面談研修などのコンテンツ制作にも協力してくれたという。
「あぁ、そういう人とは、それこそきちんと契約を交わして、今後も頼れるようにしておいた方がいいですね」(山本)
さまざまな環境が整い、ようやくβ版ながらサービスインした「ママココ」。まだ、試験的な利用の段階だが、その後も各部のブラッシュアップを続けており、本サービスの開始も、そう遠くはないようだ。
「紆余(うよ)曲折はありましたけれど、ゼロからスタートして2年でサービスが形になったというのはスゴいですよね」(山本氏)
「そうですね。最初の段階で一度コケて良かったと思っています。今は発注する立場から、お客さまのシステムを受注する立場に変わりましたが、苦労した分、お客さまから受注する際は、要件定義からしっかりと行うようになりました」(東氏)
本サービススタート後のマネタイズなど、自社サービス運営を軌道に乗せるためには、これからも幾つものハードルがある。しかし、CLOCK・ONグループには、広告関連のノウハウが多数蓄積されているため、その点は既に何か考えがありそうだ。
これまでの流れを振り返って、飯沼氏が総括してくれた。
「今思えば、これってシステム開発会社としては、一番ダメなパターンでしたね。いい勉強をさせてもらった授業料だと思います」(飯沼氏)
「すてきなお話ですね。ありがとうございました」(山本氏)
次回以降も山本一郎氏が、開発会社の炎上事例をぶった切ります。お楽しみに。
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